見出し画像

日没

日は陰り
木々の梢だけが赤らみ
町の教会の
尖塔の風見鶏だけが朱に染まり
下界はすでに濃い闇だ

ああ 美しく畏るべき夏の日
汝は何を恵み 何を奪ったのか
生と死と 愛と憎しみと
幸せな家があり 荒んだ家がある
悲しい心があり 陽気な心がある

人生という道 一里塚に到り
人生という書 一頁をめくる
人の為した善と悪との上に
沈む日は封に朱印を捺すようで
もう何も今日一日を取り戻せない


…ロングフェローの訳詩である。「封に朱印を捺す」というのは、よくはわからない訳を使ったが、イメージとしては書類に赤いハンコを押して封を閉ざすことである。正式な書類で、あとは出すだけで、もう中身を見ることも訂正することもできない。ひとたび一日を過ごして善いことや悪いことをしてしまったならば、もうそのことは変えられない、ということの喩えである。最終連の最初の二行の意味がとりづらかった。全体としては、ロングフェローらしく物静かな詩である。

…今回は昨日の訳詩の反省を踏まえ、訳詩家のようにではなく詩人のように訳したつもりである。手元に亡くなった義母からいただいた古い古い「ロングフェロウ詩集」があって、その訳を一部参照しようとしたが、こちらも詩人のように訳されてあって(「松山 敏譯」とある)、原詩の意味を正確に捉えようとしたら、参考にはならなかったのだが。

Sundown


The summer sun is sinking low;
Only the tree-tops redden and glow:
Only the weathercock on the spire
Of the neighboring church is a flame of fire;
All is in shadow below.

O beautiful, awful summer day,
What hast thou given, what taken away?
Life and death, and love and hate,
Homes made happy or desolate,
Hearts made sad or gay!

On the road of life one mile-stone more!
In the book of life one leaf turned o'er!
Like a red seal is the setting sun
On the good and the evil men have done,--
Naught can to-day restore!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?