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遠い日の夏の思い出~パッピンスの甘さ

わたしは、韓国には何回も旅行しているが、この近くて遠い国に、まだ行ったことがないという人には、ぜひ一度行って、自分の五感で知ってほしいとと、勧めることにしている。

そして、韓国に行くなら、やっぱり夏がお勧めだ

初めて行ったのは、確か、ソウルオリンピックが始まる2年前だったか、それこそ街中が、あちこち工事中だった。夏の暑い日、土煙のなかを歩き回ったことを思い出す。

わたしは、大学を出たばかりで、友人と2人の自由旅行だった。当時の女子大生にとって、卒業旅行でアメリカやヨーロッパに行くというのが憧れの時代だったから、韓国に若い女の子だけでというのは、本当に珍しかった。

わたしたちは、行く先々で、韓国人からは、「あなた方のお父さんかお母さんは韓国人ですか」と日本語で聞かれ、日本人からは、「Are  you  Japanese?」と聞かれた。わたしは、「いいえ、日本人です」と答えた。

ソウルでは、YMCAホテルに泊まった。フロントのお兄さんは、日本語がペラペラだったので、いろいろと教えてもらった。慶州にも行きたいというと、ホテルも手配してくれて、高速バスの切符も取ってくれた。このバス旅行が本当に面白かった。韓国の普通の庶民の生活がよくわかった。その人情も、人の良さも、日本の田舎と変わらないのがわかって、なんだかうれしくなった。

そして、YMCAのお兄さんが、あの「パッピンス」も勧めてくれたのである。最初は、なんだ、かき氷じゃないかと思ったが、かき氷とは、似ているけど全然違うものであった。どこが違うかは食べればわかるが、問題は食べ方だ。韓国料理の基本である、混ぜて食べなきゃパッピンスにはならない。

慶州に行った時、高校生の3人組に声を掛けられ、慶州博物館を案内してもらい、その帰り道、駄菓子屋のような店先で一緒にパッピンスを食べた。駄菓子屋のおばさんは、弟が大阪で働いていると言っていた。そんな話を、英語と韓国語と日本語とちゃんぽんで話したが、けっこう通じたものだった。

高校2年生だという彼らに、志望は大学はどこかと聞くと、「ソウル大」「高麗大」「延世大」だと即答した。受験生が、ナンパなんかしていていいのかとも思ったが、「すごい、優秀ね」と褒めるとはにかんでかわいかったな。でも、もう今では、彼らもいいおじさんになってるだろうけど。

博物館の前から、駅までのバスは、学生はタダらしいのだが、彼らが、バスの運転手さんに、この人たちも学生だよとかなんとか言ってくれて、私たちも、タダで乗って帰った。

まるで、韓国ドラマの世界だった。もっとも、韓国ドラマが日本でも人気がでて、わたしが見てはまるようになるのはもっとずっと後のことではある。

やっぱり、韓国に行くなら夏だ。東アジアの混沌の歴史と文化を混ぜ合わせて、汗と涙で食べる、パッピンスのはかない甘さを堪能してほしい。

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