香りと記憶。
秋になると金木犀の香りがして、好きだったあの人を思い出す。
今日淹れた珈琲からは、深夜の喫茶店で他愛のない話をしたあの日と同じ香りがした。
皆様はふと気づく香りに、誰かや、昔の出来事を思い出すことはありませんか。
これらの現象を「プルースト効果」と言います。
特定のにおいが、それに結びつく記憶や感情を呼び起こす現象は、プルースト効果と名づけられている。フランスの作家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』という小説の中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した際、その香りで幼少時代を思い出す場面があり、その描写が元になっているということである。
嗅覚は五感の中で唯一、嗅細胞、嗅球を介して、本能的な行動や喜怒哀楽などの感情を司る大脳辺縁系に直接つながっているので、より情動と関連づけしやすいためと言われている。
私は匂いから色んなことを思い出します。
そして香りと記憶の関係性に気づいた大学生の後半から、身につける香水も私と思い出を結びつける香りであって欲しいと思うようになりました。
今日は色々な香水を試し、辿り着いたものを本日は紹介させていただきます。
Maison Margielaというブランド。REPLICAという香水。
Maison Margiela(メゾン マルジェラ)は服が好きな人なら誰しもが通る、業界を牽引するブランドです。
カレンダータグや、八の字ライダースで有名な数多くの名作を世にはなっており、最近では足袋シューズを街中で頻繁に見かけるようになりました。
Maison Margielaというブランドに関しては、見識のある沢山の方が記事にまとめられていますので、そちらをみていただければと思います。
そんなMaison Margielaが作るREPLICAシリーズは「時代を超えた普遍性」をテーマに、世界中から厳選した古着やアイテムを、忠実に再現し現代に蘇らせたものです。
そしてREPLICAシリーズの香水は、「香りで“シーン”を再現」しています。
「香りの記憶」をコンセプトに、様々な日常のシーンを香りで表現し、それぞれに「ストーリー」が存在しています。
ボトルのラベルには、
: Originally(シーン)
: Provenance and Period(場所、時代)
: Fragrance Description(香り)
: Style Description(誰に向けた香水か)
と項目があり、場所や年がテーマとして設定され、その記憶が香水の中に閉じ込められてます。
なぜこの香水を選んだのか。
私がREPLICAシリーズを選んだ理由は、私が香りと強く結びつくと感じている「記憶」をテーマにしている香水だからです。
多くの香水は、「水辺に咲く睡蓮の花を表現した」「太陽の香り」などの様々な香りからインスパイアされています。
しかし、REPLICAシリーズは場所、時間、情景といったある一点の記憶を閉じ込めようとした香水であり、これは私の香りへの価値観に合うなと直感的に感じたのです。
そんなREPLICAシリーズの中で、私が選んだのは「Whispers in the Library」です。
オックスフォードの歴史ある図書館では、静かに時間が流れていく。本棚や床からは木が囁き、ページをめくれば紙の吐息が聞こえる。この図書館はあなたと本だけの閉ざされた世界。
香りとしては、ワックスをかけたての木。森林浴。そして少しバニラのような甘い香りがします。
今まで名香と呼ばれる香水を色々と試してきました。(カルバンクラインのCK-One、ドルガバのライトブルー、ブルガリ プールオム、etc)
しかし、この「Whispers in the Library」はどの香水にもない、不思議で優しい香りがします。大好きな香りです。
香りから思い出して貰えるように。
昨今の世の中では変化し続けることが常に求められています。
凄まじいスピードでビジネスや、生活も変わり続け、多くの人が取り残されないようにと動き続けています。
変化することは悪いことではありません。
人間は変化に対応できるからこそ、ここまでの繁栄を築いてきました。
ただどこかでそれを寂しく思ってしまう自分がいます。
変わり続けるものもあれば変わらないものもあってもいいんじゃないかなあと。
だからせめてでも自分が使う香水、記憶と結びつく香りだけは、普遍的なものでありたいと思います。
REPLICAシリーズのコンセプトでもある「時代を超えた普遍性」。
これからどれだけ自分や世界が変わっていっても、この香りがすれば自分を思い出して貰えるように。
変わり続ける中で、変わらないものを大切にできるように。
これからもそうありたいと思います。
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