われわれは「教師」か「教員」か？
ある時、留学生教育に携わる教師仲間Aさんが、地域日本語教育でボランティア代表を務めるBさんと話していました。
Bさんが教室で使っている教材について、教室に集まるみなさんの実情に合わせて、語彙を変え文型を変えうまく使っていると話してくれました。
それを聞いたAさんは親切心で、「その教科書は文型積み上げと言って～」「今の日本語教育は～」、「目的合った教科書とは～」と教え始めました。
はじめは黙って聞いていたBさん。
突然、Aさんを遮るように言いました。
「私も日本語教師だから、わかりますよ。でもね・・・」
はっとしました。
「私も日本語教師だ」ということばをちょっと意外に感じている自分に気づいて、ショックでもありました。
たぶん、私の中に「日本語教師」と名乗る（ことができる）のは、職業として、仕事として、対価を得て日本語を教える人だという思い込みがあったんだと思います。
そのときはじめて、「自分は日本語教師である」というアイデンティティをもって教えているボランティア教師がいらっしゃることに気が付きました（ごめんなさい・・・）
そういえば、公認日本語教師の議論が活発だったとき、「この資格がなければ日本語が教えられないというものではない」、「自主的な活動を妨げるものではない」と強調されていたかと思います。
あの時はステイクホルダー全方位に配慮した表現だ・・・くらいにしか思っていませんでしたが、先日、にわかに「登録日本語教員」なる資格の話が聞こえてきて、あのボランティア日本語教師のことを思い出しました。
今回議論されているのは、「公認日本語教師」に並ぶ二つめの資格ではなく、「登録日本語教員」と名称を変えた同じ資格のことだそうです。
確かに、公認日本語教師は名称独占資格として議論されていたので、ともすれば無資格者が「日本語教師」と名乗ることさえグレーゾーンになりかねませんでした。（国家資格キャリアコンサルタントは似たような名称の使用を禁止しています）
あそこで「私も日本語教師です！」とおっしゃったベテランボランティアのような方が資格を持たないばかりに日本語教師と名乗れなくなるのはとても残念に感じます。この名称独占資格が「登録日本語教員」になれば、この問題はなくなります。
でも、SNS上では「登録日本語教員」という資格名に抵抗感を感じる方もけっこういらっしゃるよう。
そこで、「日本語教員」と「日本語教師」ってどう違うんだろう？と考えてみました。
広辞苑には
きょう‐し【教師】ケウ‥ ①学術・技芸を教授する人。 ②公認された資格をもって児童・生徒・学生を教育する人。教員。
きょう‐いん【教員】ケウヰン 学校に勤務して教育を行う人。教師。教育職員。
とあります。
「登録日本語教員」とは「認定された日本語教育機関で働くことができる教育職員」という意味なんでしょうね。
神吉先生のnoteにも
日本語教育機関の類型化の議論を発展させ，機関認定の仕組みを作るという流れと関連します。
とありました。
このnoteを読んで、私は日本語教師の公的資格を「日本語を教えるための最低限の知識・技能を保証するもの」ではなく、「認証された日本語教育機関で教育職員として働くことができる免許証」という位置づけにかじを切ったと理解しました（←間違っていたら、ご指摘ください）
ボランティアや、認証教育機関（留学、就労、生活それぞれに認証・認定されるんでしょうか？）以外で教える人には不要な資格。
教員免許は公教育の場で教えるには必須だけれど、家庭教師や塾講師、放課後の学習サポート、教育図書の出版、教育の研究には必要ないものです。さらに言えば、家庭教師も塾講師も教員免許がなくてもできますが、あればアピールできたりしますよね。
「登録日本語教員」もそういう資格になるのではないかと思いました。
(間違っていたら教えてください）
この名称ならば、上で紹介したボランティアさんは「私は登録日本語教員ではないが、日本語教師として活動しています」と言うことができます。
私も「登録日本語教員資格を持った日本語教師です！」と言えたらうれしいです。
そう。
「登録日本語教員」は資格の名前であって、やっぱり私は日本語教師だと思うんです。
そんなふうに考えて、他の国家資格は名称と職業名が一致しているのかしら？と検索してみました。
あれれ？？
こちらのサイトを見ると、職業名と資格名はほぼ一致している感じですね。
・・・となると、やっぱりこの資格を取ったら、「私は日本語教員です」ってことになるのかな。
うーん。
やっぱり日本語教師と名乗りたいような気もします。
それなら、「公認日本語教師」のほうがしっくりくるような・・・？
われわれは「教師」か「教員」か？
みなさんはどう思われますか？
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