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「楊貴妃」~玉三郎が魅せる[絶世の美女]という観念

「10月大歌舞伎」第4部、坂東玉三郎の「楊貴妃」を観てきました。

「9月大歌舞伎」に引き続き、玉様が、普段は見られない歌舞伎座の中を案内してくれるバックツアー「口上」と映像と実演を交えた演出による舞踏「楊貴妃」の舞台でした。

 この「楊貴妃」の舞踏は、京劇の女方の手法に、能楽と歌舞伎が融合した幻想的な舞踏となっています。京劇の手法は、かの梅蘭芳のご子息から、直接指導を受けたと、玉様はおっしゃってましたが、その優雅で細かな動きが素晴らしい。まるで雲の上を歩いているようでした。
 玉様は以前から、「芸術の交流は国境とジャンルの垣根を越えて、人々の心をつなぐ架け橋になっている」とおっしゃってますが、まるで、西域からの風がふくような唐の時代に迷い込んでいるような気さえしてきます。

 楊貴妃と言えば、美女の代名詞であり、それも傾国のとか、絶世のとかありとあらゆる形容詞がつく美女であります。でも、本当はどんな姿形だったのかは誰もわからない。でも、きっとこうだったんじゃないかと中国でも名だたる美人女優たちが演じています。皆さん、楊貴妃を演じるというだけで大変なプレッシャーなんだろうと思います。
 しかし、あくまで私見ですが、映画やドラマのなかの楊貴妃をみても、“傾国の美女”というのはストーリーで理解できるのですが、”絶世の美女”というのは、普通の美女とどこが違うのか、正直よくわかりませんでした。

ですが、今回、玉様の楊貴妃を観て心にストンと落ちるものがありました。「絶世の」とは、美に対する「観念」なのだと。そして、玉様が演じる楊貴妃は、その観念を身体的に表現した「絶世の美女」なのでありました。

 玉様による歌舞伎座バックツアーのなかで、楽屋を案内されていましたが、そこに置かれた鏡台は、40年前に特注で、職人さんに作ってもらったとおしゃってました。ようやく、年月を経て、いい木目がでてきたそうです。そこには、白粉や、水差しなども美しく器に入って、きれいに並べられていました。また、やはり、特注で創らせた浮世絵の屏風とも合っていて…
ああ、ここで、化粧をして、玉三郎から楊貴妃になっていくんだなと...うまく言えませんが、年月も、修行も「絶世の美女」を演じるもとになっているのだと思ったのです。



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