地下鉄は向かい風

地下鉄はいつだって強風だった。
そして、向かい風、だった。

おかげさまで、せっかく今日のためにセットした前髪も
もうぐしゃぐしゃだ。
そんな日々。

そんな地下鉄特有の向かい風に苛立ちながら
早足で改札に向かう。

余裕なフリをした足取りの人たちを追い抜かして
私はさらに前へ前へと足を早めた。

せっかちだったから。
早く。
できるだけ早く進みたかった。

「いつからこんなにもせっかちになってしまったんだろう。」
ふと疑問に思う。

特に急ぎの予定があるわけでもないのに、
常に早歩きになってしまった。

足元がおぼつかない人が苦手だった。

なんで端っこじゃなくて、
そんな中途半端な場所を歩いているのだろうか。

いつも少しだけ疑問に思っては苛立ちを隠していた。

そして大体の人はみんな、スマホと睨めっこしているし
何かに悩んでいる。
私にはそう見える。

それに、何かつまらなそう。

「幸せなのかな。」

向かい側から、少し賑やかなグループが歩いてきている。

そんな時には、すかさず視線を下に向けた。

なんだか嫌だったから。

別に、すれ違う人なんて
大体の人がそれっきりだろうし、
もう会わないだろうけど、

もし何か彼らの目に私の”欠陥”が目に入ってしまって
話の話題になんてなってしまったら
どうしよう、という恐怖と怯えと心配が
隠れているからである。

たまに、以上にそこに関して敏感になる時期があって、
そういう時期には
伊達メガネをつけてみたり、
マスクをつけて顔を覆ってみたり。
と、少し工夫をしているのである。

長い長い地下鉄の道を抜けて、
地上にたどり着いた。

「嗚呼、今日も快晴なのか。」

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