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韓国ドラマ「ムーブ・トゥ・ヘヴン:私は遺品整理士です」~遺品からそのひとの遺言を探し出す~

Netflixで配信されている「ムーブ・トゥ・ヘブン;私は遺品整理士です」を観た。わたしは、このドラマが始まる前から、かなり期待していたが、その期待を裏切らない良いドラマだった。

(ストーリー)強いこだわりをもつ青年と、これまでずっと疎遠だった叔父。青年の父が突然亡くなり、後見人候補の叔父がやってきて、同居を始めたが、2人の仕事は、遺品が教えてくれる故人の想いを、残された者たちに届けることだった・・・。

1.遺品整理という現実的な行為

生活保護のケースワーカーをしている友人は、身寄りのない方の遺品整理に立ち会ったことが何度もあり、そのたびに、つくづく、「結局のところ、遺品はすべて、燃えるものと燃えないものにわけられるのだ」と哲学的な?気分になり、終わった後に、ひとりで、「お清め」のビールを飲んでいた。

行政書士をしている友人は、遺言状に書かれていない遺品については、遺言執行人に一任されているものとみなしていいものかどうかと悩んでいた。

わたし自身は、母を看取った後、介護疲れでぐったりしてしまい、遺品を整理し始めるのに、半年ほどかかった。

誰でも、ある程度、年をとれば、遺品整理をしたことも1度や2度はあるだろうが、それは、ひとつとして同じことはないし、どれも重い体験だろう。

しかし、このドラマは、フィクションに間違いないのだが、どこかで聞いたことがあるような、既視感が漂っていて思わず引き込まれてしまうのだ。

平凡な日常は、実は、生と死がいつも隣り合わせにあるドラマチックなものなのだと気づかされる。遺品整理という現実的な行為を通して、語りかけてくれるドラマになっている。

2.主演俳優2人の人間的な演技

「シグナル」のイ・ジェフンと「愛の不時着」の第5中隊の末っ子のウンドン役だったタン・ジュンサンが叔父と甥(おい)の名コンビを熱演している。

いかにも訳アリの叔父を演じるイ・ジェフンは、1984年生まれの36歳。でも、この人が演じるなら、きっと良い叔父さんに違いないと視聴者に安心感を与えてしまう。演技派の彼は、映画でもドラマでも、主役でも脇役でも、重宝されている。いわゆるイケメン俳優のワクではないので、あまり取り上げられることもないだろうけど、いい役者だなと思う。出演作品が面白い作品ばかりなのは、キャスティングしたい制作陣も多いからで、そのうち、巨匠の作品にもでてくるでしょうね。

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そして、もう一人の主役、アスペルガーの青年グルを演じるのが、タン・ジュンサン。2003年生まれの17歳!。てことは、「愛の不時着」の時は、16歳だったの!!演技、上手すぎ。もう子役のレベルではない。
来年のドラマアワードでは、ぜひ彼に新人賞を取らせたいと、思わず懇願してしまうのだった。

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3.死ぬときはひとり...だからこそ残したいもの

人間は、生まれてくる時も、死ぬ時もひとりというけれど、だからこそ、誰かとつながっていたいと切に望む生き物なんじゃないだろうか。

遺品として残されたものを見て、その人の思い出に浸るのは、そんなさびしがり屋の人間らしい行為だともいえるだろう。
そして、その遺品から、亡くなった人が残したかった遺言を、慮るのもまた人間らしい行為だと思う。想像力とはこういう時のためにあるのじゃないだろうか。

もちろん、このドラマは、あくまでエンターテイメントとして作られているフィクションであるので、サスペンス要素もあり、アクションシーンもあるわけだが、それを観ながら、現実の生活にも思いを馳せさせてくれるようなドラマになっている。まさに、見終わったあとに、優しい気持ちになれるような浄化作用のあるドラマなのだ。

死ぬ時は、遺品は、このドラマに出てくる段ボールぐらいに収まるようにしておかなくちゃと、反省させられた。あくまで個人的な感想だが。


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