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続・日本語教師の資格の話

2022年度の新会議

2022年5月31日に「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議(仮に「質の会議」と言います)」の第1回が開催されました。日本語教育を実施する組織・団体等を類型化して法的枠組みの中に位置づけることと,それに付随する形で教師の資格について議論する会議体です。
この会議について報道された記事を読んで,混乱している関係者が一定数いるようなので,現状を簡単にまとめます。

日本語教師の資格の議論の経緯

2020年2月の文化審議会国語分科会で報告された「日本語教師の資格のあり方について(報告)」では,名称独占の国家資格「公認日本語教師」の創設を目指すということでまとめられました。そして,これを前提として2021年には日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議が設置され,2021年8月に「日本語教育の推進のための仕組みについて-日本語教師の資格及び日本語教育機関評価制度-(報告)」という報告書がとりまとめられ,文化審議会国語分科会でも承認されました。二つの報告でもっとも異なるのは,前者では教師の資格についての議論でしたが,後者では教師の資格に加えて日本語教育を行う機関の類型化についても議論したことでした。(このあたりの議論の経緯については,4月に公開された拙稿「公的日本語教育を担う日本語教師に求められるもの」『日本語教育』181号,4-19.をご覧ください(日本語教育学会非会員は有料です))。

機関の認定と教師の資格

今回の質の会議では,「登録日本語教員」の資格を検討するとなっています。公認日本語教師に続いて,また新しい資格ができるのか??と思った方も多いようですが,今までの「公認日本語教師」の議論の延長で,別の新しい資格の話ではありません。公認日本語教師→登録日本語教員と名称が変わって提案されているわけです。

登録日本語教員という名称が提案されたことの意味は,日本語教育機関の類型化の議論を発展させ,機関認定の仕組みを作るという流れと関連します。今後,おそらく認定機関への「必置資格」として登録日本語教員を位置づけるという方向で議論が進むのだと思います。
名称独占資格が,その資格を持っている者しかその名称を名乗ることができないというものであるのに対して,必置資格とは,その事業を行う事業者が必ず配置しなければならない者となります。それが一人なのか複数なのか,または全員がそうでなければならないのかはわかりませんが,機関認定と教師の資格を連動させる仕組みを考えると,「登録日本語教員」という名称が出てきた意味が見えてきます。

日本語教育機関の認定

質の会議の資料では,機関認定について,文部科学大臣が行うという案が「イメージ」として出されています。従来,日本語教育機関は法務省の告示により定められており,法務省告示校になれば,在籍する学生が在留資格「留学」を取得できるというように,入国管理に関連するメリットがありました。一方で,教育的な観点については,民間の日本語教育機関によって構成された団体による自助努力に委ねられていました。文科大臣の認定となれば,教育機関として,より教育内容に力点が置かれた審査・認定になるのかもしれません。ただ,その認定がどのように行われるのか,法務省告示のシステムとどのような関連がつくられるのかなどは,これからの議論だと思います。

質の会議や資格の議論の今後

質の会議は今後も数回開かれる予定ですが,まだ次回開催の日時は決まっていません。今後,機関の認定と教師の資格について具体的な話を進めていく予定です。その結果は,文化審議会国語分科会に報告され,最終的には審議会でなんらかの報告・提言等が出されることになるのだと思います。それが法律になるのか,省令のような形になるのかなど,まだわからないことがたくさんあります。議論の推移をみんなで見ていく必要があると思います。

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