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【ドラマ】NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」~セリフの説得力!地に足つけてひなたの道を #0026/1000

今日は金曜に最終回を迎えた、大好きなNKH朝ドラについて。

毎朝15分、月曜から金曜まで、半年かけてひとつの物語をつむいでいくのがNKHの朝ドラ。

昨年から今年にかけては、藤本有紀さん脚本で親子3世代、昭和から令和まで100年の物語を描く「カムカムエヴリバディ」でした。

藤本有紀さんは、大河ドラマ「平清盛」朝ドラ「ちりとてちん」時代劇「みをつくし料理帖」「ちかえもん」などの名作を手がける脚本家さん。

私も藤本さん大好きで、始まる前から絶対見通そうと楽しみにしていました。

ひとりひとりの登場人物のゆたかな個性、それをくるむそれぞれ当時の時代のラジオ番組やヒット曲、街並み等の空気や味わい、緻密にはりめぐらされた伏線、どこを見ても見応えのあるドラマでした。

このドラマのいちばんの魅力は?と聞かれたら、私はこう答えます。

圧倒的な説得力。

その登場人物が、どうしてそう思って、そういう行動をとったのか。

良い結果を生む行動も悲劇につながる行動もありましたが、視聴者は「もうばかだなあ」と思いながらも、丁寧な心情と状況描写で、とても他人事には思えませんでした。

名言もたくさん生まれた作品です。

言葉だけみても名言ですが、ドラマでこの言葉が登場するのは、それまでそのセリフが響くような描写が丁寧に少しずつ塗り重ねられていった上でのシーン。

心に響く説得力が違いました。

具体例を2例、あげてみます。

100年の重みの説得力

この100年を、登場人物を通して丁寧に描いてきた重みは説得力が違う。

初代ヒロインの夫、稔は、妻の安子にこう言っていました。

「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽でも自由に聴ける。僕らの子供にゃあ、そんな世界を生きてほしい」

その後学徒として出陣し、娘のるいにひと目会うこともできないままこの世を去ってしまった稔。

その稔が、ある年の終戦記念日に、ジャズを愛し、京都で回転焼きを販売して、外国の観光客にも対応している娘の前に夢とも現ともいえないかたちで現れ、告げる。

「どこの国とも自由に行き来できる、どこの国の音楽でも自由に聴ける、自由に演奏できる……。るい、お前はそんな世界を生きとるよ」

稔と安子の時代から、るいの時代までの変化が丁寧に描かれている「カムカムエヴリバディ」だからこそ、その言葉は胸をうちます。

稔役はジャニーズSixTONES(ストーンズ)の松村北斗さん。

昭和の学生服があまりに似合うので、「令和のアイドルなの?!」と驚きましたが、とてもとても誠実で素敵でした。

昭和の安子編は、戦時下、自分より家族をと防空壕に逃した結果の悲劇があったり、やりきれないシーンがたくさんありました。

でも、そこからの令和を描くことで、「皆がつらい思いをしたあの時代に戻るようなことがあってはいけない」というメッセージが、強く強く感じられた気がします。

日々の行動で裏付けされた本当の言葉

3代目ヒロインひなた編の舞台のひとつは、京都の映画村。

劇中は条映となっていますが東映太秦映画村ですね。

幼少期から時代劇を愛するひなたが、オープンから通い、高校時代はアルバイト、卒業しては勤務先に選んだ場所です。

そこには、長年、斬られ役の大部屋俳優をやっている伴虚無蔵(松重豊さん)がいます。

かつて一度、大きな役をもらって映画に出たことはあるものの、それ以外は無名の役ばかり。

それでも、セリフが弱いと思えば、日常使う言葉もすべて時代劇用語にして鍛錬。

オーディションのエントリーシートは身の上書きです。

毎朝道場に行き、殺陣の稽古も欠かしません。

そんな日々を虚無蔵さんが送っていることを視聴者は知っています。

だからこそ、虚無蔵さんが発する言葉は、重みが違います。

最初に聞いたのはこれでした。

「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」

道に迷う若者、ひなたと、当時大部屋俳優でくすぶっていたひなたの恋人文四郎にかけられた言葉です。

この言葉はこの後、さらにステージをあげていきます。

大部屋俳優の夢をあきらめ、故郷へ帰る文四郎にかけられた言葉はこうです。

「どこで何をして生きようと、お前が鍛錬し、培い、身に付けたものは お前のもの。決して奪われることのないもの。一生の宝とせよ。」

そして、最終週。

ひなたは、虚無蔵さんの言葉のように、日々の鍛錬でラジオ講座で英語力を身につけ、40歳をすぎてアメリカに留学して映画を学びハリウッドで活躍するようになっていました。

そのひなたが、NHKのラジオ英会話講座の講師をやってほしい、と依頼され、迷っている時に発せられた言葉。

「そなたが鍛錬し培い、身につけたものはそなたのもの。一生の宝となるもの。されどその宝は、分かち与えるほどに、輝きが増すものと心得よ」

視聴者は、虚無蔵さんがそのセリフを体現してきていることを、もうすでに知っています。その上で、この言葉がくるのです。

「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」

言葉は抽象的ですが、それがどういうことで、どんなことを連れてきてくれたのか、視聴者はこのドラマを通して具体的に体感しています。

心に重く響く言葉でした。これからも私の心に響き続けることでしょう。

おわりに

100年を半年で駆けた「カムカムエヴリバディ」。

時には週明け10数年スキップして驚くこともありましたが、肝心なところはしっかり時計の針のすすみと同じように描いてくれ、たまに「わかる人にはわかる」みたいなネタも仕込まれて、なんとも楽しい半年間でした。

私も虚無蔵さんに近い年になったとき、虚無蔵さんのように自分の信念と行動とが合致して、背中で語れるような年のとり方をしていたいものです。

そのためにも、「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」。

ブログも鍛錬のひとつ。続けます!

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