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読書あれこれ

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1冊につき数千字を超える読書ノートを公開しています。これを読めば実質的にその本をすべて読んだことになるというレベルのクオリティを目指しています。
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記事一覧

猫を棄てる 父親について語るとき 村上春樹

こんにちは、こおるかもです。 今回の読書ノートは大好きな村上春樹さんのエッセイから。 村上さんは、小説以外にもエッセイを大量に書かれていて、一昔前はアンアンで連載をもっていたほどです。 そんななか、村上さんがこれまでほとんど語ってこなかった父親について、戦時中のかなり入念な事実確認を紐解きながら、村上さんご自身にとって父親がどんな存在であったかを赤裸々に語っています。 ちなみにタイトルの「猫を棄てる」とは、ちょっとショッキングなタイトルですが、実際にはかなりほのぼのと

いったい誰がAIにお金を払うというのか?

こんにちは、こおるかもです。 今週は、AppleのWWDCが開催されており、新しくApple Inteligenceなるものが発表されました。 発表によると、次期OSから、ChatGPTの最新モデルであるChatGPT-4oが組み込まれ、ユーザーは無料で使えるようになるということです。 これまでAIは一部のモノ好きのものだったかもしれませんが、これからは世界で18億人いると言われるiPhoneユーザーの標準装備となりそうです。 そこでぼくが疑問に思うのは、一体誰がその

【プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神】読書ノート Vol.06

こんにちは、こおるかもです。 今日は久しぶりにフォーマルな、こおるかもの読書ノートです。 ただ、これまでのように読書ノートをそのまま載せるのではなく、やっぱりもう少し自分で要約や批評を加えながら書くということにしました。その方が少し時間もかかりますが、自分のためにも、読者の方のためにもなると思ったためです。 ぜひお付き合いください。 プロ倫、そう呼ばれるこの名著は、その学術的な評価ゆえなのか、はたまた、そこそこ分厚めの岩波文庫を読めば、いっちょ前になれると信じられている

春の読書祭り開催のお知らせ!

こんにちは、こおるかもです。 実は先週から、妻と子供が日本へ一時帰国しました。 期間は2ヶ月。 これはもう、普段はできないあんなことやこんなことを思う存分やるっきゃない!!! というわけで、 春の読書祭り の開催をここに宣言いたします。 妻と子供をヒースロー空港へ送り届けて直帰した後、さっそく書棚へ向かいまして、渡英以来全然読めていなかった積読本を棚卸ししてきました。 こちらです。 じゃん。 合計46冊ありました。 2ヶ月で46冊 う~ん、いけるかな。。。

[4/27増改定]あまりにも暇だからカントでも要約しようっと。

今週末も暇です。 やることといえばカントを要約することくらいしかありません。 カントとは、言わずとしれた近代哲学の完成者と称されている大哲学者です。が、普通の人が「純粋理性批判」とかの原著を読んでも、たぶん、「これはどこの魔法学校の教科書ですか?」くらいにしか思いません。 そこで、今日は僕なりの理解でおそらくこのnoteの読者諸氏なら理解できるように平易に説明していきたいと思います。 ではさっそくいってみましょう。 カントにとって、出発点は、「時間と空間」をすべての現

今週気づいたこと

こんにちは、こおるかもです。 今週の記事はこの1週間の出来事をまとめてお届けします。 ブライトン旅行記がなぜかプチバズり先週末に書いたブライトン旅行記が、今までの記事の中でも1~2を争うビュー数になりました。読んでくださってありがうございます、、、なのではあるのですが、あまりにも適当に書いたのにこんなに読まれることに少々戸惑います。 note を書いていてつくづく思うのは、自分が一生懸命書いた記事ほど読まれない!ということ。そして適当に短くまとめたほうが読まれる。労力とビ

こおるかも流・読書の技法

こんにちは、こおるかもです。イギリスで宇宙開発エンジニアをやっています。 ぼくは読書がわりに好きです。というか、病的に好きです。 読書にハマったのは比較的遅く、20歳(大学2年生)の頃からですが、そこから渡英するまでの約10年間、毎日3時間以上の読書をほとんど欠かしませんでした。 蔵書の量でいうと、数えたことはありませんが、イケアのフルサイズのブックシェルフ3台に、目一杯仕切り板を入れたうえで、さらに奥行きが許す限り手前と奥で2列にしてなんとか収まっていたような感じでし

タフでなければ。。。

みなさんこんにちは、こおるかもです。イギリスでエンジニアやってます。 今日は英語の勉強も兼ねて、僕の好きな小説の一節をご紹介。 この一節、アメリカの作家、レイモンド・チャンドラーのハードボイルドな推理小説シリーズの一冊「プレイバック」の一節。 難事件を解決した探偵フィリップ・マーロウが、解決後に依頼者の女性に、どうしてそんなにHardなのに、そんなにGentleになれるの?と問われたシーン。 せっかくなので原文をみてみましょう。 原文で読んでも、お手本のような仮定法

村上春樹「ドライブ・マイ・カー」を英語で読む

こんにちは、イギリスで家探しをしているこおるかもです。 この週末は国王の戴冠式、コロネーションでお祭り騒ぎ。 もちろん不動産屋さんも完全閉店のため、やることがない。 そこで、村上春樹のドライブ・マイ・カーを英語で読んでみました。 こちらは、短編集「女のいない男たち」の第一編として収録されている短編です。 最近行った街の本屋さんで、たまたまこの英語版を見かけたので、衝動買い。でも実は家に帰ったらすでに同じのを持っていたという笑。 これを持って生後2ヶ月の赤ちゃんと、CO

【民主主義とは何か】宇野重規ーこおるかもの読書ノートVol.05

こんにちは、こおるかもです。 さて前回は、小論を交えて、公共哲学への入り口を論じてみました。 ここからいきなり哲学の話を深掘りしていくのは、ちょっと味が悪いので、もう少しとっかかりやすいテーマとして、「民主主義」ということを取り上げて、そこから徐々に政治哲学的なテーマから攻めていこう、と思いました。 というわけで、今回取り上げる書籍はこちらです。 はい、そのまんまのタイトルですね。民主主義とは何かについて、日本ではその道の論客と呼ばれているらしい宇野重規先生から学んで

【新作発売】村上春樹ー街とその不確かな壁

こんにちは、村上春樹主義者のこおるかもです。 実はこのnoteを始めたころに、何回か村上春樹愛を語っています。 そしてこの度、村上春樹の最新長編が発売されました! タイトルは「街とその不確かな壁」 こちらのニュースを引用しておきます。 楽しみすぎる!!! ちなみに、このタイトルは、1980年に雑誌に掲載された中編小説のものと同じで、どうやらこの作品をベースにしたものであることがわかっています。ですがわたくしこおるかも、大変お恥ずかしながらこの作品は存じ上げておらず、

多様性を認めよう、と言うけれど。公共哲学の話。

この記事では、 ということを、すごく難しく説明します。 この記事は読書ノートではありませんが、僕が日ごろ関心のあるテーマについて、ちょっとした小論を書いた後、関連する書籍をいくつか紹介します。 最近の日本では、「宗教二世」や「同性婚」など、ひとびとの旧来の価値観を問い直すような社会問題が話題になっているようです。 実は僕自身、こうしたテーマについて、部分的に当事者であったりもするので、大変関心があるのですが、一方で世間での議論には冷たい視線を送っている面もあります。

【コモンの再生】内田樹ーこおるかもの読書ノートVol.04

こんにちは、こおるかもです。 今回の読書ノートはこちら! ぼくは内田樹先生の著作が大好きです。時々とても難しい話にもなりますが、この本は全体的に軽めの感じで書かれており、とても読みやすい本となっています。 また、この本を取り上げた理由は、タイトルにあるように、「コモン」ということがテーマになっているからです。これは、読書ノートVol.01で取り上げた斎藤幸平さんの「人新世の資本論」からのつながりで理解していただけるととても良いと思います。 また、序盤に「共同主観的な主

【愛するということ】こおるかもの読書ノートVol.03

こんにちは、こおるかもです。 今回の読書ノートはこちら! なんだかエモいタイトルですね。 でも本書は、決して恋愛のHow To本などではなく、人間の愛の根源を探究した立派な学術書であり、精神分析学、または西洋哲学的に価値のある本です。 今回は短いので、要約なしで、全文公開していきます。 ですが、前回に公開した読書ノートとも密接に関連していきますので、ぜひ先にこちらもお読みいただければ幸いです。 それでは行ってみましょう。 導入愛は技術であって感情ではない。その視