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(5)白ばら文庫とイチゴのショートケーキ

小学生のころ 図書館が遊び場だった。
市営の図書館も 広くて いっぱい本があって
エアコン聞いてるから 夏休みには入りびたってたな。

図書館よりも 好きなとこ

それが…

白ばら文庫

地元で有名な『白ばら』というケーキ屋さんの隣にあった小さな図書室。

いまは もうない。


ママが蒸発してしばらくして、
パパと、妹と三人で
おばあちゃん家に居候していた時期がありました。

おばあちゃん家の裏には 川が流れてて
その川の向こうが『白バラ』。
ときどき ケーキを焼くあまーい香りが漂って
買えないけど、なんだかうれしかったな~

いつ頃から行き始めたのか思い出せないけど、
『白ばら文庫』には
絵本と、小学生が読むような本がたくさんあって
ひとりおばさんが、いつも椅子に座ってた。

ガリバー旅行記に夢中になったのも、
そう ここ。

ときどき話す会話や、
きっとご近所での噂や、
子供たちの会話で、
聞かれないけど、

子供たちのことは、たぶんどの子のことも
おばさんはご存じだったと思うんです。

ワタシがどうしてそう思っているかというと
ワタシが、養護施設にはいることになって
児童相談所に行く前の日に
『白ばら文庫』の前を歩いていたら
中からめずらしくおばさんが出てきてさ、


『今日は、本借りないの?』
『もう、借りれない。どこかに行かないといけないから』


何かを察したおばさんが
ちょっと待っててと、
中に入ってさ、
おじさんと一緒に出てきたの。


おじさんが
『元気でいるんだよ。
 どんな時も、本は読むんだよ。
 おじさんからプレゼント。』


…おじさんの手に
イチゴのショートケーキ
初めて食べたイチゴのショートケーキ



10歳のワタシには、
なにが大人たちの周りで起きているのかわからなくて、
でも、どこかに行かされることだけは分かってた
そんなさみしい気持ちが、イチゴのショートケーキの
美味しさで、少し楽になったんだ。



大人になって、
ふと思い出して、なぜだろうね…
ケンタロウ先生に話したの。

そしたら
『あー  白ばら文庫か。あの人ももう天国行っちゃったな』

イチゴのショートケーキのおじさんは、
『白ばら』の社長さんで
ケンタロウ先生の お友達だったみたい。


※ケンタロウ先生のことは…(4)書くということについて。…に書いてます。



お礼言いたかったな

白ばら文庫という居場所を作ってくれたおじさんへ

『あの時は、イチゴのショートケーキありがとうございました。
大人はみんな私が邪魔なんだ…と、あの時思ってた。
だからまた捨てられるんだと、思ってた。
だから イチゴのケーキ嬉しかった。 
優しいおじさんが言ってくれたから、ずっと本だけはお友達。
なにがあっても、なにかあったら、本読んだよ。
自分でも、本作って遊んでたよ。
いまでもケーキは、イチゴのショートケーキ大好きです。
いつか、ほんとの本が作れたらいいなと、思ってます

優しい大人もいるんだな…と思わせてくれてありがとうございました』

言えなかったお礼



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