見出し画像

《これは面白い》さんより 1305文字

極貧のカト少年は
学費や家賃のため路上で必死に働き
家では母親を手伝っていた。

いつものように仕事を終えて
家路につくと途中パン屋があった。

かなりの空腹でパンが食べたくなり
ポケットをさぐったが
パンのかけらも買うお金がなく
お店には入らなかった。

しかし空腹に耐えられず
恥ずかしさはあったが
知らない家の人に食べものを乞うため
ドアをノックする決意をした。

ノックしてみると
若い女性が出てきたので恥ずかしくて
とっさに

「コップ一杯の水をください。」

とだけ言ってしまった。

でも女性は様子を察し
パンとミルクを差し出した。


カト少年は驚きながらも
空腹を満たし、女性にたずねた。

「いくらになりますか?」

すると、女性は答えた。

「お金なんて払わなくていいわ。」

「お母さんは人助けにお金は
 取らないって言ってたもん。」

少年はお礼を言ってその家を後にした。

彼は力がみなぎるのを感じただけではなく
人々を信じる力が大きくなったのを感じた。

彼は周りに必要とされ
役に立つ人にならなければと
強く思い、仕事と勉学に励んだ...


それから数年。

町の病院に難病をかかえた女性が
かつぎこまれた。
町医師では対応できず
大きな病院に転院が決まった。


同じ村出身というカルテを見て
興味をひかれたのはカト医師だった。

そう、あの貧しいカト少年はその病院の医師になっていたのだ。

カト医師はこの難病と闘うことを決意した。
病室に行き
患者の女性を見たカト医師は絶句した。

あの、パンとミルクを差し出してくれた
女性だったのだ。

「患者は全て同じように助ける、しかし
なんとしてもこの女性を助ける。」

カト医師は心に誓った。

だが、女性は数日後に容体が悪化して
意識不明の昏睡状態に落ち入り
危篤状態となった。

病院内では
医師団の会議が続き
女性の生命維持装置を外すことが
適当と議題に上がって、それが
決定事項になりつつあった。

カト医師だけは医局団に懇願し
もう少しだけ様子を見るよう説得した。
カト医師はどうしても諦めきれなかった。
もう少しだけと時間の猶予を
医局長からもらった...

カト医師は女性のかたわらに座り話しかけた。

「私は貴方の命がどれほど尊いか
 知っています。」

「そもそも貴方がだれであろうとも
 私は全ての隣人を助けなければ
 ならないのです。」

「私は子どものころ同じ村の
 見ず知らずの若い女性に
 助けられたからです。」

カト医師は言い終わると病室を出ようとした。

その時、女性の指が小刻みに動いて
いるのがわかった。
彼女は心から生きたいと望んでおり
生きることを諦めていなかった。

女性は奇跡的に回復して
退院できるまでになった。

日本と違い保険制度の違うこの国では
入院及び診療代は莫大になり
とてもこの女性が払える額ではなかった。

女性は退院時の額を想像し
請求書にしばらくは目を通す事も
できなかったが、意を決してみてみると
領収書が同封され
その最後には次ように書かれていた。


「お代は、パンとミルクでお支払い済みです。カト医師より。」





お読みいただきありがとうございました。
このお話が気に入っていただけたら
ぜひ、シェアしてください、
YouTuber《これは面白い》さんの
願いでもあります。
このお話はその中の1つをまとめたものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?