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わたしの転職経験 ー必要なのはニンニクじゃないー

はじめに

私は2度転職を経験している。今いるのは3社目だ。その都度考え抜いて転職したはずなのに、仕事を楽しいと思ったことがほとんどない。それでも、転職したことは一切後悔していないし、よかったと心から思っている。転職しようか悩んでいる人がいたら、やっちゃえ!と言いたい。

1度目の転職

新卒で入ったのはIT企業で、私は一応SEになった。その業界にしては珍しく業務量に対して人が多すぎて、新人には事務的な仕事しか回ってこなかった。周りと比べて経験を積めていないことに、ずっと焦っていた。それに、お客さんの言うことは絶対で、金曜日に「月曜日までに資料を持ってこい」と言われ、意味の分からない休日出勤を何度もした。でも、一番困ったのは「ITに興味が持てない」ことだった。自分でもビックリするくらい好きになれなくて、別の業界に行こうと、転職活動を始めた。

でも実際始めてみると、第二新卒と言われる時期は過ぎていたし、未経験で待遇が大きく下がらない求人はなかなか無いという現実にぶちあたった。悩んだ末、社内SEになった。平たく言うと、自分が「お客さん」の側になったのだ。

転職後、同じITと言えども使う脳みそはずいぶん変わり、最初は苦労した。それでも、意味不明の休日出勤をしたり、パワポの色について何十分も話し合ったりするよりは、全然マシだった。転職してよかったと心から思った。

2度目の転職

でも、半年を過ぎたころから違和感がふつふつとわいてきた。社風は体育会系で上意下達。女性が少ないからなのかセクハラまがいの言動もしょっちゅうで、男性のPMに呼び出されて出張のおみやげをなぜか人目につかない場所で渡されたりもした。めちゃくちゃ気持ち悪かった。何より、仕事にやりがいを感じられなかった。私はユーザー、外部コンサル、開発ベンダーの間に入って、QCDが満たせるように「調整」する役割だった。目に見える成果物はない。
PMは状況が変わっても計画を変える判断は絶対しない人だった。開発者が納期を大幅に遅延しても、やっと届いた納品物の品質がボロボロでも、PMは計画を変更するという判断を絶対しなかった。だから私は、計画を完遂するためにいつも奔走していた。すごく辛かった。
そんな日が1年以上続いた。異動も考えたけれど、カルチャーはどの部署も大体同じみたいだったし、特に行きたいところもなかった。だから会社を辞めることにした。

当時はストレスが相当かかっていたので、それを取り除けるところに行けばそれなりに満足できるんじゃないかと考えた。職種を変えなければやりがいはないままかもしれないけど、年収アップは狙える。そもそも、だいたいの人が、仕事が楽しくなくても折り合いをつけて生活しているはずだ。楽しみは仕事以外で見つければいい。そう考えて、職種は変えずにできるだけストレスがかからない場所を選ぶことにした。具体的に言うと、女性比率が3割以上で、IT部門に権限があって、年齢に関係なく昇級できる制度を持っているところだ。運よくそんな会社が見つかり、2度目の転職活動は3か月くらいで終わった。

そして今

そうして今の会社に入って2年がたった。今も、私は全然仕事が楽しくない。やりがいもない。でも入社して半年ぐらいは楽しかった。今までとはまるでカルチャーが違って、関係性はフラットだし、女性の管理職もけっこういる。それまで感じていたストレスから一気に解放されて、すごく清々しい気持ちだった。でも、慣れてくるとだんだんつまらなくなった。

当然だ。そもそも私はITに興味がない。自分がプログラムを書けるわけじゃないから、開発ベンダーの人がいないと何もできない。でも自分で書きたいわけじゃない。調整役だから「私がこれをやりました」と言えるような明確な成果はない。私がいなくてもきっとプロジェクトは回る。
そう、最初に転職を考えた10年前から、心のなかで引っかかっているものは、何も変わっていない。

味変は有効か?

結局、転職後しばらく楽しかったのは、ラーメンにニンニクを入れる「味変(あじへん)」みたいなものだった。その瞬間は新鮮な気がするけど、長くは続かない。そもそも私が食べたいのはラーメンじゃないんだ。
食べ物なら、「ほんとはサンドイッチが食べたいんだよね」と言える。でも仕事はそうはいかない。ラーメンじゃなくてサンドイッチが食べたいと言えるのは、両方を食べたことがある人だけだ。楽しいと思う仕事に出会ったことがないのに、何をやりたいかなんていくら考えても分からない。

でもラーメンの味は知っている。全然好きじゃないけど、まあ食べられないわけじゃない。そして何より、今の生活は保証される。
そうして私は、好きでもないラーメンを、「美味しくない」と思いながら、今も食べ続けている。

転職について思うこと

それでも、私は転職したことを全く後悔していない。転職先選びを後悔したことはある。でも、「こんなことならあのままあの会社にいればよかった」なんて、1ミリも思わない。

なぜだろう。

それはたぶん、「納得しているから」だと思う。
考えて予測できることと、体験して実感することは全然納得感が違う。
「色々やってみたけど、やっぱ私全然IT好きじゃなかった。環境変えても意味なかったわ!」
それを身をもって知った。ちょっと時間はかかったけど。
「何か違う」と思いながら働き続けることに良いことなんてひとつもない。だから、今楽しくなくても、転職が無意味だったとは思わない。辞めてよかった。転職してよかった。これは自信を持って言える。

だから、もし今の仕事に違和感を覚えていて、転職が頭の中にちらついている人がいたら「悩むよりGo!」と思う。その違和感は確実に何かのサインだ。
ちなみに私の周りでも転職経験のある人は結構いるけど、後悔している人は見たことがない。会社を辞めようか悩んでいる時点で、もう答えは出ているんじゃないだろうか。

そして、2度経験して思うことは、失敗しない道を選ぶことより、失敗したときにどうするか、事前に備えておくことに注力する方がよっぽど有益だということだ。リスクのないリターンはない。リスクが少ない代わりに好きでもないラーメンを食べ続けるのは、全然楽しくない。

ただ、仕事(本業)に何を求めるかは人それぞれだ。本業以外のところで充実感を得られればいいという価値観の人は、「ストレスを減らすための転職」もアリだと思う。何が自分にとってストレス要因になるのかは、経験を棚卸しすれば割と明確に分かる。実際私は、2度目の転職でストレスを相当減らすことができた。

でも私はそれで幸せになれるタイプじゃなかった。いや、薄々気付いていたけど見て見ぬふりをして、やっぱり見過ごせなかったという事実に直面している。

仕事の借りは仕事でしか返せない

その現状を打破するには行動するしかない。仕事の借りは仕事でしか返せない。私はそういう厄介な価値観の持ち主だということを、ようやく受け入れられるようになってきた。

だから私は、こうしてnoteを始めた。自分は何をしているときが楽しいのか、得意なのか、いろいろ考えてみた結果、文章を書いてみたいと思ったからだ。でも仕事としてやったことはないから、それが正解なのか、自信はない。
だから、サンドイッチをちびちびかじりながら、美味しいと思うのか、食べ続けることができるのか、お腹をくだしても復活できるか、実験している。あわよくば、これがいつか仕事になればいいな。そんな期待を持ちながら。


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Sato
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