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カメラの話で飲もうや 2軒目 Nikon F2

カメラについてのただの酒飲み談義。第二弾はニコンFに続き、ニコンF2になります。
カメラそのものの特徴や背景については、専門家が書かれている書籍やブログをご参照ください。

フィルムカメラをぶら下げて歩いていると、時折年配の方に声をかけられたりします。中でも意外と多いのは「昔は私もF2を使っていてねぇ…」という言葉。体感的にFやF3よりも多く感じます。
ニコンFは世界規模でプロ用カメラとしての存在感を示しましたが、1970年度をピークとした高度経済成長期である「いざなぎ景気」の時期と重なります。その頃から日本は徐々に豊かになり、カメラもプロや裕福層のためだけのものではなく、一般家庭にも普及し始めていくことになります。初回に記載したNikomatが中古として我が家にやってきたのもちょうどその頃。したがって、ニコンFで高級カメラの存在を認識し、実際に手にした思い出のモデルはF2だった、という方も少なくないのでしょう。
FとF2は、一見するとデザイン的に良く似ていますが、実際には色々なところが改良されています。
全体的なイメージでは、直線的で角ばったFに比べ、F2では角が丸められています。ツッパリのリーゼントのようにカキっと固められたFのペンタ後頭部に比べ、なだらかで優しい曲線で形作られたF2のそれは女性的に見えます。F2の最もF2らしいデザインはこのペンタ後頭部にあると個人的には思っています。
フォトミックファインダーも、F用のそれと比較しF2はサイズが大幅にコンパクトになり、洗練さを増しています。そしてデザイン形状を観察すると、後のF3に通じる部分に気づかされます。

実際の使用感でいうと、Fでは最高1/1,000秒だったシャッタースピードが、F2では1/2,000秒に高められています。この違いはシャッター幕速度の向上によるものらしく、実際のシャッター音はF2の方が甲高く硬い音になります。さらに重量も多少増えており、見た目の洗練さとは裏腹に、機械の凝縮感が高いプロ用カメラの度合いを増しているようにも思います。
同じアイレベルファインダー同士では、シルエットが方大きく変わらないFとF2ですが、なんとなく仮面ライダーの1号と2号を連想します。
無骨で男らしい本郷猛が変身する仮面ライダー1号(F)に対し、基本路線を踏襲しつつ細かいところが改良された、一文字隼人が変身する2号(F2)、そして誰もが知る人気者、風見四郎が変身する仮面ライダーV3(F3)に繋がっていくところまでがセットです。
え?F4は何か?それは、やはり仮面ライダーXじゃないでしょうか。素晴らしい性能を持っていたにもかかわらず、他に押されいまいち人気に乗り切れず3クールで打ち切られてしまった不遇のライダーです。
さて、そんなF2もフォトミックファインダーの無印、S、SBは「ニコンのガチャガチャ」が備わっています。酒飲むと無性にガチャガチャしたくなりますよね。ちなみにフォトミックファインダーのA、ASはAI式に変わってしまったのでガチャガチャは楽しめません。悪しからず。
F2は当初からこのフォトミックファインダーも基本モデルに据えていたため、Fと比べフォトミックファインダーの異質感はありません。そんなところも「F2って洗練されてるよね」って言うイメージにつながっているんだと思います。

さて、私のところにお迎えしたF2は、アイレベルファインダーのペンタ正面にアタリがあります。まあ、エクボみたいなもんですが、分解して裏から叩き出してもかえってベゴベゴになって悲惨なことになりそうだなぁと、そのままにしています。まあ、これもよしとしましょう。
一方で、フォトミックファインダー(無印)の方はと言うと、露出計の精度が若干怪しい。明るいところと暗めのところで、他の露出系とは異なる傾向の値を指し示します。この時代の受光器であるCdsも寿命はあるでしょうから。
そういえばフォトミックファインダーの指針式の露出計の針の動きを見ていて思い出したことがあります。小学生の頃買ってもらった「電子ブロック」と言う学習系のおもちゃで、ブロックごとに設定された抵抗やコンデンサーなどを組み合わさてアナログ回路を作ることができるんです。このおもちゃにも光センサーと称してCdsが搭載されていました。光を受けるとブザーがなるような回路を作って笑ってました。

さて、そんなニコンF2に似合うレンズは何だろうと考えました。時代的には Nikkor-S.C 50mm f1.4あたり。デザイン的にも悪くないですし、ローレット加工も立体的なものになります。しかしあえてつけるなら、Zoom Nikkor 43-86mm f3.5かな。かの植村直己さんがウエムラナオミスペシャルと言われるワンオフのカスタムF2につけて数々の冒険にチャレンジしたそうです。ヨンサンパーロクとも称されるこのレンズはニコンの標準ズーム黎明期に誕生したレンズで当時としても評判は芳しくなかったようです。当初、7群8枚構成だったモデルが9群11枚構成になり、随分と改善されました。私が使っているのは、AI化された9群11枚構成のモデルになりますが、F2との組み合わせでも時折ハッとする像を結びます。とある記事で読んだ「お前はいつからチャートを撮るようになったのだ?」と言う言葉でハッとしました。写真という表現手法の中で解像度や収差は必ずしも重要なポイントではない。それよりも作品としていかに心に残るかが大事だ、ということをおっしゃっていました。それ以降、解像度や「普段見ないようなレベルまで拡大してアラを探すようなマネ」はしなくなり、ヨンサンパーロクの写りも今まで以上に好きになりました。


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