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私の英語多読遍歴121:In Order To Live

以前にタイムラインで話題になっていた本。セールになっていたので迷ったけれど読んでみました。

まず結論から言うと読んでよかった。背中を押してくれたフォロワーさんありがとう。内容がかなり壮絶だと聞いていたので覚悟して読みましたが、確かに想像を絶する内容ながら冷静な語り口で、読んでいる間は興味が先行して一気に読めました。

3部構成で、北朝鮮での生活、脱北して中国に渡った後の話、そして中国を抜け出して韓国に到達し、人権活動家となるまでとなっています。

北朝鮮パートでは、リアルな北朝鮮の生活が語られます。印象的だったのはカースト制度、そしてブレインウォッシュ。戦時中の日本を思い起こさせますが、それよりももっと苛烈です。言葉を制限して思考できないように教育し、逆らえば一族まとめて罰を受けるのは恐怖でしかありません。

ただ飢餓から救われたくて、ごはんが食べたくて中国に渡ってもそこにはまた別の地獄。人身売買ブローカーによって中国の農村の嫁の来手がない男性の「花嫁」として売られる脱北女性たち。たった13歳でブローカーの愛人となり、中国語を覚えて仕事の手伝いをするようになったのが果たして幸運といえるのかどうかわかりません… どこまでも辛い。

そしてついに中国を抜け出し韓国へとたどり着くルートを見つけるのですが、そこにも試練があって、どうしてこんな辛い目に…としか思えません。でも彼女の周りには見つかって強制送還されたり、途中で自らの命を絶ったり、また売春婦として生きるしかなくなった女性たちもたくさんいます。彼女は幸運だったのです。これでも。

強い意志と知性、強靭な生命力、そして強運に救われ、韓国に辿り着いた先にあったのは自由。でも脱北者は差別の対象であり満足な教育も受けておらず、それで資本主義の世界で生きるのはこれもまた別の地獄。しかし根性で猛勉強し大学に入学、今はアメリカで人権活動家として生きているというのだからすごい。

ひとつひとつのエピソードがどれも強烈で読み進める手がとまりません。英語はとてもシンプルで難しい単語もなく、読みやすいです。

韓国で勉強し始めてから彼女が感じたことが深い。

I read more, my thoughts were getting deeper, my vision wider, and my emotions less shallow. 
(読めば読むほど、深く考えるようになり、視野は広がり、感情は薄くなる)
you can’t really grow and learn unless you have a language to grow within.
(共に成長する言葉なくして本当に成長し学ぶことはできない)

ーどちらも本文より

考えるためには言葉が必要。真理だと思います。

ジョージ・オーウェルの本についてもたびたび言及がありました。「1984」や「動物農場(Animal Farm)」特にAnimal Farmについては「これは北朝鮮のことを書いているとしか思えない」と言っています。

某大人気韓国ドラマで北朝鮮が出てきますが、あそこに出てくる人たちの背後にはこんな現実があるのだと思うと見る目も変わります。北朝鮮兵士が韓国の女性を助けて匿うって、当局にばれたら一族郎党カーストを落とされて餓死一直線、本人は処刑か死ぬまで強制労働とか、そういう世界。ロマンスとか言ってる場合じゃない。(むしろだからこそウケたのだろうけど)

読み終わっても強烈な追体験をしたあとのように頭がぐるぐると色々考えてしまいます。世界で貧困に苦しむのは北朝鮮だけではありませんが、その国境線の向こうには豊かなで自由な世界が広がっているのに、国がその境界を物理的にも精神的にもとざしているせいで今も飢えに苦しむ人々がいるという異常さ。そして指導者を崇め反対意見は抹殺し外部と遮断して国民をコントロールしようと、今、まさにしている国が北朝鮮の他にもあるという事実。

知識は大事です。そんなことが起こりうるということを知っておくだけでも、予兆があったときに打つ手を考えることができるのではないでしょうか。

日本語訳もあるので、英語では読めなさそうだけど興味あるという人はそちらでぜひ。

(すごいどうでもいい話ですが、お化粧でずいぶん印象って変わりますね)

以上、「In Order To Live」でした。

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