【お題:可愛い子には変化をさせよ】バスの車窓を眺めながら
このバスは一駅が長いからゆっくりと窓の景色を眺める事ができる。
小学校の時はよくこのバスを使って、駅の近くの学校まで通っていたっけ。
お婆さん、まだ大根漬けているのかな。
お爺さん、まだ木こりしているのかな。
干し柿くれたお姉さんはもうお婆さんになっちゃったかな。
良い人、見つかったかな。
『次はヤ村〜! ヤ村〜!』
運転手のアナウンスが聞こえた瞬間、私の回想は幕を閉じた。
運転手に料金を払って、バスを降りる。
来た道を引き返していくバス。
私は目の前に広がる光景に静かに寄り添うように近づき、手すりを掴んだ。
広大なダムがそこには広がっていた。
私が子供の時に過ごしていたあの村はダムの底。
可愛い子には変化をさせよという言葉があるけど、なにもこの村までも変わらなくてもいいじゃない。
私がおばさんになっても、村は村のままでいてほしかった。
そんな言葉を叫んでも、ダムの底までは届かない。
↓今回参加した企画はこちら
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?