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物語の中に生きたい

物語の中に生きたい。好きなシーンをリピートして何度も飽きるまで体験したい。

例えば、穏やかな淡々とした物語。主人公は猫と住んでいて、お気に入りのカフェがある。ひょんとしたことからカフェのマスターと仲良くなって、休日はよくそのカフェで本を読みに行く。家に帰ると黒い猫がいて、餌をあげる。懐いている野良でも、拾ってきた気まぐれな猫でも、引き取った猫でもいい。そんな淹れたてのコーヒーの湯気みたいな、たまのハプニングでわたわたするような、物語。

例えば、レールの上を安全運転で進む物語。主人公は少し頭が良くて、努力家。近くの自称進学校に行って、学歴やありがちなコンプレックスを抱えながらも、社会のレールを淡々と歩んでいく。主な登場人物は、友達。レールを進みながら、ありがちでとても重いストレスを抱えながら、友達と朝までのんで、たまに失敗をして、よくある恋愛を繰り返す。死ぬ時にはまぁ、及第点かなって笑いながら死ねる、物語。

または、下克上の物語。貧困の中で生まれた主人公。両親や兄弟と助け合って生きている。だけどなんだか世界に物申したくて、起業する。社会の実は結んだけれど、なんだか空っぽな、物語。

あるいは、ずぅっと迷子な物語。主人公は、恵まれた家庭に生まれて、少しだけ忙しい親の綺麗な愛が足りないけれど周りの人に助けられて強く成長する。冒険心と曖昧な野心だけが強くて、急に故郷から飛び出してしまう。それからももっと、もっと、って上しか求めない主人公が楽しみづらい人生を楽しもうとする。ジェットコースターみたいな、頂上でフッと浮いて、一瞬綺麗な景色が見えたと思ったら重力以上のスピードで動いていく、物語。

私たちは物語の中に生きている。全ての物語に美徳があって、失敗があって、人がいる。私の物語が、本だったらいいのに。大好きなシーンに栞をつけて、何度も読み返せたらいいのに。

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