Patient Experience(患者経験価値)Vol.01
PXとは
Patient Experience(ペイシェント・エクスペリエンス)は日本語で「患者経験価値」と訳されます。
「患者中心性」は医療の質を測る要素のひとつ。
特にアメリカでは患者様の個別性尊重が重要視されていますが、それを測るための指標がPXです。
患者様それぞれに最適な医療サービスを提供するためにイギリスで生まれた考え方です。
PXを評価する手法にPXサーベイがありますが、患者様が入院~退院までに経験するあらゆる事象(待ち時間・診察・移動・食事・就寝etc…)を時系列、且つ場面ごとに評価します。
このように具体的、客観的に患者中心性を捉えることで病院にとってもフィードバックしやすい、というメリットが生まれます。
PXサーベイの回答にひとつの正解はありません。
つまり、患者様一人ひとりのニーズ、背景、ゴール、価値観は当然異なるので、医療者は個々人にとっての正解を引き出すことを常に意識しなくてはなりません。
PXの変遷
PXという概念は一体どこから来たのでしょうか。
PXの誕生の背景には、イギリスの政治的混乱がありました。
1980年代、保守党のサッチャー政権が市場原理を導入したことで、
イングランド国内の医療サービスは破綻していきます。
(余談ですが、サッチャー統治下のイギリスが如何に混乱していたか、
2012年公開の映画、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を見ると
少しイメージできるかと思います。たしかサッチャーも家を爆破されたりしていました、、。)
サッチャーに次いだ労働党のブレア政権は、この動乱を克服するため、
医療費を拡大させる代わりに医療サービスの質向上に注力します。
これがPXの始まりです。
2002年には政府主導で全国的にPXサーベイが実施されました。
一方、アメリカは今最もPX向上に力を入れている国ですが、
2006年にCMS(厚生省公的医療保険センター)が “HCAHPS” という名称の
PXサーベイを実施しました。
アメリカでは診療報酬に反映される一要素としてPX指標が含まれているため、病院経営の側面からも重要視されています。
この他に、カナダやフランス、オーストラリア、北欧、南アフリカ、アジアではシンガポールを中心に、PXの研究や推進を行う国は増加しています。