見出し画像

映画「メッセージ」考察/ARRIVAL

強くてニューゲーム

要は「過去に戻ってやり直したい」ってやつ。言い方は様々ある。
そう言う願望は分かるし、妄想するのも楽しい。
でもついぞ、その方法も、戻った後の具体的な話も聞かない。
せいぜい「もっと勉強する」とか「あいつとは付き合わない」みたいな話。
安易に過去を変えてひどい目に合うのは
映画だと「バックトゥーザフューチャー」
アニメだと「シュタインズ・ゲート」とかで教えてくれてる。
時間を越えて何かをしたいなら覚悟が必要だ。

終わりから始まって、始まりで終わる。

映画は娘が生まれたところから始まる。
「あなたの物語はこの日から始まったと思ってた」という。
たしかに誰かの物語は、その誰かが生まれた日に始まったと考えるのが普通だよね。
でも「思ってた」という言葉をつかう当たりそうじゃないみたい。
「人は時の流れに縛られて生きてるけど」のセリフで娘が成長していき、最後は病気で亡くなる。そこで「時の流れがないなら?」と言いながら本編へ入っていく。本編のラストは、未来の夫と抱き合い、愛を感じながら原題の「ARIIVAL」が映されて終わる。
始まりと終わりとつなげて円にする。
そう言えばヘクタポットが使う文字も円形だ。
娘の名前も「Hannah」と回文的だ。
主人公は円形文字を理解するにつれて幻視の様に未来を見始める。
「外国語を覚えると思考が変化する」と説明されるけど、円形文字を理解すると時間の概念が変わる。
ここで皆が気になるのはタイムパラドックスの問題だと思う。
彼女は未来に自分が書く円形文字(ユニバーサル言語)の辞書を使って「今」解読する。
未来で知った中国の将軍の電話番号を聞いて「今」電話をかける。
「今」知らないのに、なぜ未来で知っているのかと疑問になる。
円形文字を知ったことで時間が円環構造になったからだ。
「はぁ?」って思う人もいるかもしれない。
だから角度を変えて話してみます。

「夏への扉」を開けれるのは君だけ。

「夏への扉」って小説がある。「バックトゥザフューチャー」や「シュタインズ・ゲート」の元ネタ。というより今の「タイムトラベルもの」の原型になってる作品で知ってる人も多いと思う。
その中でタイムパラドクスについて主人公が語る場面がある。
長いので僕が解釈した内容を伝える。
「世界の創造主が人類に頭脳を与えた。その頭脳でできることにパラドクスは発生しない。創造主は世界の法則をその影響がないように作っている」
短く言うとこうだ。
「君が時間を操る事すら決まっているからパラドクスは起こらない」
哲学で言うところの充足理由律とか
キリスト教で言うところの予定説に似た考え。
うまく説明できない気がする。
だから図を書いて見せてみます。


どうでもいいけど、辞書は娘が生まれる前に書いてそう。

円で時間を考えると始点と終点がないから過去や未来もなくなる。
だから説得するための番号は未来で知っても構わないし、
文字を理解するための辞書も未来で書いてもいいことになる。
「夫が離れた理由がわかった」と言う。
数学者は完全に円形文字を理解してない。
だから妻が若くして死ぬとわかっていた娘をなぜ産んだのかがわからない。
知ってしまったから娘によそよそしくなってしまう。
じゃあなぜ産んだのか?それはこの円に娘が死ぬ事が含まれているから。
もう一度映画の冒頭の話をしたい。娘が死んでから本編入る。本編は彼らの出現から始まる。これで円が完成する。
あえて誤解を生みそうな言い方をするなら、娘の死が原因で宇宙人が到着する。
だから、覚悟が必要だと思うんだ。

3000年後のありがとう。

娘が死ぬとわかっていても彼女は産んだ。
そして宇宙人のアボットも自分が死ぬとわかっていて地球にやってきた。
人を時間から解き放つために。
3000年後の自分たちを救うために。
アボットの死によって人類は時間から解き放たれ始める。
ハンナが粘土遊んでいる。
「ママとパパが動物と話してる」
粘土には宇宙人に似た形をしてる。
ハンナが生まれる前の話をしている。
幼い子供ですら時間を超越し始めている。
円形文字を辞書で学んだ大人が子供を産み育て、その子供がまた文字を習う。
そして3000年後に恩返しする。
そのために娘は生まれ、アボットは死ぬ。
とてもつらい決断だ。でも変えれない。だから覚悟を持って産む。
夫に教えられた通り、たくさん気持ちを伝える。
その愛しい記憶は円の中で永遠に残り続ける。

備忘録

UFO12個の理由。多分12使徒。予定説のヒント。
話としては、多くの言語圏に降り立って対話を試みる。
なぜかいつも円形文字が出てきたところで泣いてしまう。
多分相互理解の難しさを知っているから異性間での最初のやり取りが感動的に思えるから。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?