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アカデミー賞ノミネートも納得の長編アニメ「生き延びるために」~アフガニスタンの少女たちはこれからどうなるのか

映画の原題は「Breadwinner」つまり
a person who earns money to support a family.

日本語に訳すと「稼ぎ手」となる。なぜ、少女は、少年のふりをして、一家の稼ぎ手とならなければいけなかったのか、その現実を考えさせられる素晴らしいアニメ映画だった。

<ストーリー>2001年アメリカ同時多発テロ事件後のアフガニスタン、カブール。11歳のパヴァーナは、お話を作って家族に聞かせるのがとても上手な女の子。しかしある日、父がタリバンに捕まり、パヴァーナたちの暮らしは一変。女性一人での外出が禁じられているため、パヴァーナは髪を切り“少年”になって、一家の稼ぎ手(ブレッドウィナー)として町に出る。パヴァーナが目にした新しい世界とは? 家族たちの運命は…?

このアニメ映画は、冒頭からわたしの心をとらえて離さなかった。

日本のアニメを見慣れているわたしには、映像技術的にはさほど、引き付けられなかったが、なんといっても、声優のセリフ回しとストーリー運びが素晴らしくてどんどんこの映画の世界に引き込まれていった。

そんな素晴らしい原作を書いたのは、カナダの作家で平和活動家のデボラ・エリス。「生きのびるために」(さ・え・ら書房刊)は、17ヶ国語に翻訳され、ピーターパン賞をはじめ数々の文学賞を受賞したベストセラー児童文学だ。パキスタンの難民キャンプで、アフガニスタンの女性や少女に取材を重ね聞き取った話をもとに本作を書き上げた。

製作スタッフはアイルランドのアニメ会社、カナダルクセンブルクもそのアニメ会社の製作陣に入っている。なんかこうして国名並んだだけでも、女性の人権意識の高そうな国だよなあ…なんて思ってしまう。

ノラ・トゥーミー監督は、思春期、自分の居場所を見つけられずに高校を中退し、工場で3年間働いた後に、アニメーションという自分を表現する方法を発見した経験があるという。そして、母である彼女は、自分の力で人生を切り開く主人公の少女に、明るい未来が待っているようにという想いを託したのだ。

また、本作に協力を申し出て、世界から一躍注目を浴びせさせるのに、ひと役買ったのは、UNHCRの特使であり、アフガニスタンで少女たちの学校教育を支援するアンジェリーナ・ジョリー

そんな、フェミニスト多国籍軍といってもいいような女性たちが創り出した映画は、2018年アカデミー賞長編アニメーション賞とゴールデングローブ賞アニメーション映画賞にノミネートされた。やはり、この映画を生み出した、そんな女性たちの活躍もまた、快挙と言えるのではないだろうか。

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家族のために、少年の恰好をして、稼ぎ手となった少女。これが、フィクッションなら、どんなにいいだろうか。面白いアニメで済むから。

しかし、これは、フィクッションではない。今、また、タリバンの支配下にはいったアフガニスタンの少女たちが直面する現実なのだと思うと、胸につきささる映画であった。






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