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復活映画「レナードの朝-Awakenings-」のネタバレ考察

生きてるだけで丸儲け

明石家さんまの言葉。
最初のこの言葉を聞いた時
「そら成功してりゃ生きてるだけで楽しいやろ」と思った。
当時の僕には他人の成功が妬ましかったんだろう。
その後、この言葉が一歩間違えばさんまが墜落する飛行機に乗ってた事から生まれたのを知り納得した。
車に轢かれそうになって「あっぶな、生きててよかったぁ」と思う事の上位互換だもん。生きてる事に感謝もするだろう。
経験に基づく発言は重みがある。
何を言うかより誰が言うかの方が重要視される。
もしこの世に幽霊が存在して
「天国なんてないよ」
って言われればもう天国を信じる事なんてできない。

魂を語る医者

映画は事実を元にした創作。だから医者とは思えないような病状説明が飛び出す。
「ボールの意志を借りて動いてる」
「まるで魂がないかのようだ」
ダメ押しにウィジャ盤、日本でいうところの「こっくりさん」をしてコミュニケーションをとろうとする。
もう医療でも何でもない。
原作の要素はおそらく薬を投与すると奇跡的な回復をみせ、その後薬が効かなくなって元に戻ってしまうところ位だと思う。

何でこんなに「医療じゃないとか原作とは違うとか」ダラダラと書いてるのはこれから言う不謹慎発言の言い訳なんだ。
この映画に限って言えば、あの患者は死者だ。
ゾンビの方がしっくりくるかもしれない。
ゾンビの設定として
「生前の行動を繰り返す」と言うのがある。
これは現代人を皮肉って付けた設定だ。
トランプを一枚置くとみんなが一斉に置くシーンは絶対嘘だとわかるような滑稽さがある。
レナードが元に戻ってしまった時の説明も印象的だ。
「何も感じない。まるで死んだみたいに」
何も感じないのを感じてるのかって言葉遊びは置いといて、執拗に死と結び付けたがる。

印象的と言えば症状が再発し始めた時に叫んだ。
「お前らの方が病気だ」って発言だ。
他の患者を巻き込み病気じゃない人々を罵る。
レナードは何に怒っているのか。魂とか死とかオカルト的発言は何なのか?

大谷翔平のストレートは163㎞

豪速球。ど真ん中ストレートで三振とか野球に詳しくない僕でも力強さにしびれる。
レナードの発言も豪速球で僕らをしとめる。
彼は死者だった。それが一時的な奇跡によって復活する。
深夜にレナードはマルコムを電話で呼び出す。
「みんな生きてるすばらしさを忘れてる」と熱弁する。
この手の発言はネットにあふれてる。
「お前の無駄にした今日は昨日死んだ誰かが行きたかった明日」
とか
「やり直すために10年後から今戻ってきたんだ」
とか、小説からパクった言葉じゃ何も響かない。
「うるせぇお前関係ないやんけ」で終わり。
でも生き返った人に
「お前らなんで人生の楽しまないの?」
と言われてしまうともう謝るしかない。「グゥ」とでも言って音を上げてしまう。
その楽しみっていうのが恋だった。
確かに恋愛はコミュニケーションとしてかなり上位の存在に感じる。
人に奇跡は起こせない。
一時的な復活でしかなかった患者たちはまた死の世界に戻っていく。
コミュ障で恋愛はおろか人と話す事すら不得意なマルコムはエレノアに不器用に声をかける。人生を楽しむために。

備忘録

原作者がシダ植物が好きって事実を「コミュ障なので植物が好き」って置き換えてるのが面白い。仕事も死んでる奴とかミミズとかでしたがる。

この監督は子供がある日体だけ大人になる逆コナン映画「ビッグ」を撮ってる。トムハンクスが大人役。これも時間の話。

ニーチェの「キリスト教的道徳に縛られて生きてる奴は病気だ」って話を思い出した。

「女の子と話すより映画観てる方がいいんだよね」とかいって逃げてる僕は苦笑いしかできなかった。無駄に生きててすみません。

いわゆる精神病患者を死者として扱うのだと「アマデウス」もそうだけど今だと怒られるんだろうかとか余計な事考えてしまった。


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