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夕暮れ時

美しい気持ちや感情はまるで夕暮れ時のようです。受け入れる花束、去っていく花束、視野の外で枯れていくたんぽぽたち。悲しみも幸せもきっと世界にはありふれるほどありふれているのでしょう。そういった悲しみたちが見えない世界というのが美ということでしょうか。

美しい気持ちもまた、悲しみと同じように、波のようです。来ては去り、去っては訪れ、混ざりに混ざり合ってどちらが美しくどちらが悲しいのかすらわからなくなってしまいます。

夕暮れ時はそんなことを考えます。失ったもの。美しい創造性、上がっては落ちていく太陽。昇る月。涙が出そうな感傷。忘れてしまったものたち。心の絵筆。自分の心が、感情が、手に、足に、体に、表情に繋がっているのだということを、とても単純なことをわすれてしまいました。

雑踏に揉まれて多くのものを落としていきました。自然の循環のように落としたものは戻ってくると朗らかに信じてはいますが、落として失ってしまったら私はどう自己を保てばいいのかすらもうわからないのです。書くことができなくなってしばらくが経ちました。書くことを停止してしばらくが経ちました。

夕暮れ時はそんなことを考えます。走り出したときにポケットから落としてしまったもの。緩やかな空間、温かい呼吸、心臓と脳みその共鳴。美しい空。染まる私。何かを忘れてしまった私。

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