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⑪生きてるヤツが好きだぜ!!

リーダー E の言葉だ。
日比谷野外音楽堂に爆音が鳴り響いたオープニングの第一声
「俺は生きてるヤツの方が好きだぜーーーっ!!」そう天を向いて叫んだ。
ずっと弟のように可愛がっていた「 I 」に向けた魂の叫びだった。
あの会場に居た全員が空を見上げ声を出して号泣していた。

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3月29日
家に帰ったのは19時頃だったと思う。
待っていたかのように付けたばかりの電話が鳴った。
まだ、その番号を知っていたのは、ほんの数人だったので音が鳴ってビックリしたくらいだった。
出てみると友人Bだった。
「Mayumi?わたし。B。ようやく繋がった。。。。」
声が震えて泣いているのが分かった。ただ事じゃ無いとすぐに分かった。
「どうしたの?大丈夫?何かあった?」
「Gと連絡って取れる?」
「しばらく会って無いけど、取れるよ?なんで?」
「 I さん。が・・・」
もうそこからは声になってない。
「 I さん?! I さんがどうしたの?!何かあったの?!」
「死んだって・・・・」もう泣きじゃくってる。
「え??なにそれ?!どう言うこと?!」
そんな会話だったはず。
どこから?誰から?なのかも分からなかったけど、とにかく、その話しを聞いたので「Gに確認して欲しい」とのことだった。
Bとの電話を一旦切って、すぐにGの自宅へ電話した。
電話に出たのはGのお姉さんだった。
家にも何度か行った事があったので、お姉さんとも面識があった。
名前を名乗ると、すぐに要件に気がついたらしく、今、Gは留守にしていること。
そして・・・Bの話しが本当だという事を教えてくれた。
その事で皆んな大騒ぎになっているので Gも帰って来てないって事を教えてくれて、帰って来たら連絡するように伝えてくれる。と言うので「今はもう女子寮じゃ無いので何時でも電話は大丈夫だから。」と、念の為、電話番号を伝えて切った。
お姉さんとの電話を切った後、すぐにBへかけ直して「本当だった」ことを伝え、話した内容を伝えきると、それまで黙って聞いていたBは声を上げて泣き出した。
その泣き声を聞いてるうちに、私も涙が溢れ出した。
それまでは、あまりに突然の話しで理解ができて無かったのか?それが現実の話しだという実感が無かったのか?涙は出なかったのに・・・。
そのあとは電話越しに2人でずっと、ただ泣いていたのを覚えてる。
Bのことは心配だったけど、Gからの連絡がいつ来るか?分からなかったし、
Bも、CとDの2人にも連絡すると言っていたので、とにかく「詳しい事が分かったらすぐに連絡するから。」と、とりあえず電話を切った。
そのあとは、Gから電話が来るまでの間、何をしていたのか?全く覚えてない。

Gからの電話が来たのは、夜中の2時くらいだったと思う。
「Mayumi?おれ。さっき帰って来た。。。」と話すGは疲れ切ってるのが声で分かるくらいだった。
「本当なの?」「うん。本当だ。」
「なんで・・・?」「なんでだろうな・・?」そんな会話だった。

昭和63年 4月 1日
江東区にあるK駅は沢山の人で混雑していた。
駅から少し離れた お寺までずっと人が並んでいた。
その人達は皆んな泣いていた・・・。
初めて行った場所で、地図も持って無かったけど、お寺の場所はすぐに分かった。
沢山の黒い服を着た人達が、ぞろぞろと歩いていたから。
K駅でBとC、Dちゃんの3人と待ち合わせをして、久し振りに4人揃って歩いた。
いつもライブに行く時は、4人色違いで揃えて着ていたアヴィレックスのスカジャンだったのに・・・その日は皆んな黒い服だった。
お寺の前まで行くと入り口の門から塀伝いに長い列が出来ていた。
あまりの長さに、お寺をぐるっと1周囲むくらいの長い列だった。
マネージャーさんや、いつもは機材などを運んでたスタッフさんが「最後尾」と書いた紙を持って列の端っこに居て、大声で「車道に出ると通行の迷惑だから、ちゃんと並んでー」と人の整理してたので、私たちもそこへ行って並んだ。
マネージャーさん。は、もちろん知って居たので頭を下げて挨拶すると、私達の顔を見て「あ。」とだけ声を出して、うん。うん。と頷いた。
本当に進んでるのか?と、思うくらい、ゆっくり、ゆっくり、少しずつしか前に進んで無いのに文句を言う人は誰も居ない。
並んでから1時間を過ぎた頃、お寺の入り口が見えて来て、門の向こうに白いテントが立ち、その下に受付用らしいテーブルが並んでいて、喪服を着たチーフマネージャーだった女の人と、メンバー達が立っているのが見えた。
皆んな、それぞれに来る人、来る人に挨拶してて、特にリーダーEさん は忙しそうだった。
その光景が見えるようになってから、私達がその門に着くまでは、また1時間くらいかかったけど、 その間が1番辛かった。
そんなメンバー達がずっと見えてたからだ。明らかにいつもと違う疲れた顔で、来てくれたファンや関係者1人1人に対応してる。
それを見ているだけで涙が止まらなかった。
私達が見ている間だけでも、今でも活躍している大物ミュージシャンの人や、俳優さん、当時人気だったグループの人など、錚々たる面々が次々と来てはメンバー達と話しながら中に入って行くのも見えたけど、そんな人達なんてどーでもいいくらい、とにかく辛かった。
ようやく、私達が門の中へ入るとリーダーEさん は「おう。」とだけ言って頷いた。Gとは何も言葉を交わさず、お互い顔を見合わせて「うん。うん。」と頷いてたら、ギターのFさん が「ありがとね。」と一言だけ言ってくれた。
サックスのH君に「お疲れ様。大丈夫?」と言ったら「俺は大丈夫。でもEクンは相当疲れてると思う。」と言ってた。
メンバー達の居るテーブルの前を過ぎ奥を見ると、お寺の境内に大きな階段状になった台が作ってあって白い布がかけられている。その上に、ものすごい数のお花や、写真にメッセージが書かれた物や、プレゼントなどが、どんどん積まれて行ってて、その最上段の奥には笑顔で歌っている「 Iさん 」の大きな写真が飾られていた。
その台の前に焼香台が何ヵ所も設置されてて、皆んな お参りをしては写真を見て泣いていた。
帰りは入り口とは反対側に出口が作られていたので、メンバーとは顔を合わせる事もなくお寺を出て真っ直ぐに駅へ向かったけど、その間、私達4人は誰も口を開かなかった。

昭和63年 5月 5日
葬儀が終わり、入社初日から早速「有給」を取ってしまった私は、覚える事も多くて毎日忙しかった。
でも、そのくらい忙しい方が有難かった。
あっという間に数週間が経った頃、Gから連絡があって「追悼ライブをする事になった」と教えられた。
すぐBに連絡して、皆んなで行く事になった。
【 日比谷野外音楽堂 】
ここも、言わずと知れた有名会場。
以前、●●●もライブをした事があって、思い入れのある場所だった。
「チケットも発行せずにゲリラ的にやる」と聞いていたので、朝から会場へ向かったものの、会場近隣の駅から既に大混雑で人という人でごった返していた。
そりゃあそーだ。あの「 I さん」の追悼コンサートともなれば全国からファンが集まって来る。
しかも、完全非公開にはなってたものの、シークレットゲストとして超大物アーティストや当時の人気バンドのメンバーも出演する事になっていたのだから・・・。
案の定、野音の収容人数を遥かに超え「これ以上は入場できません」とアナウンスが繰り返し流れていて、中に入れない人達が倍以上も居たらしく、一時はブーイングコールや塀を乗り越えてでも入ろうとする人達でパニックになるくらいだった。
そんな中、1番最初にステージへ出て来たのは、ずっとメンバー達を支えて来た、あのチーフマネージャーの女性 Jさんだった。
挨拶がわりのメッセージの後、全員で黙祷。
もう既に、この時点で皆んな泣いていた。
顔を上げるとステージにリーダーEが出て来て悲鳴のような歓声が湧き上がる。
続いて、次々とメンバー達が出て来て全員が揃った時、Eさん がマイクを取り空へ向かって叫んだ。
「俺は生きてるヤツの方が好きだぜーーーーっ!!」
それを合図にメンバー達が一斉に演奏を始める。ここからはもうノンストップ。
デビュー曲から、代表曲、Iさん が好きでよく歌ってた曲、次々と物凄い大物アーティスト達が入って来ては演奏してくれる。
会場に入れなかった人達が、いよいよ暴れ出しそうになった時、Eさんがマイクを取って「外のヤツら聞いてるか?!こんな事ならドームでやれば良かったなー!ちゃんとお前らにも届くように演るからよ!」その声に外の人達から歓声が上がった。
そこからは中でも外でも関係ない、あの場に来ていた全員が「Iさん」の事を想い、残されてしまったメンバー4人を応援していたと思う。
有名ギタリストの K が「 Iさん 」が最後に作っていた曲を演奏してくれて「こんなライブは2度としたくねーー!!」と叫んでた。
会場中は泣いていたけど、ステージ上のメンバー達は最後まで誰も涙を流さなかった・・・。
あれは、知る人ぞ知る。本当の伝説のライブだったと思う。

もうすぐ「昭和」が終わろうとしていた春の話し。。。。

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K駅からすぐの、あの お寺の境内には「 I さん」の ご両親が建立した「供養塔」があり、今でも観音様が笑顔で立っています。
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※※お願い1※※
今回の話しはメンバー達の所属事務所や、現在も現役で活躍中のミュージシャンの方などが出てくるため、全てアルファベット・トークとさせていただきます。分かりずらくて申し訳ありませんが、ご理解ください。m(_ _)m
※※お願い2※※
出来るだけ手元に残っている資料を基に書くようにしていますが、何分私の記憶に残っている範囲で書いていますので、多少のズレがあるかもしれません。その点は お許しいただけますようお願いいたします。m(_ _)m


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