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PIPE DREAM(2019) ③祖母の見舞い

2018年12月21日
大阪にて

  人身事故で電車が遅れていた。最初の待ち合わせ時間から約30分後に河井朗と落ち合う。
 駅を出るとぽつぽつと雨が降っていた。辺りは既に暗い。やたらと多い焼肉屋の看板だけが雨の中ぼんやりと光っている。
 河井朗の祖母の病院へ行く。病院というものじたい、わたしはあまり馴染みがない。ましてや入院病棟など。
 病棟は白くて四角い。玄関口におおきなクリスマスツリーが飾ってあり、その前に眠そうな警備員さんが座っていた。
 「こんばんは」「こんばんは」
 あいさつを交わす。こういうとき、わたしはくせで「おつかれさまです」と言いそうになる。
 病院のにおいをひさびさに嗅いだ。

 河井朗が祖母の腕をマッサージする。人間は所詮動物だというけれど、こんなふうに人に触れる動物は人間だけだと思った。
 河井朗が祖母に話しかける。眠っている人に話しかける人はあまりいない。ということはここには意識がある、という認識なのだ。
 人を人たらしめているものって何なのだろう。

 病院を出ると、雨は上がっていた。河井朗はへいきで水たまりの中を歩く。
 磯丸水産でかるく飲んで終電で京都まで帰る。まだ電車は遅れている。
 駅を出るとひどく雨が降っていた。数年ぶりに、本格的に雨に打たれながら家に帰った。シャワーを浴びて就寝。

 河井朗が「人間は本来かたいものなんじゃないか」と言っていた。動くとやわらかくなるだけ。死ぬとますますかたくなる。
 そうかもしれないと思った。動くとやわらかくなる。生きているということは動いていることなんだな。わたしは年々やわらかく、生きやすくなっている気がする。そうか、やわらかいと、生きやすいのか。呼吸をするのも楽だ。体のかたい妹は大丈夫だろうか。
 人間は変化してゆく。肉として、骨の可動域として、やわらかくなったりかたくなったりするし、趣味嗜好も変わるし、考え方だって変わる。変化に良いも悪いもないよな。ただ変化してゆくんだな。すべてはうつろってゆくもの。いまたまたまここに滞在している、あるいはそのように見えるだけ。

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Kyoto演劇フェスティバル
京都府文化芸術会館 U30支援プログラム
ルサンチカ『PIPE DREAM(2019)』
会場:京都府文化芸術会館 ホール
時間:2019年2月16日(土) 17:30
料金:一般|前売 ¥1,000- / 当日 ¥1,200-
   高校生以下|前売 ¥500- / 当日 ¥700-
予約:https://www.quartet-online.net/ticket/u30
WEB:https://www.ressenchka.com/


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