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アリーナ席で洗礼を浴びるーマカロックツアーさいたまスーパーアリーナ備忘録

さいたまスーパーアリーナでの「マカロックツアーvol.14 〜10周年締めくくり秋・冬ツアー☆飽きがくる程そばにいて篇」最終公演1日目。

アリーナA6ブロックという神席が当たり浮かれて会場へ。
通路側の一番はじっこで、前から16列目と過去最高の良席。

いつものSE、ビートルズ「Hey Bulldog」が流れ、薄暗いステージの上に一人ずつメンバーが登場。

興奮は最高潮!・・・のはずが。

1曲目からアリーナ席の洗礼を受けた。
なんと、前のカップルが定位置におらず、ずっとモゾモゾと動いている!

1列前の彼女は、私とほぼ同じ身長(たぶん)。彼氏は推定175センチ。自分の座席で立っていてくれればまだよいが、歌い始めるまで何度も耳打ちしあい、彼氏がその度にかがむ。
イントロにあわせ体を揺らし、波打つ群衆の頭とは別の乱れた周期で彼氏の頭が上下に揺れる。このままでは、頭しか見えない。

慌てて左へ移動したが、私の2列前にも推定176センチの男の頭!
右に移動しても前列カップルの頭!

なんてこった! 頭見るために6800円払ってんじゃないぞ。

これまで、どんな席だとしても、人の頭でステージまでの視界を遮られたことがなかったので、Aメロが始まってからもそぞろになる。
早く定位置を見つけなければ、と気が焦りBメロはほぼ聞き逃した。

しかも、彼氏は彼女と離れたくないのか自席よりもやや右側に立っている。
本来ならステージ正面に立つボーカルはっとりさんの方に体が向くので、ステージから見て左に位置する我々観客の正しい姿勢は、ステージに対して左斜め向きになること。
彼氏は彼女の方を向いている。何しにきた?

熱心なファンにありがちな(自分もだが)、曲に合わせてノリノリになりすぎて体を大きく揺らし、割り当てられた肩幅ほどのスペース以上の空間も自席と捉える行為もキャッチした。

尖閣諸島海域における中国の船舶問題を彷彿とさせる、「ここは誰のものでもありませんから」と通路へ越境する行為である。

私はアリーナA6ブロック16列目11番だった。
つまり、彼女は「15列目の11番」でなければおかしい。
しかし、前でノリノリの彼女は、「11.5番」という席を作り出し、
通路で堂々とダンシング。

だが、よく見るとその前の人々もみな、「11番」から外れて「11.5番」の席を確保していた。
ノっているうちにだんだん前にも移動し、列すら1つ前にずれている始末。
急に学級委員のような気分になって取り締まりたい気持ちに駆られたが、
言い方によってはモメるのでぐっとこらえた。

ノリノリの彼女とは対照的に曲がわからない風の彼氏。
だが、サビはさすがにわかるのか、腕を振り上げ前後に揺らす。

またしても視界が遮られる! 1曲目はふいにした。

曲のイントロでも演奏後でも、両手を挙げて手を振っている彼女。
肉眼ではっとりさんが見える距離なのでもったいないとは思ったが、背に腹はかえられぬのでモニターへ目をやった。
美味しい新鮮なブリをさばいたのに、刺身ではなく照り焼きにして食べるのと同じくらいもったいない。

・・・?
おかしい。
歌っている歌詞と口の動きがずれている。

何かに似ている。この現象。
そうだ、zoomの通信がよくないときに、音は聞こえているけど画面は緩慢な動きになってスピードが落ちるときと同じだ。

念のため、双眼鏡でも確認。
こちらは、歌と口が一致している。
どうなってるんだ・・・!

音の速さと距離で聞こえるタイミングが違うってこと??
なんだっけ、理科だか物理で習ったような・・・。


                 音源まで距離(m)
音の速さ(m/s)=-----------------------
                音が伝わった時間(秒)

こんな公式を記憶の彼方からひっぱりだしながら、状況を整理しようとしたが、口のずれに違和感を感じすぎ、まったく頭に入ってこない!!

どうでもいいことに気を取られて2曲ほど楽しめなかった。
その後もがんばって視界が遮られない場所を求めて、曲に合わせて体を揺らす。だんだん没入できはじめ、中盤までは無事に楽しんだ。

MCでは「座っていいですよ。疲れるからね」と配慮され、着席した。
座ればなんとか見やすいかと思いきや、もっと見えなくなった。

足が長くて顔が小さく、座高が低い男性でなければ、傾斜のない会場で着席して鑑賞は不可だと強く思う。日本人男性の足の長さについて、しばし意識が飛んだので、武道館から始まったツアーを振り返るMCは、ほぼ覚えてない。

後半は前列男性が完全に彼女にぴったりくっついて立ってくれたおかげで、ステージまでの隙間ができ、穏やかに、そして心ゆくまではっとりさんの歌声に酔いしれた。

アンコールを終え、ベースの賢也くんが客席へピックを投げた。
いくらアリーナとはいえ、さすがにこっちへは飛んでこないだろうと思っていたら、3列前で落下!

しかも、皮肉なことに通路に落ちたのだ。右はじの席の女子と左はじの女子が親指よりも少し大きいくらいの小さなピックを舞台に激しい女の戦いを繰り広げているのを目撃した。

私も昔、アイドルの投げたタオルをめぐって綱引きをし、仲良く切り分けた経験があるが、ピックは硬いし切れるわけがない。
この勝負、どう決着つけるのか見守っていた。

右の女子の気迫たるや、すごかった。鬼の形相で左の人差し指に渾身の力をこめてピックの上でぐりぐりと領地を広げている。さらに、右手では床に押し付けられたピックを浮かせて引き抜こうとしていた。

あまりの卑しさに恐れ入ったのか、左の女子は手を離し、右の女子はその隙にサッと目にも止まらぬ速さで懐へ納めた。まるで、手だれのスリの犯行現場を目撃したような気持ちになり、なぜか悲しい気持ちになった。

昔、仕事で中野サンプラザまで女の子のアイドルグループのコンサートに行ったことがある。関係者席なので2階の前列だった。
お付き合いで行ったこともあり、知らない曲ばかり。MCも聞き流していたのだが、背中が痛くなり背もたれから少し離れた瞬間、後ろからぬっと手が。

「見えないんですけど」

と怒られた。アイドルのコンサートは、顔を見るために来ているようなもの。申し訳なさから、できる限り体を小さく丸めて終演をじっと待った。

アイドルは見えなきゃ意味がない。そりゃそうだ。わかる。
でも、バンドは別に見えなくたったいい。ノれるかどうか。音楽を聞きにきている。そういうロジックなのでしょうか。

マナーが悪い人の近くでは、ライブの楽しさが−3割くらいになってしまう。自分も気をつけなければ、と思い帰路についた。




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