『最強姉妹の末っ子』第16話
全員透明になった所で、早速ドアを開けた。
外に誰もいない事を確認すると、忍び足で歩いた。
中はお城だけあって、豪華な絨毯が敷かれていたが、右の壁側が一面ガラスで張られていた。
何でだろうと思って覗いてみると、その理由が一目みて分かった。
ガラスの向こうは工場になっていたのだ。
工場はロリンが秘密の地下空間でやっていた所よりもさらに大きかった。
夥しい数のテーブルが置かれ、そこではエプロンを付けた老若男女が仰向けに寝ている魔機をトンカチなどで組み立てたり火花を散らしたりしていた。
あの作業をしている人達が職人なのだろうか。
皆、まともな休憩をもらっていないのか、頬が痩けて目元に隈が出てきていた。
テーブルとテーブルの間には、少し広めの通路があり、そこではオーガの姿をした魔機が鞭を持ちながら行ったり来たりしていた。
少しでも寝そうになっている職人を見つけては、鞭で背中を叩かせて目覚めさせ、無理やり働かせていた。
職人の一人が一体の魔機が完成すると、ワイバーンの魔機がそれを両脚でしっかりと掴んで運んでいった。
何体ものワイバーン達が同じ方へ飛んでいき、民家一個分でもあるのではないかと思うほど大きな板の上で留まった。
そこでは牛頭の魔機が待機していて、ワイバーンから魔機を受け取ると、慎重に寝かせていた。
そして、外れないように木で固定させると、またワイバーンが運んできた魔機を受け取って……という一連の作業を何体かで行っていた。
やがて隙間がないほどビッシリと敷き詰められると、牛頭が一斉に降りた。
そこに推定5メートルはありそうな巨人の魔機が巨大な板を組み立てて箱にして、しっかり釘付けをして蓋をした後、ヒョイと抱きかかえて運んでいった。
これが魔機を大量生産できている仕組みか。
だけど、どうしてこんなに作っているのだろう。
なんて疑問を抱いていると、一番奥にある大扉が勝手に開いた。
現れたのはムーニーと全身黒い鎧を装着して背中に大きな剣を背負った騎士だった。
「あいつ……!」
すると、ティーロの目付きが鋭くなった。
どうかしたのかと聞いてみると、彼は黒い騎士の方を指指して、「あいつが俺の眼を潰した奴だ」と睨みつけていた。
ムーニーは私達に気づいていないようで、何か話していた。
耳を済ましてみても、このガラスは分厚く作られているのか、全く聞こえなかった。
「入れる所を探そう」
ロリンがそう言うと、皆コクンと頷いて歩き出した。
ティーマスを先頭に、ティーナ、ロリン、ティーロ、私の順番で進んでいった。
廊下を進んでいくと、明らかに他の部屋の扉とは違うと思うくらい分厚そうな鉄の扉を見つけた。
ティーマスが率先してドアをゆっくり開けた。
頭だけ中に突っ込むと、コクコクと何度も頷いていた。
『入って大丈夫』と言っているのだろうか。
「みんな、ここからは静かにね」
ティーナがジェスチャーしながらそう言うと、皆「分かった」と黙って頷いた。
「けど、その前に工場に入って何をするのか考えないと。
やみくもに入ったら危険よ」
私がそう言うと、ティーナは確かにといった顔をした。
敵のすぐ近くだが、作戦会議を開く事にした。
でも、声は聞こえるかも……いや、分厚そうな扉だから大丈夫か。
「そういえば、二人はこのお城に囚われていたんだっけ?
どの道を使って脱出したの?」
私がそう聞くと、ティーナとティーマスが互いの顔を見合わせた。
「えっと、それが……よく覚えてなくて」
「無我夢中でしたから……」
うーん、なるほど、確かに同じ立場になったらそうなるかも。
「職人達をどうやったら助けられるかな?」
私が続けてそう尋ねるも、誰も答えなかった。
暫しの沈黙の後、ティーナが「この透明になるやつを使えないかしら?」とロリンのリュックを指差して言った。
ロリンはハッとした顔をした。
「そうか! 職人も透明にして、奴らが慌てふためいている間に……」
「いや、でも、もしそれをするんだったら一人ずつやらなくちゃいけないんじゃないの?
途中で気づかれないかな?」
私がそう言うと、ティーマスが「それだったら二手に分かれましょう。職人達を透明させる斑と奴らの注意を逸らさせる斑に」と提案してきた。
これにみんな賛成し、班を決める事にした。
結果、ロリンとティーナが職人を救出し、ティーマスとティーロと私がムーニー達の注意をひかせる事になった。
私はロリンから硬化のポーションをいくつかもらい、先に入る事にした。
ロリンとティーナが少しでも早く職人の姿を消せるように固形を液体に戻す作業をするため、一旦安全のため倉庫に戻っていった。
ティーナが戻る途中で、頭が外れて地面に落ちそうになったが、ロリンが両腕で受け止めた事により、大きな音を立てずにすんだ。
ティーナが申し訳なさそうな顔をして胴体に取り付けたが、ロリンは両手を振って笑顔を見せて、そのまま小走りで向かっていた。
「よし、行こう」
ティーマスはそう言うと、人がギリギリ通れるぐらいまで開けて、滑り込むように入っていた。
私とティーロも続く。
中に入ると、鼓膜が弾けるかと思うくらいやかましい音が響きわたっていた。
なるほど、ガラスが分厚いのは、防音のためだったんだ。
二人とも険しい顔をしていたが、耳を塞いだりして対処しながら歩いていった。
職人や魔機達にぶつからないよう細心の注意をはらいながら進んでいき、特にハプニングが起きる事なくムーニーと黒い騎士の近くまで来た。
二人はまだ大扉の近くで話していた。
ティーロが今にも襲いかかりそうな雰囲気を出していたので、私とティーマスが必死に止めた。
そのおかげか、彼らに気づかれる事はなかった。
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こんにちは! チュピタンです!
風邪気味でにんにく入りのおかゆを食べていたら、元気が出ました!
これからバリバリ宣伝していきますので、よろしくお願いします!
早速ですが、この作品を面白いよと思ってくださったら、ぜひハートとコメントをください!
またこの作品はカクヨムにも投稿してありますので、そちらの方もぜひ!
さて、ようやく工場に潜入しましたね!
個人的にもう少しテンポよく話が展開してほしいですが、丁寧に描く事も大切だとどこかの話で聞いた覚えがあるので、まぁ、良しとしましょう!
そろそろムーニーの声が聞きたいです!
それではまた次回!
↓次の話は〜〜こっちら〜〜!
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