インドカレー屋のホスピタリティ
7〜8年前にもなるだろうか。
ゲームで知り合った友人と関西に1週間ほど旅行に行った時に、よしもとの祇園花月という劇場で芸人さんのトークライブを見たことがあった。
ライブ自体は大満足の内容でとてもたのしく、そのままいい気分で夕食へ。
そのまま祇園の街をぶらぶらする。
もう21時とかになっていたからか、どこか街は静かだったような気がする。
賑わってないわけでもないが落ち着いていた。
今の京都では考えられないことだろうしもしかしたら私の記憶違いかもしれない。
しかし夜の祇園で夕食の店を探す時、なんとなく開いている店がどれもしっくりこなくて結局ここにしようと入ったのがどこかのビルの地下に入った本格インドカレーの店だった。
店の中は地下ということと照明が落とされていたのとでどこか薄暗く、足を踏み入れた瞬間「やっちまったかもしれない」という思いがよぎった。
店の中は日本語が喋れる外国人(おそらくインドかネパール人)が1人、それ以外は喋ることができなそうな外国人だった。
私と友人は2種類選べるカレーの中から各々好みのものを選び、被ったものはなかったので合計4種類のカレーが卓に並ぶこととなった。
具体的な内容は覚えていないがほうれんそうのカレーとキーマカレーは頼んでいたような気がする。
ちなみにマンゴーラッシーも頼んだのだけれど、注文を通した後に品切れだったことがわかったようで、結構時間が経ってから「だめ、ない」と店員から不得手な日本語で断られてしまった。
結局普通のラッシーは頼めたのでそれにしてカレーが来るのを待っていたのだがやってきたカレーは私と友人が頼んで組み合わせと少し違っていて私たちは首を傾げた。
友人がAとBのカレー、私がCとDのカレーを頼んだのだとしたら、友人のもとにBとD、私の元にAとCが配膳されたと言った感じである。
とりあえず器を取り替えたら解決する話なのでまあいいか、と友人と目線で会話してカレーを食べようとしたところ、日本語が達者な店員が現れた。
なんだなんだ。
「このカレーは辛い、このカレーは辛くないやつですね」
ん?辛い、辛くない?
「辛いのと辛くないのの組み合わせにしました。ちょうどいいでしょ」
どうやら私たちが具材だけを見てカレーを頼んでいると思われたらしく、気遣いでカレーの組み合わせを変えてくれたらしい。
たしかにその方が私たちにとってもありがたかったのだが経験のないホスピタリティに戸惑ってしまい「ど、どうも……」とたじたじになってお礼を言ってカレーを食べた。
たしかに辛味が強いのとそうでもないのとを一緒に食べた方が美味しい。
シェアして他の味も食べたので結局全部のカレーの味は確かめたのだがあの店員の采配は間違っていなかった。
さすがのお手前である。何も知らない私たちを導いてくれてありがとう、インドのカレー屋さん。
インドのカレーを出してくれる店にいくと往往にしてこう言った独特のホスピタリティに遭遇することが多いような気がする。
私の地元にも何軒かインドカレーの店があるのだが、そのうちの1つに1人で入った時にもそういったことがあった。
インドカレーの店では高確率で「ナンのおかわり」を勧められる。私は1枚でお腹いっぱいになるのであまりたのまないのだが積極的に頼んでみないかと言われる。
その時も1人でナンでカレーを食べていたのだが、店長らしき人がそっと近づいてきてこう言ってナンを勧めてきたことがあった。
「うちのヤツが間違って焼き過ぎちゃったから、ナン、食べてくれませんか?余ったら持ち帰れるよ」
そういう言い方をされたらなんだか食べずにはいられないじゃないですか。
私も私でめちゃくちゃに単純なので間違って焼き過ぎちゃったならしょうがないな〜〜と思わずにはいられない。
こういうインドカレー屋だけで見られる独特のホスピタリティが好きでそれだけを体験しにお店に行きたいと思ってしまうのだがなかなかナンでカレーを食べたいな〜と思う機会がなかったり、家の近所にはインドカレー店がなかったりであまり機会に恵まれない。
あの祇園のカレー屋はまだやっているだろうか。
コロナを無事に乗り切ったのだろうか。
お店の名前も覚えていないが元気にしてるかなと思いを馳せてみる。
なんかよくわかんないけど今ちょっとラッキーで思ったより出費が浮いたんだ〜っていうあなた!よかったらサポートしてみない?