記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

Netflixドラマ『ウィッチャー』シーズン2までの感想

Netflix『ウィッチャー』、シーズン2全て観終わったよ。

シーズン1から一転、どうしたの!?ってくらい全てが分かりやすくなってたな。
これは私がウィッチャー世界を解ってきたからとか、シーズン1ではバラけてた時系列の問題がなくなったからとかでは決してなく。
普通に視聴してるだけでキャラクターの感情や意味するもの、展開がかなり分かりやすくなってる。

たとえば、シーズン1のジン関連。
ドラゴンおじさんの前で、ゲラルトがジンに“願った”から、イェネファーは彼を好きになった、と考えて二人が喧嘩になる、というシーンがあったんだけど、ここで
「ゲラルトが何を願ったのか」
は、これより前のジンvsゲラルト回でも、このドラゴンおじさんのエピソードでもはっきり明かされていなかったように記憶している。
ゲラルトは、イェネファーの抱く恋愛感情(や再会の運命も?)を
「(ゲラルトがイェネファーとそうなりたいと)願ったからではない」
というような否定をしているが結局真実は分からない。
“願いはイェネファーの命を助ける事で、ジン無関係に二人は惹かれ合っている”
のか、
“ゲラルトがイェネファーへの愛を叶えたい的に願ったため、それを叶えたジン効果によりイェネファーはゲラルトに惹かれている”
のか。これ結構重要な事なのにな。優しい理解者と思い心を許してた元カレに血筋の事リークされて傷心のイェネファーなんやで?
ゲラルトとの関係がジンのせいなら更なる可哀想案件だし、そうでないなら今度こそ幸せ案件だったし。
ここ不明瞭のままでいいの!?
(明確にされてるシーンあって私が見落としてるだけなら教えて欲しい)

(そもそもこのジンのエピソードはちょっと分かりにくい。ヤスキエルと思いきやゲラルトの方がジンの主になっていたので、三つの願いのうち一つ目が「ヤスキエルの喉を攻撃して黙らせた安らぎ(静かにさせる)」、二つ目が「拷問官の破裂」になってしまった、というのを二回観てやっと理解した)

時系列の交錯や、原作予備知識のないドラマ視聴者にも遠慮無しに連発されるウィッチャー世界の固有名詞の他に、シーズン1にはこういった
“多くを語らない分かりにくさ”
をかなり感じていた。
ナレーターによる注釈(もしくはあらすじヤスキエルソング)が欲しいと何度も思ったくらいにだ。

こういった難解さが、シーズン2ではほとんどなかった気がする。
たとえば麻痺毒を盛ったフリンギラがカヒルの前で他の幹部を一方的に殺して脅迫するシーンとか。
もしエピソード1のままのテイストによる演出だったらあそこまできちんと、自分の過去の話を長々聞かせる+行動+脅迫の台詞で一から十まで言っていなかったと思うんだよね。
フリンギラが意味深な事をカヒルに一言チクリと言って、他の幹部を殺して見せるだけ+ヴォレス・メイアの笑い声+カヒル心で理解した表情+SEで別シーンへ、くらいにおさめられてたんじゃないかな。

シーズン2は展開的に、ウィッチャーの秘密とか政治関係の内容をとにかく視聴者に理解させる為、説明を多くしないといけない局面が増えた……ってのはあると思うけど、全体的に台詞回しと描写が細部まで分かりやすくされてる。気がする。多分。

そんなわけで
「覚えながらついていくのがやっと」
だったシーズン1とは比べ物にならないくらい、シーンやキャラクターが雄弁だったから、自分なりの感想を各エピソードごとにしっかり持ちながら観れる余裕があった。

せっかくなので、分かりやすかったよ!という印象以外のお気に入りシーンとかちょっとした感想を幾らか書いていこうと思う。
(鑑賞後の感想なのでシーズン2までの内容のネタバレを含みます。ネタバレ注意!)

□ゲラルトとシリラ

シーズン1ラストでやっと合流できた二人。
シーズン2では、ゲラルトは不器用ながら保護者として、更には師としてシリラと共に歩み始めた。
シリラを心配したり、無理をさせまいとしたり、シリラ本人とヴェセミルの危険な試みに猛然と反発したりと、単純に“驚きの法”に従って守っているだけではない、というゲラルトの感情に安心する。もはや“パパみ”。

シリラの血筋には世界を、人とエルフ、そしてウィッチャーをも巻き込む重大な秘密がある。ラストでは更にニルフガード皇帝“白炎”エムヒルとも……というのがシーズン2を通して明らかになっていく。シリラ周りの展開はドラマ『ウィッチャー』のトロの部分と言える。

周囲が彼女の存在に翻弄される中で、か弱い王女だった彼女自身は意固地なほどのブレなさを見せていくのが頼もしくもあり、危なっかしくもあり。
シーズン2になって化粧変わってから、何かゲラルトに似てきたよね?

□ウィッチャーの拠点ケィア・モルヘン関連

まず、ウィッチャーの拠点、まさかのデリヘルOKという衝撃。
敵に襲撃された過去から慎重になってるんじゃなかったのかよ(笑)

シリラとは軽口を叩き合う程打ち解けているコンビのコーエンとランバートは、例のウィッチャーSASUKEに挑むシリラを応援しつつも、その実彼女を年頃の少女として扱うデリカシーは皆無でトリスにキレられる(まあ仕方ない……)。

シリラの存在を前に
“失われていたウィッチャー製造技術を再び手にする”
という密かな野望を見せ、結果ゲラルトと対立してしまう師匠・ヴェセミル。
ウィッチャー製造はエルフの技術である、というのは結構ビックリ。

更に侵入者あり、ゲラルトと親しく、しかし木の魔物となり果ててしまいゲラルトの手で討たれるエスケルのエピソードありで、ケィア・モルヘンは結構荒れる。ただでさえ仲間が少なくなってしまった、みたいな話がありつつも容赦なく死者も出るし。

そんな中で、シーズン2ラストバトル、ゲラルトとヴェセミル、シリラ、仲間のウィッチャー達、そしてイェネファーとヤスキエルまでもが集結してのバシリスク戦。
クライマックスとしての熱さの中で、仲間を失い、師弟の信頼にもヒビが入りそうだったウィッチャー達の団結と確かな結束をじゅうぶんに見せてくれた。

ストリガ事件の時にゲラルトと協力したトリスがケィア・モルヘンに出張してのあれこれも良い。
いやあの、トリス、めちゃくちゃ素敵じゃないですか?天使かよ……
防衛戦で仲間をたくさん失い、自分も死にかけて心身に大きな傷を負っている中で、人として・女性として・魔法使いとして、ゲラルト、シリラ、ヴェセミルに懸命に寄り添おうとする事のできる彼女は、イェネファーやシリラの見せる強靭な精神とはまた別の強さを持つ人間的なキャラクターとしてとても好き。
確かサブリナって同級生も生き残ってるので、彼女にもシーズン3でもまたちょくちょく登場して欲しいな。

□イェネファーとヤスキエル

己の望むものを手に入れる為のなりふり構わなさではシーズン1から色々ヤバかったイェネファー、今回は過去に自身の払った肉体的な代償に加え、防衛戦で大規模な炎の魔法を使ったせいで魔力をも失っている。
で、失ったものがあるとえげつない行動力を発揮するのがイェネファー。
魔法協会が捕虜にしたカヒルを処刑寸前で駒として連れ出し、明らかに怪しい魔物めいた小屋ババアことヴォレス・メイアのそそのかすままに、ゲラルトが守っているシリラすら犠牲にしようとする。

基本クソヤバ野心の行動力オバケのイェネファーが、他者の為に行動を止めたのがなんと、ヤスキエル絡みとはまた驚きだった。

シーズン1ではウザキャラ吟遊詩人であり、ゲラルトの失恋八つ当たりで追い払われたヤスキエル、ゲラルトへの恨み節を歌にして詩人活動を続けている……のだが、何と密かに、迫害されるエルフ達の亡命を手引きしているではないか。

お前~~~(『セクシーコマンドー外伝すごいよ!マサルさん』の「ウォンチュウ!」の動き+『歯のマンガ』のなれなれしさで)!!
しばらく見ないうちにお前~~!

政略と戦争まみれのウィッチャー世界で人道的にホッとさせてくれる癒しはトリスだけだと思っていたが、まさかあのヤスキエルがスーパーボランティアと化していようとは!

……ちなみに、イェネファーがヤスキエルを案じて残るあたり、身内にヤスキエルのファンがいるという男が
「ドラゴンの正体は分かりやすすぎた」
「時系列が三つあるのがよくない」
等ヤスキエルの歌にダメ出しをするのだが、これは明らかにシーズン1で叩かれた箇所の製作サイドによる自虐ネタだろう(笑)。

普通に好感が持てた、シーズン3もぜひ分かりやすくお願いしますよ。

□アレツザ関連

エピソード1ラストの防衛戦で活躍してた髭の魔法剣士的なオッサン・ヴィルゲホルツと、イェネファー達の先生ティサイアがまさかデキてるとは。
(ティサイアは、防衛戦が成功したからか協会内での立場が上がってる様子)。

しかしやはりというか、教え子である魔法使い達に母性のような感情を持つティサイアに対して、ティサイアを想い世界を憂う“だけの”ヴィルゲホルツの感情では足りないしすれ違う。お前はトリスたんとティサイアの信頼関係を傷つけるのをやめろティサイアの話聞いてんのか!

力不足の生徒をウナギに変える容赦なさを持つ反面、防衛戦から生還したイェネファーやトリスを心から大切にしているティサイアの親心みたいなものは、折に触れてかなりしっかり描かれていて、シーズン1後半~シーズン2にかけてティサイアの好感度爆上がりよ。

にしても魔法協会の男はロクなのがいないな。
シーズン1第一話から日食ネキ敵視、バーチャルエロ空間にいたストレゴボルといい、その弟子で、イェネファーの血筋を師匠にチクった元彼イストレドといい、姪のフリンギラをコネ入社させようとしたオッサンといい。

人の心無いんか!
で、人の心無いならその鬼畜さで捕虜をサクサク拷問していけば良いのに、捕虜のカヒルへの拷問も結局ティサイア(脳にダイレクトアタック)が活躍している。

□ニルフガードとエルフ

新たなリーダーの女エルフ・フランチェスカの元に集まるエルフ達は、ヴォレス・メイアの暗示をエルフの予言者のものと解釈したフランチェスカの決定に従い、目的を同じだとしてニルフガード(の魔法使いフリンギラ)と手を組む。

シーズン2を通して私が一番ムカついたのはこのエルフ達。
フランチェスカは、手を組んだフリンギラとは
「対等な仲間だね嬉しいよ」
的なTHE友情トークをしていたのに
「子供が生まれたので戦争やめるわ」
とあっさり約束を破る始末。
何!?パートのママさん並みの契約スタンスでいたん??いやパートのママさんだって出産近くなった時点で言うべき事は言うわ!

ダメでしょ……こんな掌を返すみたいな、裏切り同然のやり方したら、白炎みたいな策略を思いつく者がいなかったとしても生まれた赤ん坊がニルフガード側のヘイトを集める恐れは当たり前にあったし、人間達から更にエルフが嫌われる事にもなり得る。
あれだけ聡明っぽい物見高さと落ち着きを見せてたのに、明らかに判断が迂闊すぎる。
で、赤ん坊が殺された後、悲しみと怒りでキレたフランチェスカが何をしたかというと、人間達の赤ん坊を無差別に殺戮。

更に、レダニアのディクストラによりスパイとして働かされる事になったエルフ少年・ダーラ(シーズン1から髪型をがらりと変えての登場)も、一方的にスパイを辞めエルフ側に。

エルフ、クソ約束破り種族じゃん。

いや分かるよ、後続ぽっと出種族の人間に優しくしてあげたのに迫害されてきた、苛酷な歴史を生きてきて。
尊厳すら考慮されず差別されてきた彼らにとって、本来人間と手を組むなんて不本意だろうし、ましてや長らく生まれなかったエルフの新生児の誕生という歴史的なめでたい出来事への喜びを、人間なんかの都合に左右されたり縛られたくないんだろうな。

本来、エルフって考え方が自由なんだと思う。
戦争なんかよりめでたいことの方が大事だよね、って、心のままに柔軟に気が変わっていけるというか。

というかそもそも、新生児が生まれなくなった時点で
『これが自然の摂理か、我々は滅びる種族なのかも知れんね……森は生きている……』
みたいに悟るのが私の中のエルフのイメージだったんだけど、ウィッチャー世界のエルフは背負ってきた不幸な歴史のせいか、森の賢人的なイメージとはかなり違う(一時期シリラとダーラを匿った女種族の方がそれっぽいね)。

こうなると、イェネファーが思い立ったら猪突猛進に行動を起こすのって、彼女の中の“エルフらしさ”なのかな、とも思える。
心に忠実で判断が早い性格ね。

……でもまあ、ウィッチャー世界のエルフとは仕事したくないわ(笑)。こんな意味不明な感想がかなりでかく残った(笑)。
逆に、あの傭兵のドワーフ達とはめちゃくちゃビジネスパートナーになりたい。
一般的に、金にきっちりしてて技術にプライドがある種族とされるドワーフ(『ハリー・ポッター』でも銀行員はドワーフの仕事だった)、ウィッチャー世界でもその気質は同じっぽい。
女性と思しきドワーフにヒゲが生えてるのも、ベーシックファンタジー好きとしては嬉しい個性だった。

□その他の人々

シーズン1でゲラルトとシリラを保護してくれたあの優しい一家が全滅しててかなりショック。

北方の国々、の要人の中にあのストリガ事件の近親相姦王も健在だった。懐かしいぜ!

シントラの囚人だった炎を扱える魔法使い(ゲラルトとイェネファー曰く「クソ魔法使い」)と、ウィッチャー化の薬で顔の半分が爛れてしまった女性は、今のところ誰の元で動いているのか不明(だよね)。
どこかの国なのか、それとも個人的にシリラの事を知る者なのか……不穏な新勢力の登場だ。

あとは、ニルフガードよりキナ臭さヤバさ漂う、レダニアという国。
王が若いっぽくて、かなりあのディクストラを頼りにしてる様子。
メンフクロウの女性は、メンフクロウに化けられるのか、それともフクロウの魔物なのか。

ティサイア達の会議でシリラに賞金がかけられるくだりで
「有り体に言って、シリラが生きてるせいで大変な事になった」
と言ってた人も、北方の国々の要人の一人って事なのかな。

□クリーチャー関連

チェルノボグ、レーシー、バシリスク、あとよくわからない巻き角のムカデ的なやつ……など、シーズン2でも良デザインの怪物が多数登場。

私が一番気に入ったのは、ヴォレス・メイアが住んでいる「生足の小屋」。
と、何と言ってもニヴェレンとブルクサ(ブルシャ)のカップル。
エルフと人間の異種族間の恋物語の伝説がこのニヴェレンの口から語られるのが対照的で良い。
ブルクサのカクついた動きが不気味で好き。シリラとブルクサが会話するシーンは何回も観ちゃった。

□シーズン3が待ち遠しい!

これを書いている時点(2022年秋)で、シーズン3の撮影終了が告知されている。
配信がとても楽しみだ。シーズン1から再び観直しつつ、ゲームや小説のゲラルト達に触れながらシーズン3を待つのもいい。
取り敢えずシーズン3でも、ウィッチャー世界の良心である天使のトリスと、俺達の面白吟遊詩人ヤスキエルは元気に活躍してくれますように!

ヴィルゲホルツは反省しとけよ!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?