【 第9回 】道徳で心を育てる
◆道徳の教科化
先ごろ「道徳の教科化」が話題になりました。文部科学省の有識者会議が「道徳を教科に格上げする」報告書案を公表し、文部科学省はこれを中央教育審議会で議論し、早ければ2015年度にも教科化する方針とのことです。
このニュースを聞いて「えっ!道徳って教科じゃなかったの?」と驚いた保護者が多いと思います。私たち保護者にとっては、「道徳」はとても影が薄い存在で、「道徳の授業」が週に1時間行われていることすら、あまり知られていないことです。道徳は、成績がつかないこともあって、他の教科と比べて明らかに関心度が低く、ほとんどの保護者が気にとめていないと思います。
また学校では、教科書もなく、題材を先生が自由に選べる利点もありますが、教科ではないため、都合により他の授業に振り替えられることもよくある話です。
そんなちょっと気の毒な「道徳」ですが、私はとても大切な役割があると感じています。
◆道徳の授業の思い出
自分が受けてきた道徳の授業を振り返ってみると、誰かの感動秘話や、少し非常識な行動をとる人物が登場する話などを題材に、「あなたはどう思うか?」ということをクラスで話し合ったり、自分の意見を発表したりする授業が多かったように思います。だいたい最後は「この話に出てくる○○さんはすごいと思いました。私もこのような行いができるようになりたいと思います」といった感想でまとめられる授業でした。
つまり、「好ましい行動の模範」を示して、「皆さんもこういう人になりましょう」「こういう行動を取りましょう」と促す、あるいは反対に「好ましくない行動の代表」を示して、「こういうことはしてはいけません」と禁止することが授業の目的だったのではないかと思います。
小学校や中学校の集団生活の中で、とくに身に付けさせたいことを教えるのが「道徳」だった、というのが印象です。
◆道徳授業の価値
そういう「道徳授業」を受けてきた子どもたちが大人になれば、さぞかし「模範的な社会人」ばかりになりそうなものですが、いつの時代も人の道をはずれてしまう大人は少なからずいますし、どうやら世の中そんなにうまくはいかないようです。
だからと言って「道徳の授業」が必要ないか、と言えば、それは違うと思います。保護者の中では、むしろ、「道徳授業」の重要性やその価値が見直されてきているのではないかと感じています。
このごろは「個人主義」が広がっていて、自分さえよければ、と考える人が増えているように見えます。
これだけ個人の価値観が多様化して、個人が重視されるようになってくると、以前のように「勧善懲悪」的な道徳の授業では、子どもには「そんなこと言ったって、みんなやってないし、そうやったって何の得にもならないじゃん」と受け入れてもらえないかもしれませんね。
これまでのように「みんなでルールを守りましょう」ということを教えることも大切なことですが、それだけでなく、もっと「心を育てる」ことが主眼になってくるのでしょうし、保護者もそれを求めるようになるでしょう。
◆想像してみること
子どもたちは、まだ人生の経験も少なく、体験したことも限られています。今まで自分が経験した範囲でしか物が考えられないのは、当たり前のことですね。
ついつい自分中心に考えて、自分さえよければという視点で人と接してしまうことで、「いじめ」が生まれてしまったり、人間関係がうまく結べなかったりするのだと思います。
子どもたちが、こうした状況から一歩踏み出すために、とても大切なこと。それは「想像してみる」ということではないでしょうか。
「想像してみる」というのは、「相手の立場になって考える」「自分だったらどうするだろうか」と考えてみることです。一生懸命想像してみることで、それが相手のことを思う、「思いやり」につながっていくのだと思います。
◆道徳授業の形
道徳の授業は、「想像してみる」という経験を積ませるのに最適だと思うのです。
しかし、何もない中で想像するのは難しいものです。できれば、想像しやすい環境を用意することも必要ですね。実際に体験した人から直接話を聞く、という経験は強烈に印象に残りますし、その分想像もしやすくなると思うので、ぜひやっていただきたいことです。
学校では、ゲストをお招きして講演会などを開催されることも多いと思います。そのような機会を利用して、子どもたちに「想像させる」経験を積ませていただけるといいですね。
先日、道徳の授業に参加させていただく機会がありました。
【小牧中PTAの部屋】「スペシャル・道徳授業」に想う(1)
授業の中で、子どもたちは「友人の立場」、私たち保護者は「両親の立場」を「想像」して、もし自分がその場にいたら、どのような言葉をかけるだろうか、ということを真剣に考え、発表しました。
他人の母親である私たちが、悩みに悩んで発表した言葉を、子どもたちは「親の気持ち」として受け止めてくれました。また、私たち保護者も、子どもたちが発表してくれたそれぞれの言葉を、「子どもが友人を想う気持ち」として受け止めました。
このような、立場が違う人たちで作る道徳の授業は、参加者それぞれに意義があると感じました。毎回実施することは難しいでしょうが、こんな形の道徳授業も検討していただけるといいですね。
(2013年12月9日)
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「愛される学校づくり研究会」HP内の教育コラム「お母さんは学校の応援団長」リード文
★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されている斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。
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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。
保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。
ご覧いただきありがとうございます。よろしければ、ついでにブログにもお立ち寄りくださいませ(^o^)→https://mattaribetty.hatenablog.com/