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戦うラーメン

大学生時代、ゼミの先輩が放った一言が忘れられない。

「あそこのラーメン屋は食べにいくってより戦いに行くって感じだね」

あそこのラーメン屋、とは俗にいう二郎系という呪文を唱えて山盛りの具がどっさり乗ってくるタイプのラーメン屋のひとつ。
暇を持て余した不真面目文系大学生後輩だった私が軽い気持ちで「あそこのラーメン屋ってどんな味なんすかね」と投げかけてみたら返ってきた答えがこれだった。

食事について「戦う」という言葉を飾りに使っている場に立ち会ったのは初めてである。
フードファイトという言葉もあるけれど試合感が強い。
「戦いに行く」というのが自分ごとのような印象を受ける。

私は二郎系のラーメンを食べたことがないので実際にどれほどのものか体験したことはないのだが想像には難くない。
自分の首から上と同じぐらいの高さに積まれたもやし、キャベツチャーシューを食べて、下には太麺のラーメンがスープを吸って待っている。
私は詳しくないがどうやら「ロット」なる提供するラーメンや客席の循環のようなものもあるらしいではないか。これを意識して決まった時間に平らげなくてはいけないのだから、さながら戦いなのだろうなということはわからなくもない。

味わい、急ぎ、平らげる。

全ての二郎を食す人にとってそうなのではないのだろうがあの山のようなシルエットのラーメンを胃に収めることは少なくとも私にとっては「ラーメンvs私」といった構図に近い様相を呈することは実際にあい見えなくてもわかる。
たとえ私に質量があって多少大食いであってもさすがに二郎に向き合うと戦、バトル、ファイトになってしまうだろう。

私が暮らすA県にも何軒か二郎系と呼ばれるラーメン屋はあるらしいのだが大学生が多く暮らすエリアに店を構えているようだ。
その店は私が学生の頃からある店で、かなり老舗になる。
やはり食べざかりの人間が多めに分布しているエリアに店を構えるのが田舎の二郎のテクニックなのだろうか。

せっかくこんな記事を書いているのだから一度ぐらいは挑戦してみたい気もするけどいかんせんお作法だとか、食べ切れるかどうかだとか、残したらどうなるのだろうかといったことがどうしても気になる。
二郎を食すものは二郎を深く愛しているとも聞いたことがある。
果たして私はそんな人たちに無礼のないように二郎と向き合うことができるのかという心配もある。
私にとって二郎はニンニクヤサイマシマシカタメナントヤラでできたラーメンの大きな山に登るようなものなのかもしれない。

いつか挑戦できた時があったらそれはその時でレポートします。




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