八支則(ヤマ・ニヤマ)
BUN庫堂 作
早いものでヨーガを学び始めてから、もう、2年が過ぎた。通い始めたばかりの頃、クラスで出会った彼女。キラキラした笑顔が印象的だった。
レッスン後に、お互い緊張しながら、自己紹介。その時に、「あ、最近、豆本の体験教室に行ったんです。楽しくてハマってるんです!」と。
豆本かぁ…。久しぶりに聞いた単語だった。
子供の頃に雑誌の付録やオモチャで触れた記憶がふんわりと蘇ってきた。懐かしい手触りも。
彼女は、遠方からレッスンに通っていて、頻繁に同じクラスで会う事はなかったけれど、会うと、必ず、私に変わらず明るい笑顔を運んでくれた。
実際に創った作品を持ってきてくれた事が何度かあって、驚きと感動の顔が囲んだ。
小さな、小さな四角の中に広がる物語。
ワクワクしたなぁ。小さな可愛い世界に。
ある時、ふと思いつきで彼女に言った。
「八支則の豆本、欲しいなぁ…。
分厚い本を持ち歩かなくても、いつも
鞄に入れて、見たい時に見られるから!」
その一言から始まった新しい物語。
「八支則って何ですかっ!!?」
私もまだヨーガ哲学を学び始めたばかりで、
講座のノートの始めのページに忘れないように、というよりは、覚えられるように書いていた。
「早速、自分でも調べてみます!」と彼女。
それから、やや暫く経ち、久しぶりに彼女とまたレッスンで会えたある日のこと…。
彼女は、私の一言から、実際に創作を始めてくれていた。レッスンに出られる日に、八支則をまとめた原稿を師に見せて、何度も、何度も書き直しを重ねていたようだった。
それを知って、胸が熱くなった。
それからまた時間が流れ、またレッスンで再会したある日、完成した作品を照れくさそうに手渡してくれた。
緊張しながら箱から出し、ページをめくる…。
彼女の優しさと愛情が掌に湧き溢れてきた。
言葉に添えられていたのは、可憐で美しい花。
意外だった。
これが彼女の世界観。
彼女しか創ることができない色。
素敵、素晴らしい、とかいう言葉では伝えきれない、あたたかくて、美しく澄んだ何かが、私の胸の中にフワリと舞い降りて、静かに着地した。
その後、彼女と実際に顔を合わせる機会が減り、Instagramに掲載される作品を心待ちにしながら、観ている日が続いていた。
身の回りや彼女が触れた何かを種に、彼女しか調合できないスパイスをたっぷりと含んで生まれてくる作品たるや!
https://www.instagram.com/p/CQ_VO_DnCKH/?utm_medium=copy_link
そしてまた、次に彼女と会えた時に、意味ありげな笑顔で黙って手渡してくれたあるもの…。
私がInstagramに載せたものから彼女がピンときたものを集めて創ってくれた作品集だった。
いつも私に笑顔を運んでくれる彼女だけれど、
あのときばかりは、嬉しくて涙が込み上げた。
選んでくれたものは、喜怒哀楽、弱い心、喜び、迷い、いろいろな私が描かれていた。
上手く説明出来ないけれど…。
初めて出会った頃から、もう、立派な豆本作家になっていたと思う、彼女は。
好きな世界を自由に飛び回り、キラキラとした輝きの粒をたくさんの人の心に残して、また次の楽しくてワクワクする世界へと向かっている。
私は…。
ドロドロとした油まみれの翅を少しずつ洗い流して、ようやく翔けるようになってきた。
ほんの少しだけ。
周りには、色とりどりの美しい羽を広げて、枝から枝へ、綺麗な歌を謳いながら、晴れ渡った青空へ飛び去った鳥たちがたくさんいた。
私は、自分のこの翅を大切にして、失わないように、ゆっくりでいい、私の世界を創り続ける。
その為に必要だと感じた道は、迷わず通る。
たとえそれが、荊の道を裸足で行くようなものでも、歯を食いしばって一歩一歩進みたい。
楽しみたい。
自分の魂に従って、"私"を生き抜くこと。
残された命に責任を果たしたい。
そんな想いが降りてきた時に浮かんだ一冊。
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