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特集①「恋する女優ソン・イェジン」紬のような魅力

韓国映画の主演女優として輝きをはなち、韓流ドラマでは座長として全体をまとめつつ引っ張り上げる、まさにメロドラマの女王「恋する女優ソン・イェジン」。
彼女の魅力はどこにあるのだろうか。

それは、卓越した演技力につきる。と思う。

 映画では、監督がこう撮りたいと思うように演技することができる。
 すなわち、シーンに強烈な印象を残す演技ができる、ここが素晴らしい。
 ソン・イェジンの主演作の映画には、名作が多いが、その名シーンでこの演技力が活きる。というか、この演技力があってこそ、名シーンが生まれるわけである。

 たとえば、同じ監督の作品として、カァク・チェヨン監督の「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンと「ラブ・ストーリー」のソン・イェジンを比べてみるとそれがよくわかる。(一応、断っておくが、アラフォーの韓国女優では、チョン・ジヒョンは抜群に演技力のある女優である。だから、ここであえて比べているのだ。)
 どちらも、恋愛映画の名作であるが、印象に残るシーンを思い出してみると、圧倒的にソン・イェジンのほうが多い。だから、YouTubeで、ファンがこれらの映画のミュージック・ビデオを作成している数も「ラブ・ストーリー」のほうが断然多いと思う。素人が砂ぎ合わせても絵になるのだから。
 

 また、まるで歌舞伎のような人形浄瑠璃のような伝統芸能的な感情表現ができる演技力。これが素晴らしい。

 この演技力が、韓流ドラマでは活きてくる。「愛の不時着」沼と言われる何度見返しても同じところでまた泣かされてしまうという演技である。

 韓流ドラマは、その「様式」自体は、2000年ごろから確立されていったのではないかと私は見ているのだが、だから、比較的新しいモノなのだけれども、感情の揺さぶり方は、日本でいう浄瑠璃のような古くからの技法を用いているような気がする。
 あの人形浄瑠璃のように、話の筋がわかっていても、人形だってわかっていても、おじさんがやっているのだとわかっていても、どうしても泣いてしまう。泣きのツボを押さえるのに通じるものがあると思う。
    まあ、そこまで伝統芸能でなくとも、新派の女優さんあたりは、ソン・イェジンの演技を褒めると思うのだが。そのへんを波野久里子さんあたりに聞いてみたいものである。

 映画でも、ドラマでも、彼女の演じる女性は、魅力がある。
 それは、例えていうなら、紬のような魅力だと思う。

 派手さはないが美しい。 だって、絹織物だものね。 

 ところで、最近、「紬って絹なの?」と聞かれたことがあって、わたしは、思わず絶句してしまった。
 絹に決まってるじゃん。大島紬や結城紬が絹じゃなきゃ何なのよ!!

 日本女性の着物離れは深刻だなあ。
 日本の紬は、産地ごとに、その生産工程にも、絣文様にも特徴があって素晴らしいのに。そして、なにより、美しいのに。
 三代着てこそ、その真価がわかるという、息の長い絹織物なのである。

 必然の経糸、偶然の緯糸がおりなす人間模様の映画やドラマは、芸術性や完成度が増すほど、手間をかけて織られた紬のようでもある。 紬は、「緻密さ」と「情熱」がなければできない絹織物なのだ。

そして、ソン・イェジンには、その紬に通じる魅力があるとわたしは思う。





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