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私は水風呂に入れない2

サウナの正しい入り方を何度も復習しながら、近所にある行きつけの温浴施設へ。

慣れない場所よりは、行きなれたお風呂屋でサウナを心ゆくまで試してみるのが良いと考えたからである。その日は、初夏を感じさせる日照りと涼しい風がときどきふいてくる心地のよい気候だった。

脱衣所に入るなり脇目も振らず素っ裸になると、給水用のお水とタオルを2枚持って浴場へ。まずは、身体をてきとうに洗い清めてから41℃程の内湯に浸かる。

ここの浴場は温泉。東京ならではの泉質で深い赤茶色をしている。正直、足元がとても見えづらく、段差はすり足で把握しないとちょっと危ない。でも、気にかけるのはそれくらいで入ってしまうと、とろみがかったお湯がしっとりと体を包んで深部まで柔らかに温めてくれる。

内湯の窓は常に全開で、露天に植えられた木々がそよぐのをぼーっと眺めながら、お湯に浸かっていられる。平日の午前中なのでひともまばらで、ほとんどが近所のおばあちゃんだった。

頬がゆだってきたなぁと感じるくらいでサッと湯上げする、ブロッコリーもこのくらいのゆで時間が美味いと思うくらいの経過時間。
わたしは長湯ができないたちなのだ。

水を飲んでからだの下ゆではここまで。頭には温泉タオルをほっかむりして、おしりの下へ敷くためのタオルを持ち、いざサウナを試行!

サウナ内には既に2人のおばあちゃんが、即身仏のように佇んでおり、全身から汗を滲ませていた。私も熱源を囲むようにして、おばあちゃんの中にまじる。

元来、人からでる体液(主に汗)が苦手なので座る位置の湿り気を用心深く確かめてから、タオルを敷いて、きもち浅めに腰掛ける。

壁掛けされた12分時計が丁度6分あたりを指していた、見やすくて助かるなと思いつつ…蒸気と熱波であっという間に全身が発汗してきた。

こうなると後は時間との戦い。暑いのには耐えられるほうでは無いのだが、我慢強い性格である自分の安全を考慮して、1回暑くてダメだとなったらすぐに出ようと決めた。

膝の上で緩く握られた手の甲にじんわりと汗が浮いてきた、こんな所にも汗をかくんだなと小さな感動が訪れたあと、背中や鎖骨の間を汗がどんどんすべっていく。狭いサウナ内におばあちゃんの呼吸音と自分の鼓動の音だけが響き、妙な落ち着きを覚えた。

そろそろ、こめかみがジンジンしてきたぞ。よし、サウナを出るかと立ち上がった途端に青い星が視界に散ってぼんやりした。12分時計は丁度12分を指し、6分経過というところ。それだけで、からだはこんなにに熱に当てられてしまった…果たして水風呂までたどり着けるのだろうか。つづく。

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