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公認日本語教師に関するパブコメを書く前に頭の整理をしてみた

 現在、文化庁で「日本語教育の推進のための仕組みについて(報告)」に関する意見募集の実施についてというパブリックコメントの募集をしています。日本語教師の新国家資格「公認日本語教師」に関するものです。

みなさん、パブリックコメントはもう書きましたか?
正直、よくわからないという方も「わからない」と書くだけでもよいそうです。
「賛成」「反対」の一言でも、何なら項目ごとに〇×でもよいとか。

とにかく、意見を表明することが大切
そして、数がモノを言うのだそうです。

日本語教育に携わるみなさん、ぜひぜひパブコメしましょう。


 私も人生二度目のパブコメに何を書こうかと考えて、ここ数日報告書を読み込み、いろいろな方のお話を聞きました。そこで、今日はパブコメ執筆前の、頭の整理をしてみます。

よかったら、みなさんの意見もお聞かせください。


「公認日本語教師」という名称について

 この名前はそんなにもめることもなく、会議でも早くから決まっていたそうです。
そういえば、報告書には(仮)とも書いてありませんね。
ってことはほぼ決定で間違いないのでしょうか?

国家資格には業務独占資格と、名称独占資格があります。

業務独占とは医師や弁護士のように、この資格がなければその仕事ができないという資格のことです。

名称独占はキャリアコンサルタントや公認心理師のように、資格がなくてもできますが、資格がない人はこの名称や紛らわしい名称の使用が禁じられている資格です。

ポイントは「紛らわしい名称の使用も禁止」ということです。

例えば、キャリアコンサルタントの場合は以下のような名称使用も禁じられています。

キャリア・コンサルタント
キャリアコンサル
標準キャリアコンサルタント
職業キャリアコンサルタント

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198324.html

また、公認心理師は「公認心理師法第四十四条」に下記のように書いてあります。

公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。
前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80ab4905&dataType=0&pageNo=1
https://www.nisseikyo.or.jp/education/shinri/seido.php

ちなみに、他のサイトによると、もともとあった民間認定資格「臨床心理士」や「心理士」は使用できるようです。

というわけで、私は新資格を得る前は「公認日本語教師」と名乗れないのはもちろん、「日本語教師」と名乗れなくなるのではと心配しています。

キャリアコンサルタントはもともと「キャリアカウンセラー」や「産業カウンセラー」という民間資格があったところに、「キャリアコンサルタント」ができました。

公認心理師は「臨床心理士」があったところに、できたもの。

二つとも比較的新しい名称独占資格ですが、国家資格を作るときには新しい名称を作っています。

 この流れを考えると、「日本語教師」は使用せず、「公認日本語教員」とか「公認日本語講師」もしくは「日本語教士」のような新しい名前を作ったほうがよいかもと思ったりもしますが、使い慣れた「日本語教師」がやはりしっくりきますね。
(自分で書いといてなんですが、「教士」って字面を見て昔の映画キョンシーを思い出しちゃいました(苦笑)。調べたら、全然違う漢字でしたけど。)

というわけで、パブコメに書きたいのはこれです。

現職日本語教師はこのまま「日本語教師」と名乗ることができますか?資格取得前に「日本語教師」と名乗っても、罰金は取らないでくださーい!

日本語教育機関の類型化と日本語教師活躍の場について

 国家資格は国の法律に基づき定められるものです。
その法律を作るときに、「どこで教えられる資格にするか」という議論がなされ、「告示校だけが日本語教師の活躍の場ではないよね?」ということで、日本語教育機関の類型化が始まったとのこと。そうして示されたのが、「留学」、「就労」、「生活」の3つでした。


 この話を聞いたとき、ということは今後このカテゴリー分けの中で公認日本語教師資格を求める教育機関が指定されるのだろうなと想像していました。


 でも、報告書を読むと特にそのような記述はありません。
これはこの資格が日本語教師の活動の範囲を制限するものではないということだそう。


んんん??ということはこの資格を取った人はどこで何ができるの?
名称独占資格で、どこの教育機関で教えるのに必要という指定もないのでは、この資格はあってもなくてもよいものになってしまうのでは???と疑問がいっぱいになりました。これに関してはやはりパブコメせねばと思います。


 類型化された教育機関を一つ一つ見ていきましょう。ちなみに類型化されるのは「専ら日本語教育を行う教育機関」なので、就学(小・中・高)や、インターナショナルスクールは含まれません。


まずは類型「留学」

留学=法務省告示日本語教育機関

 これは納得。でも、告示基準の日本語教師要件との兼ね合いはどうなるんでしょう?おそらくここを変えていくのでしょうね。
報告書P10に「各日本語教育機関には、一定数以上の公認日本語教師の配置を必須とすることが要件として求められる」とあるので、現行告示基準の「学生20人につき一人専任非常勤を問わず教員を配置」や「学生40人につき一人の専任」なども変わるかもしれません。


 公認日本語教師は名称独占資格なので、この資格がなければ日本語学校で教えられないということはありませんが、将来有資格者が多くなれば、実質業務独占のような状態になることは予想できると思います。もし、数年前のような教師不足時代がまたくれば、話は別ですが、そんな時代はまた来るのか?

 さて、ここで気になるのはP9に「類型留学における大学の留学生別科の取り扱いについては、今後の状況等も踏まえつつ改めて検討する」とあることです。


 留学生別科は大学という傘(信頼)に守られて、実は告示校の何倍もゆるい条件で設置できてしまいます。だからこそ東〇〇祉大学のような事件も起こりました。

 本来、別科も告示基準に従うべきなのでしょうが、そうも言えない事情もあります。ほとんど縛りがなかったからこそ、別科は大学によってさまざまだからです。日本語学校と同じように進学のための日本語教育をしている別科もあれば、交換留学生や短期留学生、国費留学生の家族の受け入れ先として学習時間やカリキュラムを組んでいる大学もあります。そのような大学留学生別科で告示校と同じように学生を「管理する」ことは避けたほうがよい・・・しかし、類型「留学」にまちがいはない。
 こんな感じでさまざまな大学に配慮して、「改めて検討する」ことになったのだと思われます。

 さて、私は立場上この資格を取らないでは済まない現職日本語教師の一人です。だから、資格化されたら資格取得のために努力すると思います。


 でも、公認日本語教師は名称独占資格。将来、実質業務独占状態になるかどうかは置いておいて、とりあえずなくても、教えられる。

 では、学校等から「一定数」として求められない現職がこの資格を取る理由って何でしょうか?たとえば、現職の非常勤の先生方に「資格とったほうがいいよ」と言うメリットって何でしょう?


 報告書P8の11,その他には「公認日本語教師の資格を取得する動機付けについても今後検討を行う必要がある」とあります。ここは大いに話し合ってほしいもの。


 有資格者の積極的な採用が促進されるよう、例えばその教育機関に在籍する有資格者の数に応じて補助金出るというようなしくみを作ってもらえたら、有資格者を積極的に採用しようという気になるかも?

 有資格者が優先的に採用されるとなれば、それは資格取得の動機につながるのでは?と思います。

そこで、パブコメに書きたいこと

現職日本語教師に負担を強いるなら、金をくれ。負担を強いるなら、金をくれー。

って感じですかね。

「就労」就労者向けの日本語教育を行う機関とは?

 就労者向けの「専ら日本語教育を行う機関」ってどこでしょう?私がぱっと思いつくのはJICEだけです。

 企業によっては社員教育の一環として、日本語教育を提供するところもありますが、まだまだ少数。多くの場合、就労者個人の努力に任されています。

 「就労」に関わる「専ら日本語教育を行う機関」は誰かが創設しない限り増えません。日本語教育の質を担保するために国家資格を創設するというのであれば、そのような機関の設置をバックアップする体制がほしいところ。

 でも、現実問題「就労」の教育機関って誰が作るんでしょう?

 留学生を受け入れている類型「留学」の告示日本語学校が就労在留資格取得者向けに「ビジネスコース」を作ったら、それは類型「就労」として認められるのか?

そもそも、1つの教育機関が類型を二つ申請することは可能なの?

疑問がいっぱいです。

 そして、そのような「教育機関」の創設を待つより、「企業内で社員のための日本語教育を行う際に、有資格者を講師にするなら補助金がでる」というような制度のほうが早く始められそう。


とにかく、就労のための日本語教育が積極的に行われるようなシステムを作ってほしいと思います。

あれ?上記のことをまとめるとやっぱりこうなっちゃいます。


「就労」日本語の質を担保したいなら、金をくれ。
公認日本語教師を増やしたいなら、金をくれー。

類型「生活」についても考えてみます。


 これはP9に「都道府県・指定都市が直接的または間接的に実施する、地域の日本語教育の拠点としての機能を果たす機関を想定」と書いてあります。

 地域日本語の先進的な地域には国際交流協会のようなNPO法人があり、システマティックにコースを作って活動している所もあります。

 私は今年度から地域日本語教育コーディネーターをしていますが、担当している市でもそのような団体を作ることを考えています。

 ただ、私が関わる地域では地域日本語教育コーディネーターを配置し、日本語指導者(日本語教師)の派遣をしてはいても、やっぱり日本語支援者(ボランティア)ありきのコース設計になっています。

 そして、私たちコーディネーターも指導者も、他に生活を支える仕事があり、兼業で地域日本語に携わっています。

 さて、ボランティアと兼業者だけで質の担保ができるのでしょうか??(いやできまい)。

 国家資格を作り、その活躍の場の1つとして「生活」を挙げるのであれば、国家資格公認日本語教師が兼業やパートではなく、地域生活日本語の専門家が専任で働ける環境が必要です。

 生活日本語教育を専ら行う日本語教育機関を創設するにも、維持していくにもお金が必要。市町が民間と協力して、地域日本語教育NPO法人等を設立するための支援をお願いしたいと思います。

 もしくは、国でそういった教育機関を作ってくれてもかまわないことですよ。

あれ??結論はまたしてもあれですよ。


「生活」日本語の質の担保と言うなら、金をくれ。
公認日本語教師の活躍と言うなら、金をくれー。

 「さもしい」くれくれ星人みたいになってますが、「留学」「就労」「生活」と類型化されるのであれば、どの領域でも公認日本語教師が活躍できるような場づくりと場の支援をお願いしたいと思います。


資格の対象と教育技能と教育現場の多様性について


報告書P14に


公認日本語教師は「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版」(平成31年3月4日文化審議会国語分科会)に示された日本語教師の養成終了段階を対象とする

とあります。
 つまり、報告書P14の参考図で示された「日本語教師」の「初任・中堅」が国家資格公認日本語教師を示すものとのことです。

 みなさんはこれについてどう思われますか?

 私が日本語教師とは別に持っている国家資格キャリアコンサルタントも初任レベルをクリアしたことを証明する資格です。

 キャリコンには「国家資格キャリアコンサルタント」の上に「国家検定キャリアコンサルタント技能士2級、1級」が存在し、「国家資格キャリアコンサルタント」合格の後、「2級技能士」をめざす方も少なくありません。


 もう1つ別の例。業務独占資格である医師免許。あれはとりあえず医師になるための免許なので、医師免許をもっていれば法律上何科の患者も診られるそうです。でも、病院は科がわかれています。医師免許取得後、自分の科を選択し、研鑽を重ね、その後専門医の資格を取得していくものだと聞いています。

産婦人科専門医認定試験なんてものもあるようです。

http://www.jsog.or.jp/modules/specialist/index.php?content_id=78

 さて、日本語教師も「初任」と「中堅」ということばを出して、教育技能の差があることを示しています。
 そして、今回の類型化には「留学」「就労」「生活」も挙がっているとおり、日本語教育機関も、日本語学習者も多種多様です。

 日本語教師もとりあえず基本的なことを抑えている「公認日本語教師」と、「中堅」「コーディネーター」を証明する国家検定や、日本語教師の専門分野を認定する検定があってもよいのでは?なんて思っています。みなさん、どう思われますか?私はこれをパブコメにどう書くかを検討中です。

その他もろもろと現職の資格取得方法について


 この報告書を読む限り、名称独占国家資格「公認日本語教師」は教える教育機関に何の制限もありません。だから、初めて読んだときはこれは誰がどこで何をするための資格になるの??と疑問でいっぱいになりました。


 ステークホルダー全方向に配慮しすぎで、何が何だかわからなくなる・・・話の典型のような。

 でも、このままではせっかくの国家資格が「取っても無駄」な資格になってしまいそうで怖いです。ぜひぜひ、パブコメを送って、私たちの力でこの資格を価値ある資格に育てていきたいと思います。

 海外でも受験可能なように、試験方法をCBT(Computer Based Test)で行うことになっていると聞きました。この辺りは評価したいと思います。

 養成講座や筆記試験の内容、教育実習がこれでいいのか、はっきり言ってよくわかりません・・・。

 現在の養成講座は民間企業が「お客さん」相手にやっていて、420時間講座にも試験があると言っても、あの手この手で認定しています。だから、420時間修了だけで国家資格というのは絶対にあり得ないと思います。

 筆記の内容は現行の日本語教育能力検定試験と同じか、それより少しレベルが低くなるのかな?

 教育実習は現場の人間からすれば、2コマで何が身に着くというのか?と思いますが、報告書にある一連の流れを全部やろうとすると、かなり時間がかかりそう。パブコメにも「わからないから、詳細プリーズ」とでも書いておこうと思います。

 そして、気になる現職教師の資格取得方法の件(p8の10)

 私は試験を受けなければならないのはしかたがないかと思っています。だって国家資格なんですから。

 しかも、養成段階修了レベルの試験です。現職で、しかも「中堅」以上であれば、それくらいできて当然のもののはずです。

 ・・・と強がってはいますが、不安がないわけじゃありません。合格できなかったら、メンツ丸潰れ…正直怖いです。

でも、必ず取得できるよう勉強しようと思います!!

 一つだけ言わせていただけるならば、現職は受験料無料とか半額とかそんな優遇があるとうれしいな・・・。

 時間的負担を受け入れますから、経済的負担は何卒何卒・・・。

あれ、結局私お金の話ばっかりしていますね。
さもしくてすみません。

 さて、ここまで私が考えていることを書いてみました。

私の頭の中の「公認日本語教師」が伝わったでしょうか?

日本語教師仲間のみなさん、ぜひパブリックコメントしてみてください!

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