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「多様な正社員とは」からそもそも正社員とはを考える #0228/1000

「多様な正社員」を厚生労働省がすすめています。

一見、何を指して「多様」と言っているのか?と疑問に思う言葉かもしれません。

時間、勤務地、仕事内容などの条件が、これまでの正社員とは違う、というのが「多様な」の意味です。

つまり、これまでの「いわゆる正社員」というのは、以下のような条件で働く社員のことでした。

  1. 働く時間はフルタイム(1日8時間・週40時間)、残業あり

  2. 勤務場所は限定されない、転勤あり

  3. 仕事内容も限定されない、営業から事務職など全く関係ない部署への異動もある

これが、「多様な正社員」となると、こうなります。

  1. 働く時間が短くてもOK

  2. 勤務場所が固定される(転勤なし)か、転居を伴わない転勤が条件

  3. 仕事内容が限定される。金融業やデータサイエンティストなど専門的な仕事のみ行なう

つまり、育児や介護などのライフステージの変化や、副業・兼業したい、プライベートを大事にしたい、などのライフスタイルの変化に応じて、これまで不自由度が高かった「正社員」という定義を変えようという提案です。

「多様な正社員」制度を導入する意味を、厚生労働省はこう伝えています。
いま注目されている「ダイバーシティ」や「人的資本経営」にもつながる考え方ですね。

ポストコロナの社会では、個人が自由度の高い働き方や暮らしを通じて、生産性を高め、豊かさや仕事のやりがいを感じられるようにしていくことが求められています。
多様な働き方ができれば、企業に多様な人材が集まり、組織の多様性を成長につなげることができます。

実は、「正社員」という社員区分の定義は、法律で決められているものではありません。

一般に、以下のような雇用形態が「正社員」と言われています。

  1. 1日8時間・週40時間のフルタイム勤務で、社会保険加入

  2. 雇用期間の定めがなく、原則、いわゆる「定年」まで働ける

  3. 給与が月給制のことが多く、扶養手当や住居手当など諸手当がつく

  4. 賞与がそれなりの金額出ることが多い

  5. 退職金があることが多い

  6. 福利厚生制度が充実している

ですが、正社員の境目は、「多様な正社員」制度を導入しなくても、以下のようにだいぶ曖昧になってきています。

  1. 育児短時間・介護短時間で勤務している正社員はフルタイムではない

  2. 「雇用期間の定めがない」無期雇用の契約社員もいる

  3. 契約社員でも月給制の場合はあるし、最高裁判例から契約社員にも扶養手当があるところが増えている、正社員でも短時間正社員は時給になることもある

  4. 契約社員でも賞与がでることもある(以下参照、4割~6割の企業で実施)

  5. 退職金を契約社員にだすこともある(以下参照、1割の企業で実施)

  6. 福利厚生制度も必ずしも契約社員は対象外となっているわけではない

調査シリーズNo.207-1
「パートタイム」や「有期雇用」の労働者の活用状況等に関する調査結果 企業調査編
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/207-1.html

この現状のうえにさらに「多様な正社員」制度をいれるとすると、「そもそも自分の会社での「いわゆる正社員」とはどういう存在でどういう働き方をするのか」をきちんと考えて定義しておく必要がありそうです。

「勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて」というパンフレットでは、「多様な正社員」「いわゆる正社員」「非正規雇用社員」の転換の仕組みも紹介しており、参考になります。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/file/01-270227.pdf

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