最終予選連勝&アウェイで勝点3!      ワールドカップアジア最終予選第5節  ベトナムvs日本 レビュー

みなさんこんにちは、今回はワールドカップアジア最終予選ベトナムvs日本の一戦を分析します。この一戦は本来の実力差を考えたらアウェイであるとは言っても勝ちが当然のようなものです。しかし今回の最終予選の日本代表は本来の力が発揮できていないため油断はできません。そして何よりも初戦を落としているのでワールドカップ出場には勝利が絶対条件でした。そんな重要な試合で日本はどのような試合を展開したのでしょうか。

スタメン

画像1

まずはスタメンです。ご覧の通りベトナムは532で臨んできました。ベトナムは前節も同じシステムだったようなので特別日本を意識して5バックを採用したわけではありませんがこれが日本を苦しめていました。

一方の僕らの代表は4123で前節のオーストラリア戦と同様のシステムでした。しかし、右SBには酒井ではなく山根を起用しました。酒井はベンチ外であったためコンディションが関係しているのでしょうが、この右SBの人選はボールを握り敵を押し込むことが予想されたこの試合ではよい判断だったと思いました。

わずか1ゴールのみに終わった理由

それではまず今節日本が1得点のみに終わった原因を説明します。

ベトナムがコンパクトな532で素晴らしい守備をしていたかというと、私はそのようには思いません。なぜなら、日本のCBから簡単にライン間へパスを通されていたり、下図のようにサイドにボールがあるときにアンカーの遠藤をマークに付かずフリーにして簡単にサイドチェンジをされていたからです。意図的に早いサイドチェンジを行えば容易にタテパスは入れられたと思います。

画像2

トップレベルであれば上図の状況では2トップのどちらかは、遠藤をマークしてサイドに圧縮して守ることが一般的です。ベトナムはこの守備を徹底できていませんでした。

これが起きる原因はベトナムの選手にはスペースを管理するというよりも人を意識して自分に近い敵をマークするという守備の仕方をしているからだと思います。

ベトナムの守備がそれほど良くなかったということはやはり日本の攻撃が問題です。

下図が日本の攻撃時の配置です。

画像3

オーストラリア戦のように5レーンに人を配置して攻撃を行っていました。これでオーストラリアを苦しめたわけですが、ベトナムにはあまり機能していませんでした。その理由はベトナムが5バックを使ってきたからです。日本の5レーンに配置された人をベトナムがそれぞれマンマークして対応できていました。

これにより下図のようにライン間へボールが入ったとしてもISB(3CBのサイドのCB)などがマンツーマンで対応するためボールホルダーには余裕がありませんでした。そして日本は全くベトナムの守備を崩して決定機を創り出すことができません。これは90分間改善されませんでした。

画像5

田中がいるところにチャンスあり

それでは日本はどのようにすべきだったのでしょうか。5バックを崩す手法はいくつかあるのですが、その中でもこの試合で実際に起きていた現象に打開策があったのでそれを紹介します。

まずは単純な形です。

それはWBの背後を狙うことです。このWB(SB)裏は4バックでも常識ですが5バックを崩すにも有効です。とくに敵が攻撃するためにWBを上げてきた場合はカウンターで一番に狙い所とされる場所です。

そしてそのスペースを突いたのが先制点のシーンです。

あのシーンは敵のGKからのパントを跳ね返したところからでしたが、大迫がポストプレーでボールをキープし、WB裏に走った南野にスルーパスを出すことができ、そのまま南野がゴール前まで行くことができました。

2つ目はこれも単純なものです。

画像7

上図は26分の日本の攻撃時の配置です。右サイドに注目してください。

伊東が内側に入ったことで山根に上がるスペースができ高い位置をとり、そこでボールを受けました。このとき田中もライン間に入り、敵WBに対して2対1の数的優位(○印)を作り出しています。

この後、山根からパスを受けた田中はファーストタッチで山根の対応のために前に出たWBの裏のスペースへ侵入しました。

画像7

このようなWBに対して2対1を作る攻撃はDFラインを下げさせることができたり、敵陣深くに進入できるため5バックを崩すためには有効になります。

またこのシーンではもう1つ5バックを崩すうえでポイントとなることがありました。それは田中のポジショニングです。

下図はボールが山根に出される10秒ほど前のシーンです。

画像8

ボールは左サイドにありますが、守田から一気に山根か吉田にパスが出たらどうなるでしょうか?(ここからはタラレバの話になってしまいますがお付き合いください🙇)


おそらくベトナムのスライドは間に合わずどこかにフリーな選手を出してしまうでしょう。

画像10

今回は上図のように守田から冨安を経由せず山根までボールを届けたと仮定します。

まず山根がフリーでボールを受けられることはこの試合と同じです。そして田中が自分のマーカーであるグエンホアンドゥックの斜め後ろ(ライン間)にいるためフリーでボールを受けることができます。この山根に対してベトナムはこの試合では日本のSBに対してIHが対応していたので、仮にグエンホアンドゥックがスライドさせたとしても、IHがボールにアプローチするよりも早くパスを出されてしまい中盤にスペースを作ってしまうだけになります。

画像10

山根から田中にパスが通れば中盤がスライドしきれずにスペースがあるため、田中が5バック相手にライン間でフリーかつ前向きな状態を作ることができます。田中に対して左ISBのブイ ディエン ハイを出して対応すれば問題ないように見えますが、田中への対応が早すぎるとDFラインにできた間のスペースに誰か前線の選手が飛び出して山根がそこへパスを出すということも考えられます。また、田中がグエン ホアン ドゥックのすぐ後ろに立つためISBとしてもそこまでそこまで自分が出ていいのか?と難しい判断を下さなくてはいけません。

そして判断を迷っているうちに田中にボールが入ってしまいます。入ってしまえば時すでに遅し、田中に前向きでボールを持たれ、ボールにアプローチしても崩れたDFラインのスペースを狙ってラストパスが出るでしょう。

以上のようにサイドチェンジがもっと早く行えていたらチャンスを作れるポジションを田中はとっていました。

現にこの守田が持ったシーンで冨安が自分を飛ばして右へ展開するように右サイドの方を指さしていました。

選手たちの中にはベトナムの守備に対してどのように攻撃したら得点が奪えるかということが分かっている選手はいました。しかし、それを試合中にチーム全体に共有して実行することは選手たちだけでは困難です。そこにはやはり指導者の手助けが必要になってくると思います。

田中のポジショニングに話を戻しますが、このときの右サイドの関係は下図のような3人の関係になります。

画像11

この配置は5バックを崩すにはとても有効です。なぜなら敵のDFラインよりも1人多いからです。ISBが内側、WBが外側の選手に対応したとしても内側にいるもう一人の選手にマークする選手が中盤の戻りを待たなければ対応できません。したがってもっと意識的にこのような形を作ることができれば日本は圧勝できたかもしれません。

後半は伊東が意図的に内側に入り左WBのグエン ホン ホンズイの背中側に立ち、山根が高い位置に行くことが増えました。しかし伊東がそこから背後を狙ったり、田中がライン間から出てしまうこともあったのでそのような狙いがあったかはわかりません。

そしてもし以上のようなサイドで3人の関係で5バックを崩すなら以下の図のような配置となります。

画像6

このように敵ISBの外に前線2人、ライン間にも2人配置するという5バックの崩し方は現チェルシー監督のトゥヘルがPSG時代にCLの5バックだったドルトムント戦に採用していたものです。

5バックの崩し方もトップレベルでは発明されているんです。

ちなみに58分にはこれに近い配置になりボールを冨安から田中へパスを通しライン間で田中がフリーでターンしていました。

不可解な交代

最後に気になったので交代枠について言及しておきます。

私が気になったことは交代の狙いが全く見えないことです。

今節の交代枠は中山、浅野、古橋、柴崎そして原口の5人です。途中で下がった選手は特に悪いからと言って下げられたわけではなく、単に疲労を考慮してのものだと思います。

途中から入った選手たちはほとんどが中盤よりも前の選手です。(そして森保監督のお気に入りの選手が多いという印象を抱きます。)これだけを見ると日本のベンチ陣はあくまでも追加点を狙いに行くために、交代枠を使用したと判断できると思います。

確かに日本のベンチも先制点をとったときから0-1の状態のまま試合を終えようなどと思わず、早く追加点を取って安心したいと思っていたと考えられます。

しかし交代枠を使っても選手の配置や攻撃の形が前に5人並べて攻撃するという前半からの形を延々とやっていました。それでは当然追加点を奪うことは困難で、監督からのメッセージを伝えることができる交代枠を使用する意味がありません。この運動量が落ちていそうな選手をベンチの元気な選手に代えるフレッシュ交代は、今に始まったことではありませんがとても気になりました。

そして交代についての疑問符は88分に守田を下げて原口を投入したことです。守田が疲れていたように見えたから変えたのかもしれませんが、代わりに入ったのが攻撃的な選手である原口です。原口は最近所属クラブでIHとして評価されているようですが、守田などの中盤でボールを刈り取る守備や空中戦が評価されているのでしょうか、私はブンデスは見ないので何とも言えませんがおそらく別の面、例えば攻守にピッチを上下動する動きなどを評価されていると思います。

守田よりもボール奪取能力がなくサイドでのドリブル突破が武器の原口を入れたことは、ベンチからのメッセージを追加点を狙いに行くと受け取られてもおかしくありません。

しかも88分という試合終了間際とは言え、日本にたった1点差という状況でベトナムは得点のためにどんな手段を使ってくるかわかりません。怒涛のロングボール攻撃もあり得ました。そんなことが予想される展開で中盤の運動量を増やしたところで意味がありません。それなら、守田は残して空中戦対応のために高さのある板倉などCBを前線の選手と後退させた方が十分理に適っています。

今の日本は試合を終わらせる交代すらよくわからないものになっています。

最後に

今回はベトナムvs日本を振り返りました。選手の合流が遅れるなどのトラブルがあったのにも関わらず、アウェイで勝ち点3を手に入れることはできました。しかし試合を見ればただ勝ち点3を手に入れただけの試合でした。ワールドカップで結果を残すための成長は感じられませんでした。

一体日本代表はこれからどうなっていくんでしょうか…

次節は4位のオマーンとの試合です。日本は今節の勝利により3位まで順位を上げ、2位のオーストラリアに勝ち点1と迫りました。しかしワールドカップ出場、またホームでの初戦で負けてもいるので日本の力をあらためて見せつけるということからも勝利が絶対条件です。

何としても勝ち点3を取って年内最後の代表選を終わらせてほしいです!

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?