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心と声とともに

 吹奏楽の名曲の一つ、デイヴィッド・R・ギリングハムの 『ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス(With Heart and Voice)』。
私の思い出の一曲です。


ウィズ・ハート・アンド・ヴォイスとは?


作曲者 デイヴィッド・R・ギリングハムについて

デイヴィッド・R・ギリングハムDavid Gillingham1947年 - )は、アメリカ作曲家吹奏楽編成の楽曲の作曲などで知られる。

楽曲は、社会的な事件や問題を題材にして作られたものが多く、例えば、ベトナムの回顧(ベトナム戦争)、A light unto the darkness(オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件)、And Can It Be(コロンバイン高校銃乱射事件)などがある。この他、エアロダイナミクス(ライト兄弟による動力飛行100周年を記念して作曲)などの曲もある。

Wikipedia より引用


本曲はギリングハムの作品の中でも際立って人気が高い。
日本においても人気があり、吹奏楽コンクールではよく演奏されています。
2003年全日本吹奏楽コンクールで横浜市立樽町中学校が演奏し金賞を受賞後、日本では有名になったそうですね。


作曲された理由

「ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス」は、米国・ミネソタ州にあるアップル・ヴァレー高校の創立25周年を記念し、同高のスクールバンドの指揮者であるスコット・A・ジョーンズにより委嘱されたものです。アップル・ヴァレー高校は芸術に非常に力をいれていたため、私はこの委嘱を受けることを決めました。
アップル・ヴァレー高校の校歌が主題であり、古いスペインの讃美歌でほとんどの教会の讃美歌に取り入れられている「Come, Christians, Join to Sing(来りて歌え)」に基づいています。私が特に好きなこの讃歌が校歌に使われていることに運命を感じました。

ギリングハムのコメントより

ギリングハムは、讃美歌の一節 "Let all, with heart and voice, before his throne rejoice" から曲のタイトルを取り上げた。
その讃美歌からインスピレーションを受けた主題を曲中に多く用いている。

楽曲のグレードは4。

この素晴らしい高校の25周年を祝福するのに我々の「心」と「声」よりもふさわしいものがあるでしょうか。この場合の「声」は音楽であり、「心」は祝福において、音楽がもたらす感動のことです。

アップル・ヴァレー高校の使命と覚悟、それに対する挑戦と、いずれ訪れる平穏な日々に対する祝福を描いた祝典音楽である。


『ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス』音源

作曲者本人の指揮による、フィルハーモニック・ウインズ大阪による演奏です。


私が個人的に最も好きなYouTube音源です。何の団体の演奏かは不明。



楽曲の構成

※引用部分…ギリングハムのPrgram Notesより

1. 導入~前半

Although the work is largely celebratory in nature, it begins with a feeling of reticence and apprehension, much like the beginnings of Apple Valley High School. It was at one time only an idea or perhaps a sketch in the mind of the architect. Small fragments of the Alma Mater are heard in the opening moments of the piece. The piece gains momentum, texture and volume in this opening section, culminating in a dramatic statement of the first four notes of the theme. A calmness follows and a lyrical flute solo enters. This new material represents the uniqueness of the "mission" of a new school which will have roots in academic excellence and commitment to the visual and performing arts. The euphonium echoes the flute and soon more instruments join in, and the section culminates with a dramatic fanfare.

曲は遠慮がちで不安げに始まる。
フルートのトリル、ピアノやグロッケンなどの繊細な散らばりで幕を開けた曲は、トロンボーンやファゴットによる主題の4音を提示しながら歩んでゆく。

木管楽器による連符が加わりながら曲は勢いを増し、重なり合い、重厚なトランペットのファンファーレで頂点を迎える。


一旦落ち着くと、穏やかな雰囲気の中、フルートのソロが登場。これは、新しい学校のスタイルを歩んでいく「使命」の独自性を表現している。
ユーフォニアムが応えるように、歌い繋いでいく。
ホルンの伸びやかなフレーズが響き渡り、他の楽器も加わって、ドラマチックに高揚していく。

やがて音楽は一転し、不協和音と活発なリズムで進み、果てには金管楽器がトロンボーンを先頭にファンファーレを奏で、讃美歌の主題を輝かしく提示する。


2. 展開部

The ensuing section begins as a fugue with underlying unsettling rhythmic activity in the percussion. The obvious reference of this section is to challenge -- maintaining the goals and mission of the high school.

華やかなファンファーレが終わると、活発なリズムを刻む打楽器の先導を受け、クラリネットが短調で主題を奏し、テンプルブロックをはじめとする打楽器が彩りを添える。
まさに、アップル・ヴァレー高校の「使命」や「挑戦」をあらわしている。

ピッコロやフルートらの細かいリズムののち、ピアノ伴奏に従うようにテンポを緩め、ほどなくして平穏が訪れる。


穏やかな空間の上でフルートやサックスが歌い、それを受けたトランペットがテンポをはやめながらメロディーを繋ぐ。
チャイムやトロンボーン、それらを受けた木管楽器が三連符を刻みティンパニを筆頭とする打楽器が変拍子を織り成していく。


3. 再現部

The section becomes frantic and desperate, but soon subsides into peacefulness. The peacefulness is stated by the marriage of the Alma Mater theme and the "Mission" theme...after all, for the high school to survive, it must never forget its mission. An extended finale follows, which celebrates both themes in playful, joyful, and dramatic exuberance.

全体が一丸となって祝福ムードを迎え、トランペットが主題をのびやかに提示する中、煌びやかに輝く木管楽器とホルンのオブリガード。
陽気に喜びに溢れ、アップル・ヴァレー高校の栄光を祝する。

余韻に浸る間もないまま、目まぐるしい変拍子に乗せて、活気に満ちた雰囲気で圧巻の終幕を迎える。


まとめ

 私はこの曲を吹奏楽コンクールの自由曲として演奏したことをきっかけに、吹奏楽の素晴らしさに気づけました。

特にお気に入りの部分は、前半ユーフォソロ後のホルンが奏でる美しいメロディー。

今でもこの曲は定期的に聞き続けています。
少しでも多くの人にこの曲の魅力を知ってもらえると嬉しいな。


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