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ブライダルチェック-中編

ブライダルチェックを受ける予約の電話をしてみると、婦人科病院は忙しいらしく、仕事おわりの時間だと2週間後にようやく予約できるほどであった。この病院の最終の診察受付時間は18時だった。仕事帰りの女性はみんな17~18時の1時間を狙ってくるのだから、やすやすと予約が取れるはずもない。

ちょうどその頃は仕事も大変忙しい時期ではなかったので、私は仕事を早退し、電話した翌日の15時にブライダルチェックを受けることにした。電話口の女性はこの手の対応に慣れている風でスムーズに明瞭な声で予約確保してくれた。

翌日、仕事を終えると病院へ向かった。病院の前に着き、「もしかすると今後通うことになるのかしら。先生が優しい人でありますように。」と今さらな願いを抱いて扉を開けた。扉の向こうにはすぐ受付があり、制服を着た3,4人の女性スタッフがみな忙しそうに働いていた。

受付の女性は私に待合室で待つように指示した。待合室は天井も高く広くゆったりしたスペースで、イスも60席は用意されている。1人で待っている人もいれば夫婦で待っている人もおり、ざっと10組くらいは待っていた。私は11組目の待機人として、待合室を取り囲むよう壁を背に配置されている位置に座った。

受付をしてようやく30分が経とうとする頃、診察室からお呼びがかかった。医者は50~60代で白髪、眼鏡をかけたやや威圧的な雰囲気を持った男性だった。すぐそばには20~30代の女性スタッフが控えており、威圧さが増していた。

医者は身体エネルギーの節約をしているのか、声は小さくもごもごした喋り方で何を言っているのか、よくわからない。それなのに医者の威圧さに委縮してしまい、「え、何て仰いました?」と言えず、控えの女性スタッフに案内されるまま、内診台へ乗った。

婦人科の内診というのは、仰向けの姿勢で初対面の医者に股を広げて見せるという恥ずかしさと、自分の身体がどんな機械で何をされているのか見えずわからないという不可解さとで、愉快とは程遠い行為である。

内診が終わり、ゲッソリした気分で血液採取されると再び診察室に呼び出された。「今日の診察では特に異常はない。1週間後、血液検査の結果を聞きにきなさい。」というような事をいわれ、当日の診察が終わった。

1分もかからなかったであろう内診で、感じたことのない疲労感に襲われ、まずは異常なくてよかったな、などとは全く思わなかった。痛みとは別の、違和感としかいいようのない感覚を股に感じながら、その日は病院を後にするのだった。

運命の血液検査結果はまた次回。

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