親孝行って言わないで

ある三姉妹のお話です

長女は夫婦で自営業を営み忙しく暮らす
離れて暮らす両親には
頻繁に服や肌着など身の回りの物
季節ごとには果物を送り
おこずかいも渡している
年に2回は実家に顔を出すものの、すぐにとんぼ返り
それでも両親は「忙しいのに、よく来てくれた」と喜んでいる
両親が長女の家へ遊びに行くと
長女は近くの温泉を予約して両親を泊まらせてくれる
近所の人はいう
「いいわね~」
「お小遣いまでくれるなんて」
「温泉だなんて、なんて親孝行。うらやましい」
三女が実家に顔を出すと
「お姉ちゃんと温泉に行ってきた」
「これはお姉ちゃんが送ってきてくれた」と
母親はうれしそうに話をする

次女は看護師をし、あと数年で退職
しかし結婚した二人の娘も働いているため
何かと頼られることが多く、良く孫の面倒を見ている
自分の時間をかなり娘夫婦に捧げている
年に一度は娘夫婦もつれて
両親のいる実家に遊びに行く
若いころは両親連れ、
ある時は母の姉夫婦も連れて旅行にも行っていた
次女は料理が得意なので実家に行った時は
自分がすべての買い物をし料理を作っている
これも近所の人からすると
「なんて親孝行なの」とうらやましがられている

三女は両親の家から少し離れた場所で
夫と自営業を営む
子供達はみな家を出て働いている
自分が一番実家に近いので
頻繁に家を訪れては両親の食事の世話をする
姉たちの様に両親におこづかいをあげたり
旅行に連れて行ったりする金銭的な余裕はないが
時間的な余裕があるので、身の回りのことをしている
しかし三女の事を近所の人は誰も褒めない
三女が実家にいる時に近所の人が訪ねて来た
「お姉ちゃんお母さんたちを旅行に連れて行ったんだってね」
三女は「親孝行」として見られていない自分を知る

三女は別にそんなことは気にならない
ある時、人から「親孝行にしすぎは無い」と言われた
確かにそうだと思う

しかし、
三女はなぜかその言葉がひっかかるようになる
「親孝行・・・」
親孝行ってなんだろう

親にお金を送る事は親孝行なの?
答えは「親孝行に決まっている」
旅行に連れていく事もこれは当然親孝行だ

長女も次女も
みんな親孝行をしている

三女はある人に言われた「親孝行」
という言葉がなぜ引っ掛かるのか考えた
それは、三女自信が親の身の回りのことをする事は
「親孝行」という種類の行為ではないと思っているからだ

冷房になっているエアコンを暖房に切り替え
食事の世話をするのは、必要にかられた「生きるための事」
それを親孝行と言われることが引っ掛かったのだ
子供にミルクを飲ませ、食事を与え、お風呂に入れたら
「子煩悩」と言われても、「子供孝行」とは言わない

ある人はいう
「連休に帰って親孝行してきた」

親孝行とは日々の生活とは別の
なんだかイベントやサプライズのような意味合いを感じる
だから、日常の生活の手助けをしても
それは「親孝行」ではなく「生活」として捉える

長女と次女は親孝行をしているだけ
三女は両親の生活の援助をしている
あなたが親の立場なら
どちらの支援を選びますか

三女は思う
「たまに来た程度でいい顔しないで!」
「物を送ったぐらいで、
いつもお金をかけていると自慢しないで!」
「おこづかいを渡したぐらいで、偉そうにしないで」

あなたたちが両親に渡したおこづかいよりも
私が使った交通費と食事代の方が
はるかに金額が多い事を知っていますか

あなたたちが帰った後に、
自宅の片づけをしている事を知っていますか
玄関に花を植え、家の周りを片づけ、病院に連れて行き
それでも私は自分を親孝行だなんて思えない

だって生活でしょ!
当たり前に必要な生活の助けをしただけでしょ

お願い「親孝行にしすぎは無い」って言わないで
私は親孝行などしていないのだから
これは生活
親孝行なんかじゃない

三女は改めて思う
今度生まれて来るときは、一番遠くへお嫁に行きたい。。。







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