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【 第33回 】「チーム学校」に想う(1)

◆世界一多忙な先生たち

日本の先生たちは、世界中で一番忙しいそうです。
抱えている仕事量が多すぎて、労働時間が長くなっていることが問題になっています。そして、先生に求められる仕事の種類も多岐にわたりますね。
その負担を減らすために、文科省は「チーム学校」という取り組みを進めています。
当教育コラムでは、風岡治さんの「『チーム学校』って何だろう」というコラムの連載が始まりました。
これからの教育界で「チーム学校」という取り組みがキーワードになるのは間違いなさそうです。

◆「チーム学校」の3つの柱

先日の「愛される学校づくり研究会」の例会では、ゲストをお招きして、「『チーム学校』で示された地域連携担当は何をすべきか」というテーマで議論を行いました。

「チーム学校」の実現を目指す取り組みは、以下の3つを柱としています。

先生の仕事の役割分担の見直し
資格を持つ専門スタッフの充実
地域人材の活用

その中の「地域人材の活用」という視点で、地域コーディネーターとして、また学校支援地域本部コーディネーターとして、学校と地域をつなぐ役割を長く続けてこられたゲストから、これまでの活動から見えてきた学校の現状や課題など、貴重なお話をお聞きすることができました。

◆地域コーディネーターの活動紹介

ゲストに来ていただいたのは、愛知県小牧市の中学校で地域コーディネーターを務めてくださっているお二人と、愛知県津島市立神守中学校で学校支援地域本部のコーディネーターを務めてくださっている方でした。

「地域コーディネーター」と言っても、それぞれの地域や関わっている学校により活動内容はさまざまです。
小牧市は、全国に先駆けて10年以上前に、市内の全小中学校に「地域コーディネーター」という制度を作りました。
ゲストのお二人は、その創設当初から関わっておられます。
同じ小牧の地域コーディネーターであっても、所属する中学校が違いますので、活動内容は違います。

また、神守中学校支援地域本部は5年前に発足し、そのすばらしい活動が認められて、先日「平成27年度 優れた『地域による学校支援活動』推進にかかる文部科学省大臣表彰」を受賞されました。こちらでは、小牧では行われていないユニークな活動をたくさんされています。

ここで、ゲストの皆さんがお話ししてくださった活動のいくつかをご紹介します。

・生徒のボランティア活動支援

とくに中学校では、生徒に地域とのつながりを持たせるために、地域でのボランティア活動を行っています。
よく聞くボランティア活動は、地域の行事のお手伝いで、祭りや運動会などのスタッフとして参加しているようです。
そうしたボランティア活動の窓口となるのが、地域コーディネーターの皆さんです。
地域からの要望を受けて、学校と連携をとって参加生徒を募集し、地域・学校の双方と段取りを打合せて、当日に備えます。
当日は、学校と協力して、現地で生徒の活動を見守ります。
事故がないように安全に配慮してくださるばかりでなく、地域の人と交流できるように声をかけてくださったり、また礼儀作法についての声かけもしてくださったりなど、とてもありがたい存在です。

・学校行事の支援

多くの小学校では、PTAなどが主催して親子で楽しむ行事を行っています。コーディネーターさんは、そのお手伝いもしてくださっているそうです。
PTA役員は多くの場合、単年度か長くても2~3年で変わっていきます。そうすると、さまざまな行事の取り組みにおいて、進め方がわからず戸惑うことが多いです。
しかし、長く学校に関わってくださる地域コーディネーターさんがいらっしゃると、いろいろ教えていただくことができ、とても頼りになります。
不安に感じているPTA役員にとっても、地域コーディネーターさんは心強い存在なのです。

・学習の支援

これは、「神守中学校支援地域本部(通称『豆ボラ神守』)」の特色です。
神守中学校では、現在「ドテラ(土曜寺子屋)」「月テラ(月曜寺子屋)」という2つの学習支援活動を行っているそうです。
それぞれに役割があり、「ドテラ」は3年生対象、「月テラ」は全学年対象で、大学生が講師役となり学習支援をしています。
講師役の大学生(学ボラ)や生徒の募集をしたり、学校とのスケジュール調整やそれぞれへの連絡伝達を行ったりも、豆ボラが行っています。
この活動は、中学生はもちろんですが、講師役の大学生(教員を目指している学生)にとっても、とても貴重な経験になり、校区外から時間をかけて通ってくれる学生さんがたくさんいるそうです。
安心してお任せすることができる豆ボラのコーディネーターさんは、学校にとっても保護者にとってもありがたい存在ですね。

・不登校対応の支援

こちらも「豆ボラ」の特色ある支援活動です。
以前の神守中学校は不登校の生徒数がとても多く、その対応が喫緊の問題だったそうです。
そこで豆ボラの皆さんが、カウンセラーの先生や学校と協力して、そうした生徒の保護者が悩みを話せる場を作っていたそうです。
体験者の話を聞く機会を作ったり、保護者の要望を取り入れながらのコーディネート活動を行ったりは、困っている人々の役に立つすばらしい活動だと思います。
そのような地道な活動の積み重ねもあり、現在は不登校の生徒数もずいぶんと減少したそうで、学校が主体の「保護者の会」が立ち上がったこともあり、今はこの支援活動は行っていないそうです。
その代わりとして、昨年度からは、最近増えている外国人の生徒のための「外国人支援」を行っているとのことです。

このように、学校のニーズに合わせて、さまざまな活動が行われていますが、それらを支えているのがコーディネーターさんです。
裏方として、常に学校のこと、子どもたちのことを考えてくださっているコーディネーターの皆さんがいることを、たくさんの保護者や先生方にぜひ知っていただきたいと思います。
コーディネーターの皆さんは、「チーム学校」という取り組みの中では、なくてはならない存在ですね。

(2015年12月7日)

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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。

保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。


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