小説「金・金・愛」 #1

第2話:港区と初恋。


 それからはお金持ちが行きそうなパーティーに行き、LINEを交換。就活も頑張り大手企業の受付嬢になった。

 お金を稼ぐ良い人を見つけて、早く寿退社し、港区で専業主婦になることを目標に働く日々が始まった。

平日は18時に退勤し、夜の街に出た。
土日は婚活パーティー。

たまに、大学時代の友達からの紹介で男女2人ずつで遊びに出掛けるか、会社の先輩に連れられて男女3人ずつくらいで一緒にバーベキューをしたりもいた。


 その行動力のおかげか次々と彼氏ができた。
同時に3人と付き合うのは当たり前になり、5人と付き合っている時もあった。

 自分のルールとして、1番好印象な人だけにしか、家を教えないというのはあった。
ルールといってもそんな立派なものではない。ストーカーや浮気がバレるのを恐れての予防線だった。

 そんな日々が1年続いていたある日。
実家に帰った時、初恋の人に地元の駅のホームで話しかけられた。
「もしかして、あき?」
「そうですけど。」
絶対に優希だった。わかっていたけど、少し冷たく接した。

何も変わっていない。明るくて、清潔感があって、わかりやすくいえば好青年という印象。
数多くの男性を見てきた私がいうのだから、絶対にそうだ。

美人な女も隣にいた。
「彼女さん?」
「そう。1ヶ月後に結婚するんだ。」
明るく、屈託のない笑顔で幸せそうに話す彼は、相変わらず悪気もなく私を容赦なく傷つける。悪気がないからタチが悪い。

 隣の彼女さんは少しだけ頭を下げ、頷く。
こんな良い男を手離さないだろうし、彼女さんも心が透き通っているように見えた。

 私だけが少し違う世界に行ってしまった気がしていた。

 その日、一人暮らしの部屋に着いて1人でカレーを作ってみた。
こんな感じかな新婚って。

久々に自炊をすると自分が人間に戻れた気がした。こんな思いができるなら、もっと早めに自炊をしておけば良かった。自分が汚れきってしまっている気がしてしょうがなかった。

 1週間は男と連絡をとるのをやめたが、その後、いつもと変わらない生活に戻っていた。
気がつけば、優希の入籍予定日は過ぎていた。



 半年後、男遊びを辞めた。
風俗店で働き始めたからだ。
もともとセックスが好きな私は、セックスをしてお金がもらえるなんてとっても良い仕事だと思った。
相席屋やクラブで男を引っ掛けてヤってもお金にはならない。1日に約10人相手にする土日はキツいが、2・3人の平日の夜は丁度良かった。

 いろんなお客様がいて、勉強になった。人間の芯の部分が行為に出るそんな感じがした。

意外と心に残っているお客様は気持ち良くさせてくれる上手い客ではなく、優しいお客様だった。


 昼の仕事を続けながら、夜の仕事もしていたので、すぐに金は貯まった。


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