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春日太一著 『役者は一日にしてならず』を読んだ

映画史・時代劇研究家の春日太一さんの著書『役者は一日にしてならず』を中古本で買って読みました。

春日さんが錚々たる俳優の面々にインタビューしたものを、「役者は言葉でできている」と銘打って『週刊ポスト』に連載されていたコラムに加筆し、2015年に小学館より単行本化された本です。

登場する方々は平幹二朗、千葉真一、夏八木勲、中村敦夫、林与一、近藤正臣、松方弘樹、前田吟、平泉成、杉良太郎、蟹江敬三、綿貫勝彦、伊吹吾郎、田村亮、風間杜夫、草刈正雄、そして前書きに登場する三國連太郎の17名。
(僭越ながら敬称略させていただきます)
全員、PCで一発変換できたぐらい、著名な大俳優です。

3年後に『すべての道は役者に通ず』という続編も刊行されていて、そちらには織本順吉、加藤武、宝田明、山本學、左とん平、中村嘉葎雄、上條恒彦、山本圭、石坂浩二、藤竜也、橋爪功、寺田農、江守徹、西郷輝彦、武田鉄矢、火野正平、勝野洋、滝田栄、中村雅俊、笑福亭鶴瓶、松平健、佐藤浩市、中井貴一の、これまた素晴らしい役者さんの名前が並んでいます。

『役者は1日にしてならず』を読んでいて、それぞれの役者さんに共通な部分も結構あります。
「好き好んで役者になったわけではない」という方が少なくないことです。
もちろん好きで劇団に所属し、俳優活動を始めた方もいらっしゃいますが、「他に才能がない」「生きるため」「親に連れて行かれて」などの理由で役者の道に進んだ方もいらっしゃって、例え進んで俳優養成所を受験して合格しても、思ってたんとちゃう〜状態でサボっていた人も少なくなかったようです。

(もちろん俳優さんご自身が思った理由であって、私から見れば「他に才能がない」なんて決してないと思います。演技以外でも歌が上手かったり、絵が上手かったりするのでね)

しかしいざ撮影の現場に出ると、先輩の演技を見て学んだり、監督に手取り足取り教えてもらったり、殺陣を常に練習したり、まさにOn the job trainingの権化になるのです。
常に現場でインプットし、しかもそれは頭でっかちにはならず、毎日違った新しい演技を開拓するのに常に頭を働かせ、アウトプットしている。
そういう姿勢が尋常じゃありません。

そして、尊敬できる先輩俳優が身近にいて、先輩も彼らを気にかけてくれる。
常に学び努力する姿勢が、先輩から可愛がられる要因かも知れないし、先輩から後輩へと脈々と受け継がれていくことなのかも知れません。
また、自分たちが年長になってくると、後輩の俳優を気にかけ、自分の演技論を押し付けることなく、後輩の良さを認めて一緒に作品を作り上げようという姿勢を見せ、決して老害にはなっていません。

登場する俳優たちはみんな「天才」と言ってもいい方々だとは思いますが、その一言では片付けられない、強いて「天才」という言葉を使うなら、マエストロ小澤同様、「努力の天才」なのではないかと感じました。

そして、監督、殺陣師、先輩などなどとの関係性からして、やはり根幹は「人」なのだなあと、改めて思わせられました。

春日太一さんの最新作は、2023年11月27日に文芸春秋社から発行された『鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』です。
橋本忍さんといえば、『七人の侍』『日本のいちばん長い日』『八甲田山』など、枚挙に遑がないほど名作映画の脚本を担当した方です。
若輩者の私でさえ、橋本さん脚本映画をほとんど観ています。
ご興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
私も、もうちょっと先になると思いますが、読んでみます。


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