【本】岩尾俊兵『世界は経営でできている』note768日目
読んだ本の紹介、5月の1冊目は慶応大学商学部准教授の岩尾先生による、『世界は経営でできている』です。
1.どんな本?と読んだきっかけ
読んだきっかけは、社会保険労務士の先輩が薦められていたからと、「経営」というワードにピピッと来たから。
木下斉さんも「ジブン株式会社」というネーミングで自分を「経営」していくことを提唱されています。
「経営」という言葉を会社やビジネスの言葉に限定せず、もっといろいろなものに当てはめたら、良い方法がみつかるのではないか。
そう思っていたところにドンピシャり、刺さる書名でした。
この本は、冒頭からしてこうです。
「はじめに 日常は経営でできている」
そんな「はじめに」で、岩尾先生は「経営」をこう定義しています。
では、日常におけるどのような経営が書かれているのか?
みてみましょう。
2.日常における「経営」の例
①貧乏は経営でできている
日々の生活のに楽しさを求めるあまり支出が増えてしまう人は、普段の仕事自体を「問題解決ゲーム」とみなしたりして、自分で楽しさを作ってしまおう。
貧困は社会問題だが、貧乏は、お金、時間、知識、信頼の収支のアンバランスを是正するなど経営することによって、さらなる悲劇を避けることができる。
②家庭は経営でできている
夫婦関係においては夫と妻のどちらもが、親子のように無条件で価値を提供できるわけではないから、相手に価値を提供すべく主体的に問題解決していかなければいけない、と考え方を転換する。
お互いの本当のニーズを見極め、「整理整頓する」ではなく「物が散らからない仕組みをつくる」など、落としどころを見つける。
③恋愛は経営でできている
「理想の恋愛相手は天才ロボット学者でもない限り作れないが、理想の関係は作れる」という視点を持ち、「恋愛は手段にすぎない、目的は自分と相手の幸せ」であることをふまえて、恋愛関係を創造していく。
④心労は経営でできている
日常に最適解を求めすぎると、今日のランチひとつとっても「最適解計算ランチ難民ゾンビ型の人」になってしまう。
日常生活や仕事において最適解を求める意味はなく、ある程度の計画ができた段階で、まずは実行してみて結果を踏まえてよりよい解を探索すればよい。
⑤仕事は経営でできている
仕事という名前がついているだけの無意味な作業を減らし、創造的な仕事の割合を増やせば、「世の中に提供できる付加価値が増加しつつ仕事も楽しくなる」というパラダイス的/ご都合主義的すぎて疑いたくなるような状況が得られるはず。
だが、変えられない過去を責め続けたり、激安品を探すことて探す時間と品質の悪さで時間とお金を無駄にしたりして、無意味な仕事を作ってしまうのがわれわれである。
「仕事に携わるすべての人が経営の巧拙の当事者」。
それに気づくだけで、不合理・不条理は減らせる。
3.この本から得たことで心しておきたいこと
以上、ざっと振り返りつつ私の言葉でまとめてみましたが、この本の面白さはほぼ表せていません。
なぜなら、この本は「令和冷笑体」で書かれていることを特徴とするエッセイだからです。
冗談なのか本気なのかよくわからない部分もあり、なかには、読みにくく思う方もいるかもしれません。
ですが、読んでいくうちに、冷笑体のなかに、ちらりと岩尾先生の内面にたぎるマグマの部分がのぞきみえるところがあり、「冷笑体」との温度差が読みどころのひとつ。
ここが熱い!
「人生のさまざまな場面において、経営の欠如は、目的と手段の転倒、手段の過大化、手段による目的の阻害……など数多くの陥穽をもたらす」
と岩尾先生はいいます。
価値を有限なものだと思うから、人は失うことを恐れ、焦り、手段を目的化して、幸せになるという「目的」を忘れる。
だが、価値は無限、あらゆるものは創造できる、という視点を持てば、他者は奪い合う相手ではなく、協力し合う相手になる。
たとえば、超高齢社会で高度な医療を大量消費する高齢者が無数に存在する。ことを「幸いにも」と考えてみる。
そうしたら、もしかしたら彼らの大量の医療データを宝の山に変えられるかもしれない。
重要なのは、どんなことでも、「幸いにも」と無理やり良い文脈に変え、利己的なものから誰にも応援される利他的なものに変えてみたら、価値創造が絶対にできない対象はないことを気づくこと。
「経営」で、価値は無限に生み出せることを知ること、なのです。
この、どんな困りごとも、まず、「幸いにも」と言ってみる。
そのことで心のゆとりをもち、ゼロサムではない答えを探す。
それを、ひとつの自分の「経営」の柱にしていけたらと思います。
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