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「共同経営者」を避けた方が良い場合

共同経営者、という言葉を聞いてどう思われるでしょうか。旧友や同じ志をもって仲間と一緒に事業を創っていくことは素晴らしいことです。1年後、5年後、10年後。ずっと一緒に事業を行っていくことができればそれは素晴らしいことでしょう。でも、そうではない場合もあります。私は共同経営者自体を否定しているわけではありません。しかし、そのリスクを知った上でその選択をするか…これから事業を始める皆様には考えていただきたいと思います。

そもそも会社における株主と役員について

今回、分かりやすさを重視し、株式会社における例で説明したいと思います。株式会社には資本金(お金)を出資している株主と、経営の決定を行う役員(取締役)がいます。

従来、旧商法の時代には、取締役の員数(人数)は3名以上と定められており、株式会社である以上その人数を準備する必要がありました。また、取締役会という役員会の設置と監査役の設置も義務付けられたいたため、株式会社の役員は最低「4名」必要だったのです。また、株主に関しても、7名以上が必要とされていた時代があります。会社をおこす際に、「7名」の出資者を集めることが容易ではないことは想像できるでしょう。実際、この時代に設立した会社の多くが、株主の一部については「名ばかりの株主」であったことからも明らかです。よく見る事例としては、役員としての中心人物である複数人が株主としても主に出資し、会社の実権を握る形で機関設計をしていることです。

この場合には、少数株主や行方不明株主の問題が生じるのですが、今回はこのお話ではないので、過去の記事をご参照いただければと思います。

👇【名義株主の問題点】👇

会社法改正でどのように変わったか

現行の法律で株式会社を設立する場合に、必要となる取締役の最低人数は「1名」です。また、株主も「1名」で可能であり、取締役と株主が同一人でも問題ありません。つまり、現在株式会社は「1名」と設立することが可能となりました。設立登記に関していえば、全体として会社を設立しやすい方向に制度自体がシフトしており、数十年前に比べるとはるかにスムーズな手続きが可能となっています。


参考として、法人設立のあらゆる届出等がワンストップで行うことができるサービスも始まっています。ただ、この手続きはオンラインでの手続きが中心であるため、まだ「オンライン手続き」に抵抗があるためか、そこまで広がってはいない印象です。

話を戻しますが、株主(役員)ともに1名あるいは1名以上での設立が可能となりました。そんな中、設立のお話の中で多いのが、共同経営者の存在です。今回の場合の共同経営者を、2名代表(取締役2名がおり、ともに代表権を持っている)・2名株主(保有割合は50%ずつ)という前提でお話させていただきます。

どんな問題が見えてくるか

まず、株主の保有割合が50%である点についてですが、この要望が多いといえます。一緒に事業を起こす、そこに上も下もないのであれば、株式の保有を50%ずつとしたいと考えるのはやはり感情としては当然とも思えます。しかし、感情だけで会社の経営を行うものではありませんので、もし50%ずつにするにしてもきちんとリスクを理解した上で決定することが大切です。

株式会社における、多くの決定は株主総会で行います。特に、取締役2名の株式会社ということは「取締役会非設置会社(取締役会を置かない会社)」ですので、法的にも株主総会の決定が多くなりますし、実際役員は2名ですからこの2名で決定することが増えるでしょう。では、この2人が対立した場合にはどうなるでしょう。今あなたの目の前にいる、共同経営者はとても信頼できる方です。でも意見が完全に、永遠に一致することはないのです…。家族でさえ、別れることがあるのですから、経営についてもその点は考慮にいれておくことが大切です。

まず前提として株主総会の決議の要件(どれだけの賛成が必要か)は、定款の定めによるところになります。ただし、この定款の決議要件はほとんどの経営者は把握されていません。この項目は、紛争性がない場合には気にする必要がないためです。ただ、定款の定めも無制限ではなく、法律が定める範囲内で自由に決めることができるものです。

決議には、何種類かありますが、普通決議と特別決議が必要となることが多いと考えます。主な決議の内容については下記のとおりです。

株主総会

いずれの決議も、(出席した)議決権の過半数が必要となります。つまり、2名の株主で50%ずつ保有していた場合、2名ともに総会に出席した場合に片方が賛成・片方が反対した場合には、その株主総会の議案については承認がされないということです。株主総会の承認はあらゆる場面で必要です。特に毎年必要となるのが、計算書類(決算)の承認です。50%ずつ保有する株主が対立した場合、原則この決議を承認することもできないのです。

これは、取締役の決定についても同一のことがいえます。会社に関するすべてのことを株主総会で決定する必要はありませんが、株主と同一の人物が取締役の場合、取締役での決定も進まない可能性があり、会社における重要な決定が進まない可能性が出てくるのです。

絶対に揉めないは存在しない

今の共同経営者と絶対に揉めないですか?と聞いたとして、「はい」と言える人はどれだけいるでしょうか。もしそう答えることができたとしても、それは今の感情から生み出されるものですので、将来を保証してくれるものではありません。もちろん、そうでない可能性もありますが、長期にわたって経営を行う以上は、排除できるリスクは排除することが経営にとっては重要となります。会社が右肩上がりの時に、内部のもめごとで機を逃すということは避けたいでしょう。

株主や役員に正解はない

株主は役員の設計については、正解はありません。創業初期か発展期かによっても変わりますし、役員の相互の関係によっても変わってきます。夫婦での揉めることはありますし、友人でも揉めないことはあります。もちろん、その逆も。私たち専門家が関わる中でできることは、できる限り将来における争いを排除し、その上で経営を発展させていくことです。そのための専門家ですから、いつでも相談していただけることが専門家にとっての役割であり、喜びなのです。

👇スタートアップについての注意点についても書いています👇

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