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【 第37回 】「愛される学校づくりフォーラム2016 in東京」レポート(2)

◆「愛される学校づくりフォーラム2016 in東京」開催

2月6日(土)東京の品川で、「愛される学校づくりフォーラム2016 in 東京」が開催されました。
2011年に始まった全国フォーラムも、名古屋、東京、京都、大阪と会場を移しながら、今回で6回目の開催となりました。
参加者にはリピーターも多く、全国各地から足を運んでいただき、会場は満員で、熱気あふれる一日となりました。
 
今回のコラムでは、フォーラムの感想をお伝えしたいと思います。

◆午前の部・テーマごとの感想

・テーマ1:「授業の見方」を高めるには


提案者の大西貞憲先生は、「授業を見るときは子どもを見ます」とおっしゃいました。子どもの様子を見ていれば、授業者の力量も図れるし、授業で子どもたちに力がついているかどうかを見ることが大切だということでした。
一方、討論者の中には「私は授業者を見ます」という意見や、「授業者も子どもも両方見ます」という意見など、さまざまな意見が出されました。
「授業の見方」といっても、授業者の力量アップに重きを置くのか、または子どもに力をつけることに重きを置くのか、それぞれの視点により意見が分かれます。もちろん、そのどちらも大切なことです。しかし、現実には学校の実情に合わせて、まずどちらから進めるのかという選択が行われているのだろうと思いました。
多くの保護者は、まず我が子の様子、クラス全体の雰囲気、そして担任がどんな先生なのかを授業参観では見ています。ついつい「子どもたちがニコニコしていれば安心」と思ってしまいがちですが、元気に手が挙がっていたり、活気がある授業が必ずしも良い授業であるとは言えない、ということを、テーマを通して知ることができました。「子どもたちの変容(どんな力がついているのか)」という視点も必要であることを覚えておきたいなと思います。

・テーマ2: 若手教師の力量を高めるには

昨今、学校現場では、教員の世代交代が進んでいます。団塊の世代の大量退職が進み、若い世代の採用が増えているので、教員の平均年齢が下がってきています。
提案者の山田貞二先生は、本来なら、これからリーダーとなるべき30代後半から40代の先生が非常に少ないため、リーダー不足に陥っていること、リーダーを育成していく余裕がないことなどを踏まえて、もっと若い世代の先生をリーダー(YML:ヤングミドルリーダー)として育成してきた実践について話してくださいました。
その実践はとても魅力的で、「リーダーがいなければ作ってしまえばいい」「育成の時間が取れないなら、普段の業務の中でやればいい」「教えるではなく、一緒に学べばいい」「若さを活かし、磨きをかけて自信を持たせる」といったキーワードからもわかるとおり、ご自身も楽しまれながら取り組んでこられたことがうかがえました。
この「ないものは作ってしまえばいい」という発想はとても大切ですね。ないことを嘆いているだけでは、決して事態は良くならないし、変わらないのです。
また、ご自身が「楽しむ」ことも大きなポイントだと思います。自分も一緒に学べば、共通の話題もできますし、ともに刺激を与え合える関係になれます。こうした輪が職員室の中に広がっていくといいなと感じました。

・テーマ3:「チーム学校」が機能するには

提案者の風岡治さんは、昨年末に中教審が出した答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」の解説をしてくださいました。「チーム学校」構想が必要となってきている背景として、現状の学校がどのような状況にあるのかということから、学校がチームとして組織化される必要性など、資料をもとに説明してくださいました。
とにかく、今のままでは学校は大変になるばっかりだから、何とかしなくちゃいけないよね、という考えから生まれた構想だということはわかります。ただ、具体的な方策については、まだ明確なものは出ていないようなので、これから各所で検討が進む中で見えてくるのでしょう。
この「チーム学校」についての想いは、当コラム第33~35回で書いてきましたので詳述はしませんが、今後、もっと活発に議論がされるようになるといいなと思っています。いろいろな立場の人たちが、「子どもたちのために」という思いを持って、自由に意見交換ができる場が増えるといいなと思います。

・テーマ4:授業における「真のICT活用」とは

提案者の豊福晋平先生は、第一人者として長く研究を進められてきた中で、日本の学校現場でICTの利活用が普及しない現状について問題提起をされました。
これまでのように「学校側が与えるICT」ではなく、「学習者(子ども)が自由に使えるICT」を目指すべきなのではないかという提案です。
これについても、討論者からはいろいろな意見が出ました。とくに、現場の先生方にとっては悩ましい問題で、どうしても「自由に使わせるための環境整備ができない」「自由に使わせたら、勝手なことばかりして授業にならない」など実現困難だという視点での問題点が多く出されました。
いずれ確実に、コンピューターを「一人1台」持つ時代がやってきます。保護者にとっては、購入金額、保管や管理のことなどが気になるところですが、実際にどのように活用されていくのかにも関心があります。
「失われた20年」はこの分野にも当てはまるようで、ずっと同じ議論が繰り返されているうちに、日本の教育におけるICT活用は、世界から周回遅れになっている、という刺激的な意見も出されましたが、立場の違いによってとらえ方が違う難しい問題なのだと感じました。
そうはいっても、このままでは日本はどんどん取り残されていくことになりかねないのですから、学校側の意見ばかりでなく、研究者や保護者など、いろいろな立場の人が一緒になって考えていくことが大切なのではないかなと思います。

このように、「愛される学校づくり研究会」では、さまざまなテーマについて議論や検討を重ねて、現場で役立てられるように研究しています。
教員だけでなく、行政の方、企業の方など、いろいろな立場の人が参加し、自由に意見交換し学び合っています。
確実に視野が広がる「愛される学校づくり研究会」で、たくさんの皆さんの「学びの輪」が広がることを願っています。

(2016年3月14日)

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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。

保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。


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