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【ドラマ】NHK朝ドラ「虎に翼」 皆で「はて」と立ち止まりませんか?

今回は、2024/4/1から始まったばかりのNHK朝ドラの話です。

タイトルは「虎に翼」。
「鬼に金棒」と同じ意味のことわざだそうです。
主演は伊藤沙莉さん。
昭和初期からはじまる物語で、日本で初めて女性として弁護士、裁判官、裁判所長、それぞれを務めた三淵嘉子さんをモデルとした物語とのことです。

これがとにかくよい。
スタートから見ていたわけではなく、友人からの良かったよ、の言葉で見始めたのですが、よい。

その「よい」を言語化してみます。

1.価値観はひとりひとりさまざま

主人公の寅子(ともこ)は、結婚が女の幸せという当時の常識がどうも合わないと感じている子です。

ですが、寅子の母や親友は、「結婚こそ女の幸せ」と信じています。

どっちがいい/悪いとか、古い/新しいというのではなく、それぞれの価値観として同じように描かれているところが、このドラマのいいところのひとつです。

寅子の母は、職業婦人ではないけれど、毎日きっちり備忘録や献立の日誌を付け、上流階級家庭らしいたくさんの食器を漢数字といろはで区分けして収納し、「二のにをもってきて」で指示できる管理者ぶり。

第5回には母の気持ちが明らかになりますが、自分がやりたかったことを娘に強いているのではなく、自分が実際やって良かったと思っているからこそ、必ず幸せになって欲しい娘にそれを望んでいることがわかります。

決して、娘の価値観を否定しているわけではないのです。

また、寅子の親友は、寅子の兄のお嫁さんになるのですが、「女学校にいるうちに嫁ぐのが夢だった」、「こんな人に嫁ぎたい」という願いをしたたか〜に叶えていきます。

「どうしても欲しいものがあるならば、したたかにいきなさいってこと」(この、したたかーっにの言い方大好き)と、寅子を応援する姿は、寅子の大学入学と自分の夢を「どうしても欲しいもの」と同じにくくってさっぱりしています。

誰かと比べてどうこうではない、それぞれが良しと思って生きている人の、すくすくとした潔さ。

それが、寅子の家にはあります。

ですがこれから寅子の挑む道は、女子の権利がまだ著しく制限されている時代に、男と競う「地獄」の道。

これからたくさん比べたり嫉んだりする人がが出てくるかもしれませんが、寅子と寅子の家がこうなら大丈夫。

そう思わせてくれる安心感があります。

2.言葉の選びかたのセンス

寅子が、違和感を感じた時につかう言葉、「はて」。

コトバンクには「はて」の意味をこう記しています。

「事の成り行きを怪しむ時、戸惑ったり思案したりする時などに発する言葉」。

つまりは、寅子は感じた違和感に立ち止まり、思案するのです。
反射的に「それは違う」と否定したりするのではありません。

母や親友の母がすべてお膳立てをした集まりを、父たちが我が物顔で扱っているのをみて、寅子は「はて」と言いますが、それを否定しているわけではありません。

また、お勝手では賑やかにやっていた母たちが、公の場では、自分たちがお膳立てしたことをおくびにも出さず、「スンッ」とすましていることも「はて」で留めています。
ちなみに、この「スンッ」も、プラスの意味もマイナスの意味もつけず、状況をよく表している表現で素晴らしいです。

「はて」は、一瞬その場から遠のいて、俯瞰して考えるための最適なワードではないでしょうか。

また、私が刺さった言葉は、3話のこの寅子の言葉です。

「すっきりはできなかったけど、でもはっきりはしたといいますか」

「結婚に心躍らないのも女が損なのも、母が公の場ではスンッとなってしまうのも、私が漠然と嫌だと思っていたこと全てにつながる理由があったとわかりました」

「理由がわかれば何かできることがあるかもしれない。そう思えるだけで今までと比べれば少しマシといいますか、うれしいといいますか」

この「か」で終わる怒涛の内面の言語化。

「スッキリしないけどハッキリした」
「ハッキリすれば何かできることがあるかもしれない」
これは、変化の激しい時代、もやもやしたものを抱える私たちに、特大のエールではないでしょうか?

ここの穂高教授が、一切寅子の話をさえぎらずに「どうだった?」「続けて」と言語化させるのがまた、素敵なのです。

さいごに

2週目に入って、寅子は「法律とは何か」という大きな問にぶちあたっています。

また、寅子が飛び込んだ世界には、いろいろ事情がありそうな人もたくさんいました。

しかも舞台は法曹界!

それらを、この言葉のセンスが素敵な脚本家さんがどう描いていくのか、とても楽しみです。

放送は1週目が終わって2週目に入ったばかり。
気になる方、まだまだ間に合いますよ!

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