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そせじ/山野一

まさか、まさかあの鬼畜系漫画家が再婚して双子の娘の父親になるとは!

山野一と言えば1998年に首吊り自殺した漫画家・ねこぢるの作品の中によく出てくる「だんな」で貧しさと惨たらしさを欠かせたら右に出るような人はいないような鬼畜系を代表する漫画家。
そんな彼が久しぶりに執筆した作品。
ねこぢるの死から20年以上経った山野一は再婚したのだ。

最近kindleを入れたんで早速読んだ漫画。
電子書籍オンリーで出版したのは青林堂内部分裂騒動が影響しているような気が…
双子に嘘を吹き込む変人父ちゃんのやすお、家柄はいいがやや口が悪く風変わりな生育歴をもつ母親のクチ子、そして一卵性双生児のミミ子とハナ子。
育児漫画は多すぎて飽和状態なのにサイケデリックな描写と父親目線でかなり異彩を放っている。
やはり作中に出てくるみすぼらしい男や変質者は相変わらずリアルなのがえぐい。

私の叔父さんもそうだが歳とってから娘をもうけた人は保身的で子供たちの間で流行っているものを避けたがる傾向がある。
キャラクターものはせいぜいアンパンマンやミッフィーのような不動のコンテンツに触れさせる程度なのだ。
幼稚園で妖怪ウォッチの大流行を知った双子はおもちゃをせがむけれどもやすおとしては貧乏暮らしなのであまり買い与えたくない。
そして双子相手にマウントを取る年長組の意地悪マン。
どうするやすお、どうする双子。
合間合間にハナ子とミミ子の落書きが載っているが純粋な子供ゆえの残酷さがなんとなーくねこぢるテイストを匂わせている。

複数話にわたる「大難産」という話は双子が生まれるまでの波乱万丈なストーリー。
クチ子は最初の子を流産した経験から双子を身籠った際とても慎重でナーバスになっていた。
「出血したから今回もダメかもしれない…」と嘆いていたがまだ胎児の双子はしぶとく生きてたのだ!
そんな喜びも束の間、双胎間輸血症候群という胎盤の異常が判明。
「おまいが鬼畜マンガを描いてたカルマ返りだ!」とクチ子は言いがかりをするけど多少は間違ってないような…
レーザーで悪い血管を焼き潰す手術が成功して双子はこの世に生を受けることができたのだ。
ミミ子は供血児だった影響か幼少期は膀胱が小さかったらしい…
塩分制限を強いられていたクチ子が寝た深夜にやすおがこっそり濃い味のものを食べながら歌う謎の歌を双子がおぼろげに知っているのは胎内記憶かもしれないと思うと神秘的。

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