【 第27回 】子どもにつけてほしい力(2)
◆「生きる力」
文部科学省の定義によると、現行の学習指導要領では「子どもたちの『生きる力』をよりいっそう育むことを目指す」ということだそうです。
そして文科省のHPには続けて、「生きる力」とは、知・徳・体のバランスのとれた力のことで、変化の激しいこれからの社会を生きるために、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」をバランスよく育てることが大切だ、と書かれています。
「生きる力」という目新しいキャッチフレーズが付いたことで、何か新しい取り組みのような気がしてしまいますが、「知・徳・体」は、ずっと昔から、教育の中で大切にされてきたことだと思います。
そう、「子どもたちにつけさせたい力」は、今も昔も同じことなのですね
◆バランス重視で欲張らない
「知・徳・体のバランスのとれた力」というのは、全体的にまんべんなく、というイメージでしょうか。
たしかに、子どもたちみんなが、まんべんなく、バランスが取れていればいいのですが、実際には誰もがデコボコした部分を持っています。
それぞれに合わせた指導をしていただけるのが一番ですが、クラス全員30人以上の面倒を見るのは大変なことです。
バランスを重視するあまり、あれもこれもと欲張ると、結局どれもイマイチといったことになりかねません。ですから、前回も書いたように、とにかく「基礎・基本」の部分だけは、しっかり見ていただけるといいなと思っています。
◆人と関わる力
子どもが学校で学ぶことは、教科の勉強だけではありません。集団生活の中で、さまざまなことを学んでいきます。
その中でも、とくにつけてほしい力は、「人と関わる力」です。
人は一人きりで生きているわけではなく、必ず誰かと関わりながら生きています。
そうすると、必ずしも自分の思い通りにはならないことが起きますし、とても理不尽なこともたくさんあります。ときには望まないことであっても、妥協しなければならないこともあります。
そういうことを、学校の集団生活の中で経験してほしいのです。
みんなそれぞれ違う人間だ、ということを知ること。いろんな人がいて、いろんな意見がある、ということを知ること。そして、そうしたいろんな意見を、排除するのではなく、尊重できること。
こんな風に、お互いに認め合えるようになれば、自分も他人も大切にできるのではないでしょうか。
「人と関わる力」は、社会に出たら、すぐに求められます。
その力が十分についていないと、「生きる力」どころか「生きていけなくなる」ことすらあります。
ですから、学校の中で、先生や保護者などの大人が見守ってあげられる環境の中で、身に付けてほしいと思っています。
◆自分で判断する力
世の中には、情報があふれています。
これからの時代を生きる子どもたちは、こうしたたくさんの情報を取捨選択する力も必要になるでしょう。
情報の表層部分だけを見ていると、なんとなくまわりに同調して判断することになってしまいます。
そして、だんだん自分で考えることをしなくなってしまうのではないか、と危惧しています。
たくさんの情報の中から、何が正しいのか、何が自分に必要なものなのか、判断することは難しいですね。自分が求める情報に行きつかず、自分の考えを持てないこともあるでしょう。
私たち大人であっても、判断に迷うことや、どう考えたらいいのかわからないことは、たくさんあります。
それでも、自分で考え、判断する、という努力をしていくことが大切なのではないでしょうか。
子どもたちには、たくさんの人の意見に触れ、たくさんの情報に触れる経験をしてほしいなと思います。
◆失敗を経験する
「教室はまちがうところだ」(蒔田晋治さんの詩)
以前、子どもの教室に、先生が書かれた詩が掲示されていたことがありました。
まちがったって、失敗したっていいじゃないか。みんなで認め合って、みんなで学んでいこう。
という詩に、「学校っていいところなんだな~」とうれしく思いました。
まちがったり、失敗したりする経験は、子どものうちにたくさんしておくといいですよね。
学校は、それを許し、認め、支え合える環境であってほしいと願っています。
(2015年6月1日)
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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。
保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。
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