「旅する百姓」を目指して

「糸島で中学生の女の子がひとりで企画したマルシェがあるんだけど行ってみない?」

昨年12月、ちょうど福岡にいたタイミングで友人に誘われて訪れたのが第一回のLANIマルシェ。会場は海岸沿いに建つ築100年の古民家。こだわりの美味しいごはんやお菓子、手作りの作品が並び、和気あいあいとした心地の良い空気に包まれていた。

画像1

そしてそこで出会ったのがマルシェの企画者、さよちゃん。さよちゃんは、子ども達が自分達で海外旅行を計画&実行する「ねっことはっぱ塾」の元メンバーでもあり、それで訪れたフィリピンとインドネシアで大きく変わったと言う。その国の文化や歴史、食べ物、交通手段などについて徹底的に調べあげて作られた、手描きの絵が満載の手作りガイドブックをめくりながら、目をキラキラさせて話してくれたさよちゃん。イベントの企画、広報、出店者の募集、運営。それを14歳のこんなに可愛らしい女の子がひとりでやったなんて。彼女のやりたい!を形にするエネルギー、それをサポートする周りの大人たちも含めて、素敵すぎる!

わたしが以前に自転車で海外を旅した話をすると、ますます目をキラキラと輝かせていた。そんなさよちゃんから、「第二回のLANIマルシェを企画しているので、よかったらお話しに来てくれませんか?」なんて言われたら、行かないわけにはいかなかった。

そんなわけで最近買ったボロボロのサンバーバンを4日かけて廃材でスペシャル車中泊仕様に改造し、横浜の実家から大阪まで愛車を転がし、そこからフェリーに揺られて九州へ上陸。12月にも同じフェリーに乗って仲良くなったトラックの運転手のお姉さんと、フェリー内でまさかの再会を果たすなどのドラマもありつつ、2日半かけて1,000km離れた福岡県糸島市へやってきたのだった。

画像2

前日からさよちゃんファミリーのおうちにおじゃまして、一緒にご飯を作って食べ、はじめましてとは思えないくらい笑い転げた。マルシェ当日も、さよちゃんの純粋な想いとエネルギーに突き動かされた人たちが集まり、子どもから大人まで思い思いに楽しんでいた。

画像5

終わったあともその場を離れるのが名残惜しく、残ったメンバーと砂浜で夕陽を眺めながら、ジャンベとその辺にあった竹やフライパンでセッション。

翌日はその流れで朝から山登りに行くことに。しかしそこで愛車が早くも故障。バッテリーランプとブレーキランプが点灯しっぱなしで消えず、しばらく走ったら直るかも…なんて甘く考えていたけど、車屋さんに見てもらったら、充電がうまくいっていないので発電機の交換が必要とのこと。部品の取り寄せなどに数日かかるそうで、その日のうちに大分に移動しなければならず、泣く泣く預けることに。代車は同じ軽バンだけど、サンバーよりも荷室が短いようで、せっかく作った車中泊仕様も全部は載せられず、前半分は置いていくことになり、ダンボールで高さを合わせて寝ることにした。

大分では竹細工をしたり、友人と材料を持ち寄って料理をしたり、素焼きの鉢で作った自作の釜で焼き芋を作っている岩田くんの絶品な「鉢みついも」をいただいたり、お米とさつまいもで作る奄美大島の発酵飲料・ミキのワークショップに急遽参加することになったり、前日や当日の流れで思いがけない展開が次々と巻き起こる。

画像9

わたしのFacebookの投稿を見たカノンちゃんという子から、「南阿蘇にも寄っていってください〜」とメッセージをもらっていた。当初の予定では南阿蘇を通る予定はなかったが、流れに導かれて気付けば南阿蘇のすぐ近くまで来ていたので、おじゃますることに。

聞けば彼女は以前に自転車で岐阜から知多半島まで走り、そこにある素敵なゲストハウス、ほどほどさんでわたしのことを知ってくれて、昨年わたしがインド旅のオンライン報告会をした時にも参加してくれたのだという。このとき知ったがなんと翌朝引っ越しするそうで、一日遅ければ会えていなかった。

現役の大学生の彼女は、昨年鹿児島から東京に帰ろうとしていた矢先に緊急事態宣言で飛行機が欠航となり、知人を頼ってやってきた南阿蘇が気に入り、農家さんのところでアルバイトをしたりしながら気付けば一年がたっていたという。ちょうど授業がリモートになったので、草引きしながら授業を受けたりしているらしい。

「わたしはコロナがあってよかった。正直大学をやめようかと思っていたタイミングで、自分を見つめ直すことができたし、友人も訪ねて来てくれてより深くお互いのことを知ることができた」と話す彼女。今後は電気自動車で全国の農家さんのところを訪ねて回るのだとか。

大学を卒業して先週からここに住み始めたばかりだというなっちゃんも、普通に就職することに疑問を感じ、1年間は「ギャップイヤー」としていろんなことにチャレンジする年にしようと思っている、と話してくれた。二人とも有名大学なのに常識にとらわれず、周りに流されず、この状況を逆にうまく利用して自分のやりたいことをどんどん形にし、何よりも自分の意志で選択をしているのがすばらしい。わたしが彼女たちの年のころはそんな勇気はなかった。こういう若い人たちに出会うと、未来は明るいなと思う。

翌日も熊本県菊池市でお米つくりをしている友人や、韓国の薪で焚く床暖房・オンドルを作った友人を訪ね、初のオンドル体験をさせてもらった。オンドルはじんわりと身体の芯から温まり、朝までポカポカだった。

画像9

糸島で無事に直った愛車と再会を果たし、お話会に来てくれたスジンさんのお宅に呼ばれて、おいしい韓国料理をいただく。そこに来ていたみずえさんと竹細工話で盛り上がり、翌日はその流れで一緒に竹細工をすることに。

そんなこんなで時折ワークショップやお話会をしつつ、ご縁とナリワイを作る旅をしている。

めざすは「旅する百姓」。衣食住、身の回りのものをなるべく自分の手で作れるような、カッコイイおばあちゃんを目指して。修行の旅はつづく。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?