【 第23回 】所見を恐れないで
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新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、2020年2月27日に政府から「全国の小中高校の臨時休校の要請」が出されて、3月2日から全国の多くの学校で休校が始まりました。
最終的な休校実施判断は各自治体に委ねられたこともあり、また働く保護者が多いことにも配慮して、休校でありながら、実際には学校で子どもを預かるという、ややこしい運用がされています。
現場は大混乱で、先生も子どもも保護者も振り回されている様子が、連日報道されています。
そんな中ではありますが、できることをやろうとがんばっておられる学校関係者の皆さまに敬意を表して、普段のこの時期にふさわしい話題を記録に残しておこうと思い、この記事を投稿します。
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◆所見のありがたさ
3学期は、一年のまとめの学期です。
教科書のページも残り少なくなり、一年の総仕上げの学習が多くなってきていることと思います。
「学年末」という言葉で、保護者が気になるのは、やはり「通知表」。(いろいろな呼称があるそうですが、私の住む地域では通知表と呼んでいるので、これで統一します)
評定も「学年のトータル」として出ますし、担任の先生の所見も、一年を通しての評価となります。
保護者も子どもも、担任の先生の「所見」は、通知表を見るときの大きな楽しみです。
この「所見」について、実は多くの先生方の負担になっている、ということを知ったときは驚きました。
受け取る側は「自分の分だけ」ですが、担任の先生はクラスの全員分の所見を書かなければなりません。たしかに、大人数の所見を書くのはやっぱり負担になるのだろうな、と気づきました。
聞けば、所見を書くためのハウツー本(文例集のようなもの)もあり、人気だとか。それだけ、所見を書くことに困っている先生がいるということなのでしょう。
担任の先生は、時間をかけて所見を書き上げ、上司である管理職の先生方のチェックを受けます。
そこで厳しいダメ出しを受け、また時間をかけて書き直し、再びチェックを受け、またまたダメ出しをもらい・・・ということを繰り返して、ようやく所見が完成するのです。
先生方にとっては、この光景は学期末や年度末の恒例のものとなっているでしょうが、保護者はそれを知りません。
そんな先生方の苦労も知らずに、保護者は勝手な文句ばかり言っていてはいけないなと思います。
先生の職務であるから当然という声があるのはわかりますが、学校での子どもたちの様子がよくわかるように、所見を書いてくださる先生方には感謝したいと思います。
◆所見のお手本を知る
そんなありがたい所見ですが、たった数行のコメントを書くのに、なぜ先生方がそんなに苦労するのか?
それは、書き慣れていないために、「書き方がわからない」ということがあるのだろうと思います。
決まった形式に書かなければならないレポートのように、おそらく標準的な形で、望ましい形があるのでしょうが、そのようなルールは教えてもらわなければわかりません。
そして、豊富な語彙力も必要になります。
1クラス30人以上の子どもたちを受け持っている担任の先生は、たくさんの人数の所見を書こうとすると、同じような文章になってしまいがちだと思います。
以前、『「名前を隠して所見を読んでも、どの子のものかすぐにわかるような所見を書きなさい」と指導を受けた』という話を、若手の先生からお聞きしたことがあります。
子どもをほめるときの言葉だけでなく、もう少しがんばってほしいことを指摘するときの言葉なども、複数の表現を知っていると、所見のバリエーションが増えますね。
そのためには、先輩の先生の所見を見せてもらうことや、ハウツー本などを参考にするのも悪くないと思います。
いいところはどんどんまねして、自分の中に取り込んでいけるといいですね。
◆書きたいことを見つけるアンテナを高く
もう一つ気になっていることがあります。それは、「書くことがない」という場合です。
本来、先生は、日常的に子どもを観察しているので、子ども一人一人の様子は把握しているはずです。
しかし所見を書こうとした時に、「何を書こうか・・・」と悩んでしまうこともあるのではないでしょうか。
目立って良い子、逆に目立って手のかかる子であれば、印象に残りますから、書きたいトピックはたくさんあるでしょう。
そうではない、いわゆる手のかからないおとなしい子の場合はというと、良くも悪くも「書くことがない」となりがちなのではないでしょうか。
そこはやはり、日ごろから「所見を意識して」、こまめに子どもの様子を観察し、メモなどに残しておくのが有効なのではないかと思います。
◆チームで子どもを見守る
小学校のように、担任が一日子どもを見ていられる環境であれば、子どもの様子も目に入ってきますが、中学校ではなかなかそうはいきません。
クラス担任といっても、自分のクラスの子どもと関わるのは、担当の授業のときと、ホームルームなど学級の時間のときだけですから、子どもたちを見る時間は限られていますね。
その足りない部分を補うのは、同じ学年団の先生方や教科の先生方からの情報ではないでしょうか。
もちろん、どこの学校でも、打合せや会議などで、先生同士の情報交換は行われているでしょう。
自分一人の目で見るだけでなく、たくさんの目を通して見ると、思いがけない一面を発見することもあるはずです。
学年全体で、学校全体で、子どもたちの情報が共有できる環境づくりは、管理職の先生方の大切な役目の一つであると思います。
ただ会議の回数を増やせばよい、ということではなく、日常の雑談の中からでも有益なつながりが生み出せるような職員室の雰囲気になるといいなと思っています。
私が子どものころは、通知表の所見欄は、担任の先生の手書きでした。
子どもの多い時代でしたから、それは大変労力のかかる仕事だっただろうと思い、感謝しています。
良い面のことをちょっと多めに書いてくださっていた所見は、親も子もとてもうれしく読ませてもらいました。
最近は、通知表もコンピューターで処理ができるようなり、手書きで1枚ずつ書くよりも労力は減っているはずです。
ぜひその時間を「子どものいいとこみつけ」に使っていただけるといいなと願っています。
(2015年2月2日)
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「愛される学校づくり研究会」HP内の教育コラム「お母さんは学校の応援団長」リード文
★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されている斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。
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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。
保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。
ご覧いただきありがとうございます。よろしければ、ついでにブログにもお立ち寄りくださいませ(^o^)→https://mattaribetty.hatenablog.com/